『地球にちりばめられて』1

<『地球にちりばめられて』>
図書館に予約していた『地球にちりばめられて』という本を、待つこと半年ほどでゲットしたのです。
言語学的なSFは、モロに太子のツボであるが・・・
ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出したHirukoという元ニッポン人が、興味深いのです。


【地球にちりばめられて】


多和田葉子著、講談社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る―。言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。

<読む前の大使寸評>
言語学的なSFは、モロに太子のツボであるが・・・
ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出したHirukoという元ニッポン人が、興味深いのです。

<図書館予約:(2/18予約、8/28受取)>

rakuten地球にちりばめられて


Hirukoが独自の言語“パンスカ”をつくり出したあたりを、見てみましょう。
p37~40
<第2章 Hirukoは語る>
 ここメルヘン・センターは、移民の子どもたちにメルヘンを通してヨーロッパを知ってもらう活動をしていた。昔は現地の人たちがボランティアで読み聞かせなどをしていたが、最近になって、現地の人ではなくて、大人の移民が子どもの移民に接する方が効果があり、しかも必ずしもA国出身の大人がA国出身の子どもに接するのではなく、いろいろな文化が混ざった方がいいことが判明し、わたしのような人間にとって就職の道が開けた。

 メルヘン・センターの求人広告を「週刊ノルディック」で見つけて応募した時、わたしはまだノルウェーのトロンハイムに住んでいた。
 ちょうど大学に残れないことがわかった時だった。しかも、帰ろうと思っていた国が消えてしまったので、これからどこで暮らしたらいいのか分からなくて途方に暮れていた。メルヘン・センターの求人広告を読みながら、ふと、わたしのつくった言語を移民の子どもたちに教えてみたいと思いついた。

 この言語はスカンジナビアならどの国に行っても通じる人工語で、自分では密かに「パンスカ」と呼んでいる。「汎」という意味の「パン」に「スカンジナビア」の「スカ」を付けた。スウェーデンには「ポールスカ」と呼ばれる民族舞踏があり、ポーランドから来たという意味にとれるのだが、実際のところ、この踊りはスカンジナビア起源ではないかと言われている。その不思議さを語感にいかしてみた。

 わたしのパンスカは、実験室でつくったのでもコンピューターでつくったのでもなく、何となくしゃべっているうちに何となくできてしまった通じる言葉だ。大切なのは、通じるかどうかを基準に毎日できるだけたくさんしゃべること。人間の脳にはそういう機能があることを発見したことが何よりの収穫だった。

「何語を勉強する」と決めてから、教科書を使ってその言語を勉強するのではなく、まわりの人間たちの声に耳をすまして、音を拾い、音を反復し、規則性をリズムとして体感しながら声を発しているうちにそれが一つの新しい言語になっていくのだ。

 昔の移民は、一つの国を目ざして来て、その国に死ぬまで留まることが多かったので、そこで話されている言葉を覚えればよかった。しかし、わたしたちはいつまでも移動し続ける。だから、通り過ぎる風景がすべて混ざり合った風のような言葉を話す。

「ピジン」という言い方もあるが、「ピジン」は「ビジネス」と結びついているので、わたしの場合は当てはまらない。売るべき品は何も持たない。わたしの扱っているのは言葉だけだ。

 メルヘン・センターで子どもを相手に、パンスカで昔話をしたらどうだろうと考えているうちに、紙芝居を見せることを思いついた。言葉だけでなく、絵を見せた方がやりやすいに決まっている。そんなアイデアを履歴書といっしょに送るとすぐに面接のためにオーデンセの町に来るようにという手紙が来た。面接でももちろんパンスカをしゃべったのだが、面接が始まって五分もしないうちに、すでに面接官の目の中で「採用」の字が点滅し始めた。

 わたしの悪いところは、何もできないくせに「こんな事をやったらいいんじゃないかしら」という話が上手いことだ。存在もしないものに形を与え、色を塗り、それこそがみんなが求めている未来だ、と信じさせることができる。このような能力は、わたしの生まれ育った国ではあまり高く評価されていなかった。
(中略)

 ところが、ヨーロッパではわたしが話し始めると、もぐら叩きされるどころか、聞き手の目が輝き始め、もっと話してください、というメッセージが視線に乗ってどんどん送られてくる。
 
(追って記入予定)


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