『科学する心』4

<『科学する心』4>
図書館に予約していた『科学する心』という本を、待つこと1ヵ月ほどでゲットしたのです。
福岡伸一は科学者から科学的物書きとなったが、池澤夏樹はその逆で、物書きが科学エッセイストをめざしているような感じですね。


【科学する心】


池澤夏樹、集英社インターナショナル、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ。

<読む前の大使寸評>
福岡伸一は科学者から科学的物書きとなったが、池澤夏樹はその逆で、物書きが科学エッセイストをめざしているような感じですね。

<図書館予約:(5/11予約、6/15受取)>

rakuten科学する心



「第9章 三本のSF映画によるAI論」からAIについて、見てみましょう。
p188~191
■ディストピアは現実のもの
 実はこの種の変化を我々はいくつも体験してきた。そのたびに職を奪われる人々が生じた。今の社会には駕籠を担ぐ人や人力車を引く人はいない。同じように天文学や暗号解読のために厖大な計算を担当する人たちはいない。書家はいても筆耕や写字生、植字工はもいない。

 産業革命で動力が使えるようになって、その制御の技術も進んで、人間は単純な筋肉労働から解放されるはずだった。知力のある人間を馬のように筋力源として用いるのはもったいない、という考えが社会を変えるはずだった。

 今、同じようにして、知的な労働でも単純な反復に近いものはコンピューターに任せられるようになってきた。天文学の計算がいい例だが、その範囲がどんどん広まっている。気象シミュレーションにはスーパーコンピューターが用いられる。計算そのものは人の手でもできるとしても、実際には千人がかりで百年とかかかるわけで、気象の予報として意味がなくなってしまう。

 前記の『AIの衝撃』には「今後10~20年の間に米国の雇用の47%が、コンピュータやロボットに職を奪われる危険性が高い」とあり、以下のような職業は人の手を離れるという…

 電話による販売員/データ入力/銀行の融資担当者/金融機関などの窓口係/簿記・会計監査/小売店などのレジ係/料理人/給仕/タクシー運転手/理髪業者

 給仕について言えばタブレット注文のレストランはあるし、回転寿司を考えれば料理の運搬も自動化が可能だろう。高級な店はともかく簡便なところではそういう流れになるかもしれない。
 回転寿司と言えばしゃりを握るロボットは実用化されている。ではガスレンジの前で鍋を振って炒飯を作るロボットは可能か? 全自動牛丼屋は? もともとが工場生産で冷蔵運送再加熱なのだから、AIを応用してきめの細かい客あしらいを実現すればいいだけの話。

 AIとロボットで人が単純労働から解放されるのはいいとしても、それによって生れた余暇は平等には分配されない。みなが御前中だけ働いて午後は趣味で過ごすということにはならない。かつてラッダイト運動が予想したとおり、一方に失業者、他方に過労者が増えるだけなのだ。多くの人が職場から追われ、残った者は失業が怖くて必死で働く。

 AIは雇用する側のみに恩恵を施す。このディストピアはAIの普及を待つまでもなくすでに現実である。

 AIの目前の脅威はそれを独占的に用いる人間、すなわち権力者の横暴にある。今ならば大企業、国家、あるいはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような超国家資本。

 インターネットを用いて個人の行動についての情報を集め、ビッグデータを構築する。これをAIで解析して個人あての強力な広告を作って送り込む。ほとんど狙撃というに近い。それを1億人向けに行うのも容易で、流行という雪崩現象は簡単に作り出される。人間は真似る生き物だから好みの偏在は速やかに増幅され得る。

 選挙でも同じ手法が用いられるとすれば、その結果ははたして民主主義と呼べるかどうか。

ウン ビッグデータとAIを制限なしで操る中国共産党の怖さが実感できるわけです。それからGAFAも怖いでぇ。

『科学する心』3:原爆について
『科学する心』2:カンブリア爆発
『科学する心』1:『サピエンス全史』を巡って

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