吉岡桂子記者の渾身記事27

<吉岡桂子記者の渾身記事27>
朝日新聞の吉岡記者といえば、チャイナウォッチャーとして個人的に注目しているわけで・・・・
その論調は骨太で、かつ生産的である。
中国経済がらみで好き勝手に吹きまくる経済評論家連中より、よっぽどしっかりしていると思うわけです。
吉岡


朝日のコラム「多事奏論」に吉岡桂子記者の記事を見かけたので紹介します。
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2019年6月01日(多事奏論)ファーウェイ排除 「テクノ冷戦」、第三の道はより
 「私の子どもはアップルを使っている。華為を使えば愛国だとか、使わないと愛国ではないとか、言うべきではない」

 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者で最高経営責任者の任正非氏は、地元メディア向けの会見で、自社製品の使用を愛国心と同一視した記者に反問していた。米国が華為に対して、次世代通信規格5Gからの排除に加え、部品などの輸出も規制する方針を打ち出した数日後。5月21日、深セン市の本部でのことだ。

 技術覇権を争う米国から標的にされたことで、中国では華為スマホへ買い替える社員に補助金を出す運動が企業に広がる。米ハーバード大学に通う娘がiPhoneを愛用していることを持ち出して、蔓延する「テクノナショナリズム(技術愛国主義)」を戒めてみせたのだ。「華為はただの商品。気に入らなければ使わなくてもいい。政治に結びつけてはならない」

 民族主義に傾きやすい中国社会の空気が社内に飛び火するのを制する意味もあっただろう。どこかの国の民族主義にのっかれば、ほかの国で返り血を浴びる。グローバルにビジネスを展開する企業の鉄則だ。30万円相当の人民元を元手に華為を創業した任氏は、30年余で売り上げが10兆円を超える国際企業に育てた。まな娘を介した物語は、老練な経営者の広報戦略とも言える。

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 華為は米国に育てられた企業でもある。クアルコムやインテルから半導体などを買うだけではない。「米国の靴を履く」(任氏)として、経営面ではIBMやコンサルティング会社から指導を受けてきた。米有名大学に研究協力金を投じ、博士号を持つ多数の技術者も採用する。さらに言えば、米国を中心に第2次世界大戦後に築かれた自由貿易体制の恩恵を存分に受け、世界170カ国に市場を広げた。

 その歯車が猛烈な勢いで逆回転している。米グーグルの基本ソフト(OS)が使えなくなる懸念から、新製品の販売延期などが続出している。
華為の経営への打撃は免れない。同時に、技術の規格の標準化を進める業界団体や技術者の組織から外す動きもある。部品を中心に年7千億円弱を華為に売る日本企業はもちろん、1兆円強を売る米国企業にも影響は大きい。サプライチェーン(部品供給網)の分断や規格作りからの排除は、世界の消費者にコストとしてはね返る。日本は同盟国の米国と巨大市場・中国のはざまで難しい立場にある。

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 中国メディアと会う3日前。任氏は日本メディアとも会見した。妻が好きだというホテル雅叙園東京のカフェを模して作られた、深セン本部にある喫茶室。私は任氏の真ん前に座って、米国との関係を問うた。

 米シスコシステムズとの競合が目立ち始めた15年ほど前のこと。米モトローラの傘下に入ることを決めた任氏は、「カウボーイハットをかぶって中国人が働く形で事業を続けよう」と交渉を重ねた。米側の事情で破談になった後は、広く世界の企業と結びつき、米国に頼らず自力で部品を作る体制を整えてきた。「情報産業の山を登り、いずれ山頂で(米国に)出合えば、激しい衝突が起きると予想した」という。

 その「頂上決戦」の時がやってきた。母国である中国が自ら主導する秩序を模索し、カウボーイハットに満足しなくなったからだ。「国家資本主義」の中国の台頭を受けて、米国は経済への介入を強めて反撃している。中国を安全保障上の脅威とみる米国の対中認識が変わらない限り、「テクノ冷戦」は続く。

 その行方は、華為の盛衰を超えて世界の通信インフラのあり方を規定する。分断のコストを最小限に抑え、安全性と利便性をともに高める第三の道はあるのか。その開拓にこそ新しい技術と英知を注ぐべきだ。グローバルなビジネスから恩恵を受けてきた日本企業も観戦者ではいられない。(編集委員)


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2019年2月21日(ザ・コラム)国家不信と国籍 星条旗を手にした宝宝たちより
 青く澄んだ空に、ヤシの並木が映える。カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のアーバイン。学歴が高い裕福な家庭が多く、全米で指折りの治安の良さで知られる。

 中国人にとっては「国籍ロンダリング(洗浄)」の「聖地」でもある。出産前に渡り、米国籍を得られる赤ちゃんを産むビジネスが根を張っている。

 移民を敵視し、壁まで築こうとするトランプ政権のもと、万里の長城の国から訪れる妊婦さんはむしろ、増えているそうだ。

 どんな人たちなんだろう。「月子(ユエツー)中心」と呼ばれる施設を訪ねた。

         ◇
 閑静な住宅街の一戸建てに、彼女らは住んでいた。玄関にはベビーカーが並ぶ。「HAPPY BIRTHDAY」。誕生パーティーの写真には、赤ちゃんを抱いた女性が赤いスーツ姿でほほえむ。星条旗にワシが描かれた米国パスポートを手にした「宝宝(パオパオ)(中国語で赤ちゃん)」と、旧正月に中国へ戻った。会社の社長さんだ。

 予定日の2ヶ月前に入居し、産後は1ヵ月を過ごす。料理など家事をしたり、月嫂(ユエサオ)という母子の面倒をみたりする中国出身のお手伝いさんがいる。近くの病院には、中国語を話す医者もいる。

 月子とは、中国語で産後ひと月をさす。中華圏ではこの間、母親が十分な休養をとる伝統がある。その産後ケアセンターが「月子中心」。元卓球選手の福原愛さんが台湾で利用し、日本でも話題になった。

 ただ、米国の「月子中心」の最大の狙いは国籍の取得だ。米国で生まれた赤ちゃんは、両親が外国籍でも米国籍を得られる。この「出生地主義」の廃止を、トランプ大統領が昨秋の中間選挙前に主張したわけだが、中国の人々はむしろ「今のうちに」とせかされた気持ちになったようだ。深まる米中対立の影響を心配して、扉が狭まる前に駆けこむ心理もある。

 中国東北部から来た女性は、双方の両親と一緒に5人で一軒家を借りあげていた。会社を経営する夫も近く合流する。「空気がいいし、来て良かった」。仲介業者がさまざまなコースを用意し、妊婦数人の同居なら数百万円から可能だ。今の中国なら負担できる家庭は少なくない。

 みんな同じことを言う。「子供の将来の選択肢を増やすため。米国のパスポートは中国のものより移動の自由が大きい。一流の教育も、医療や福祉もうけやすい」。ある業者が付け加えた。「経済も軍事も世界で一番強い国だから安心料なんです。何十年か経てば分からないけどね」

 米国は妊婦の入国を禁じてはいないが、こうした業者は極めてグレーな存在だ。2015年には同じ州で大規模な捜査が入り、逮捕・起訴された人も出た。マンションの一室に大勢の妊婦さんを詰めこんだ施設もあった。ロシア人はマイアミ、日本人はハワイを好むとされ、国籍を求めて米国で出産する外国人はいる。ただ、中国人は規模が違う。一戸建てに分散させたのは、目立たぬように潜む手段でもある。

         ◇
 不透明な商売だけに数字はあいまいだが、西海岸を中心に全米で数百カ所あり、中国人が米国へ出かけて産んだ子供は、「10年の5千人から12年に1万人を超え、16年には8万人を上回った」(中国・第一財経日報ネット版)。私が会った業者も「12年ごろから増えた」と話す。習近平氏が中国共産党総書記に就いた年である。

 親が子を思う気持ちだけとは限らない。子供を足がかりに国内からお金を移し、資金の洗浄に使う場合もある。習政権のもとで腐敗退治から言論弾圧まで国家による監視が厳しくなるなか、動きは加速している。政治家や軍の幹部の愛人といった背景を持つ女性もいるときく。

 「中華民族の偉大なる復興の夢」に邁進して豊かになる人が増えれば、米国籍を「買う」人が増える。彼らは米国を信じ切ってはいない。人生のリスク分散の一環なのだ。「孟母三遷」にも似た、歴史を生き抜く処世術ともいえる。経済規模で中国が米国を超えたぐらいでは変わらないだろう。国家に対する信用度の低さは、国のもろさか。人々の強さなのか。

 「日本人もおいでよ」。あっけらかんと誘う声に、国家と個人との距離を考えた。


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多事奏論一覧に吉岡記者の中国論が載っています。
<吉岡桂子記者の渾身記事26>:2019年2月21日
<吉岡桂子記者の渾身記事25>:2019年1月17日


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