カツラの葉っぱ 大好き!

アクセスカウンタ

zoom RSS 『ねじまき鳥クロニクル・第二部』

<<   作成日時 : 2019/04/09 00:50   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

<『ねじまき鳥クロニクル・第二部』>
大学図書館で『ねじまき鳥クロニクル・第二部』という本を、手にしたのです。
僕が不思議な井戸の底で見いだしたものってか・・・
これって、『騎士団長殺し』のお話しそのものではないか♪


【ねじまき鳥クロニクル・第二部】


村上春樹著、新潮社、1994年刊

<「BOOK」データベース>より
猫が消えたことは、始まりに過ぎなかった。謎の女はその奇妙な暗い部屋から、僕に向かって電話をかけつづける。「私の名前を見つけてちょうだい」。加納クレタは耐えがたい痛みに満ちた人生から、無痛の薄明をくぐり抜け、新しい名前を持った自己へと向かう。名前、名前、名前。名づけられようのないものが名前を求め、名前のあるものが空白の中にこぼれ落ちていく。そして僕が不思議な井戸の底で見いだしたものは…。

<読む前の大使寸評>
僕が不思議な井戸の底で見いだしたものってか・・・
これって、『騎士団長殺し』のお話しそのものではないか♪

amazonねじまき鳥クロニクル・第二部


この本の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p130〜132
<8 欲望の根、208号室の中、壁を通り抜ける>
 夜明け前に井戸の底で夢を見た。でもそれは夢ではなかった。たまたま夢というかたちを取っている「何か」だった。

 僕は一人でそこを歩いていた。広いロビーの中央に据えられた大型テレビの画面には綿谷ノボルの顔が映し出されていた。彼の演説は今始まったばかりだった。ツイードのスーツ、ストライブのシャツに紺のネクタイを締め、テーブルの上で両手を組んで、綿谷ノボルはカメラのレンズに向かって何かを喋りかけていた。その背後の壁には大きな世界地図がかかっていた。

 ロビーには百人を越えると思われる数の人々がいたが、ひとり残らず動きを止めて、真剣な顔つきで彼の話に耳を傾けていた。まるでこれから何か、人々の運命を左右する重大な発表がおこなわれるみたいだった。

 僕も立ち止まった、テレビの画面を見た。綿谷ノボルは、彼の目には映らない何百万人という数の人々に向かって手慣れた、しかし非常に真摯な口調で語りかけていた。彼と直接顔を合わせているときに感じるあのたまらなく不快な何かは、ずっと奥の方の目につかないところに隠されていた。

 彼の喋り方には独特の説得力があった。ちょっとした間の取り方や、声の響きや、表情の変化によって、そこには不思議なリアリティーのようなものが生じていた。見たところ綿谷ノボルは弁舌家として日いちにちと成長をとげているようだった。僕はそんなことを認めたくはなかったけれど、認めないわけにはいかなかった。

「よろしいですか、すべてのものごとは複雑であると同時にとても簡単なのです。それがこの世界を支配する基本的なルールです」と彼は言った。「そのことを忘れてはなりません。複雑に見えるものごと(もちろんそれは実際に複雑であるわけなのですが)その動機においてはきわめて単純なのです。それが何を求めているか、それだけのことです。

 動機というものはいうなれば欲望の根です。大事なのは、その根をたどることです。現実という複雑さの地面を掘るのです。それをどこまでも掘っていくのです。その根のいちばん先のところまでどこまでもどこまでも掘っていくのです。そうすれば」と言って、彼は背後の地図を指で示した。

「すべてはやがて明らかになります。それが世界のありようです。愚かな人々は、永遠にその見かけの複雑さから脱け出すことができません。そしてこの世界のありようを何ひとつ理解できないまま、暗闇の中でうろうろと出口を探し求めながら死んでいきます。彼らはちょうど深い森の奥や、深い井戸の底で途方に暮れているようなものです。彼らの頭の中にあるのはただのがらくたか石ころのようなものです。彼らには何もわかりません。どちらが前でどちらが後ろか、どちらが上でどちらが下か、どちらが北でどちらが南か、おれさえもわからないのです。だから彼らはその暗闇の中から抜け出すことができないのです」

 綿谷ノボルはそこで間を置き、聴衆の意識に自分の言葉をゆっくりとしみ込ませ、それからまた口を開いた。

「そのような人々のことは忘れましょう。途方に暮れたい人には、途方に暮れさせておけばいいのです。私たちにはまずやらなくてはあらないことがあります」

 彼の話を聞いているうちに、僕の中にだんだん怒りが湧き上がってきた。それは息苦しいほどの怒りだった。彼は世界に向かって語りかけている風を装って、実は僕ひとりに向かって語りかけているのだ。そこには間違いなく、何かひどくねじくれて歪んだ動機のようなものがあった。

 でもそんなことは他の誰にもわからない。だからこそ綿谷ノボルはテレビという巨大なシステムを使って、僕ひとりに暗号のようなメッセージを送りつけることができるのだ。僕はポケットの中で拳を強く握りしめた。でも僕はその怒りをどこに持っていくこともできなかった。そしてまた自分の感じているこの怒りを、ここにいる誰とも共有できないという事実が、僕に深い孤立感のようなものをもたらした。

 綿谷ノボルの言葉をひとことも聞き漏らすまいと耳を澄ましている人々で溢れたロビーを横切って、客室に通じる廊下に僕はまっすぐに進んだ。そこにはいつもの顔のない男が立っていた。僕が近づくと彼はその顔のない顔で僕を見た。そして音もなく、僕の前にたちはだかった。

このあと、綿谷ノボルは新潟*区から衆院選立候補を目論み、僕の方は加納クレタと一緒にクレタ島旅行に出かけることになります。(結局、クレタ島にはクレタ一人で行ってしまったが)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『ねじまき鳥クロニクル・第二部』 カツラの葉っぱ 大好き!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる