(GLOBE)「不自由な自由貿易」

<(GLOBE)「不自由な自由貿易」>
朝日(GLOBE)の「不自由な自由貿易」が興味深いので、紹介します。


【米中摩擦でベトナムが潤うからくり 中国企業が次々移転】
「風が吹けば桶屋が儲かる」――。一見すると全く関係がない物事に影響が及ぶことの喩えだが、世界の企業の「供給網」が複雑に張り巡らされている今、影響は意外な場所へと広がっていくことがある。その一例が、米中貿易摩擦の「恩恵」を受けているベトナムだ。(西山明宏)


 首都ハノイから約150キロ東にある世界遺産の景勝地ハロン湾。そこから2006年に日本のODAでつくられたつり橋「バイチャイ橋」を渡り、車で40分ほど走ったところにドンマイ工業団地がある。

 現地特有の細長い家が並び、牛が草をはむのどかな工業団地に最近、異変が起きた。これまで自動車部品大手の矢崎総業、台湾とベトナムの計3社しか工場がなかったのに、今年に入って5社の中国企業の移転話が進んでいるという。

 工業団地を運営する不動産会社ヴィグラセラの販売責任者、グエン・マン・フンさん(32)が現地を案内してくれた。中国企業が使う予定の土地は計約15ヘクタールで、整地済みの土地の半分を占める。具体的な企業名は明かせないというが、年内に正式契約を結び、工場の建設が始まる予定という。「米中貿易戦争のおかげだよ。とても大きなビジネスチャンスになっている」と、グエンさんは笑顔を見せた。

グエンさん

 契約にこぎつけそうなのは5社だが、2017年末から中国企業の視察が急増し、今も続いているという。「200社以上いたと思うが、覚えきれないぐらい」。電子部品、自動車関連、縫製、家具など業種は問わない。二つの港に30キロ圏内という立地が評価された面もあるが、ベトナムに来れば米中の関税引き上げの影響を受けずにすむことが背景にある。

 ヴィグラセラの別の工業団地も訪ねた。中国との国境に近い同省のモンカイという場所にあるハイイエン工業団地だ。中国へのアクセスの良さから、こちらにはすでに中国企業の大きな縫製工場がある。団地内の一角には衣服や携帯電話を売る商店や食堂、社員寮などが並び、中国語の看板も目につく。
 中国企業の進出を当て込み、拡張工事も続いている。グエンは「まだ契約には至っていないが、こちらにもよく中国企業が視察に来る」と話す。

 ヴィグラセラはベトナム国内に11カ所の工業団地を持ち、進出企業のほとんどが日本や韓国からだった。日本貿易振興機構(JETRO)による今年1月までの調査では、ハノイにおける製造業の賃金は月額217ドル。中国各都市の半分以下の水準で、人件費が高騰する中国から生産拠点を移す動きが続いてきたからだ。だが17年以降、米中貿易摩擦によって中国企業が急増し、いまや半数を占めつつある。今年の契約数もすでに当初の計画の2倍にまで伸びているといい、中国化が一気に進む。

 南部ホーチミンに拠点を置く中国のコンサルタント会社役員、高見さん(41)は、中国企業からのベトナム移転の相談を受けてきた。「貿易戦争で中国にも米国にも利はない。あるとしたらベトナムぐらいだろう」。現状がベトナムの”一人勝ち”になっている、と高見さんは指摘する。



【iPhone売れず、中国が揺れた 「アップル・ショック」激震の現場】
圧倒的な人気を誇ってきた米アップルのiPhoneの売れ行きに、今年、急ブレーキがかかった。中国での販売不振に端を発した「アップル・ショック」。その影響は世界の市場を揺さぶり、部品を供給している日本の企業にも及んでいる。
iPhoneの精密な部品の一つひとつを供給している巨大なサプライチェーン。その現場をたどると、各国企業がモザイクのように絡み合い、簡単には崩せなくなっている現代の貿易の構図が見えてくる。(益満雄一郎、五十嵐大介)


■「リストラ5万人」の衝撃
 春節(旧正月)が過ぎ、街が活気を取り戻す3月上旬、中国の「iPhoneの街」は閑古鳥が鳴いていた。
「世界のiPhoneの半分超を生産する」(中国メディア)といわれる河南省鄭州。台湾・鴻海精密工業グループが超大型工場を構える。出稼ぎ労働者が増える繁忙期は従業員が40万人を超える。
鴻海精密工業グループの工場前

 工場周辺の商店街を訪れると、食堂やスーパーが相次いで閉店に追い込まれ、一部はシャッター通りに。串焼き店の男性は客がいない店内でぼやく。「こんな状態が続けば、店がつぶれてしまう」

 原因は、昨秋に売り出した新機種に代表されるiPhoneの販売不振だ。鄭州の工場は5万人規模の労働者を前倒しでリストラしたと報じられた。
中国でiPhoneの販売価格は機種によっては、1万元(約17万円)を超える。一般的な鴻海の工場労働者からみれば、月給の2倍以上だ。一方、華為技術(ファーウェイ)などの中国ブランドは数千元で買えるうえ、機能も充実。中国の消費者にはiPhoneの魅力が下がったと映る。

 新年早々、世界の株式市場は「アップル・ショック」に見舞われた。米アップルは中国でのiPhoneの販売不振などを理由に、業績予想を大幅に下方修正。世界の株価が急落した。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は声明で「中国経済は、米国との貿易摩擦でさらに影響を受けたとみている」として、米中摩擦も一因との見方を示した。

 1990年代以降、インターネットなどテクノロジーの進化が進み、先進国の多国籍企業は賃金が安い新興国に製造拠点を移し、世界的な分業体制をつくりあげた。アップルは、こうした「グローバル・バリューチェーン」と呼ばれる供給網の恩恵を受けた象徴的な存在だ。世界中に企業の「供給網」が複雑に張り巡らされている時代に、貿易戦争の影響を予測するのは極めて難しい。

「賠償金を払え!」。昨年11月、中国沿岸部の福建省アモイ。iPhoneのガラス部品をつくるメーカーがリストラに着手すると、出稼ぎに来ていた1000人超の労働者が激高し、会議室で長いすを投げつけるなど暴れ出した。地元自治体の幹部らが駆けつけ、事態の沈静化を図ったが、納得しない人々が工場の近くにある空港を占拠しようとした。

 中国は2001年のWTO加盟後、輸入した原材料を加工・製品化した後、大量に輸出する貿易システムを築き上げ、世界第2位の経済大国にのしあがった。21世紀、自由貿易の恩恵を最も受けた国の一つだ。

「中国製造2025」を掲げる中国政府は、次世代情報通信などの先端分野を重視。安い労働力を使ってつくる消費財から高度な製品へのシフトが進んでおり、25年までの「製造強国」の仲間入りをねらう。

 首相の李克強は3月下旬、世界の政財界の有力者を前に国際経済会議で演説し、「中国は自由貿易を提唱し、公正な貿易を主張している」と訴えた。だが、中国が国有企業の優遇などの貿易慣行を変え、米国流の自由貿易のルールにかじを切る見込みは乏しい。


(GLOBE)米中摩擦でベトナムが潤うからくり 中国企業が次々移転2019.4.08
iPhone売れず、中国が揺れた 「アップル・ショック」激震の現場2019.4.07




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