『ねじまき鳥クロニクル・第一部』1

<『ねじまき鳥クロニクル・第一部』1>
図書館に予約していた『ねじまき鳥クロニクル・第一部』という本を、待つこと18日でゲットしたのです。
二人の家から猫が消えるってか・・・
『納屋を焼く』という村上春樹の短篇にも同じような構成が見られたなあ。



【ねじまき鳥クロニクル・第一部】


村上春樹著、新潮社、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
僕とクミコの家から猫が消え、世界は闇にのみ込まれてゆく。-長い年代記の始まり。

<読む前の大使寸評>
二人の家から猫が消えるってか・・・
『納屋を焼く』という村上春樹の短篇にも同じような構成が見られたなあ。

<図書館予約:(3/12予約、3/30受取)>

rakutenねじまき鳥クロニクル・第一部



冒頭の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p11~13
<1 火曜日のねじまき鳥>
 台所でスパゲティーをゆでているときに、電話がかかってきた。僕はFM放送にあわせてロッシーニの『泥棒かささぎ』の序曲を口笛で吹いていた。スパゲティーをゆでるにはまずうってつけの音楽だった。

 電話のベルが聞こえたとき、無視しようかとも思った。スパゲティーはゆであがる寸前だったし、クラウディア・アバドは今まさにロンドン交響楽団をその音楽的ピークに持ちあげようとしていたのだ。しかしやはり僕はガスの火を弱め、居間に行って受話器をとった。新しい仕事の口のことで知人から電話がかかってきたのかもしれないと思ったからだ。

「十分間、時間を欲しいの」、唐突に女が言った。
 僕は人の声色の記憶にはかなり自信を持っている。それは知らない声だった。「」と僕は礼儀正しく尋ねてみた。

「あなたにかけているのよ。十分だけでいいから時間を欲しいの。そうすればお互いよくわかりあうことができるわ」と女は言った。低くやわらかく、とらえどころのない声だ。
「わかりあえる?」
「気持ちがよ」

 僕は戸口から首をつきだして台所をのぞいた。スパゲティーの鍋からは白い湯気が立ちのぼり、アバドは『泥棒かささぎ』の指揮をつづけていた。

「悪いけど、今スパゲティーをゆでてるんです。あとでかけなおしてくれませんか」
「スパゲティー?」、女はあきれたような声を出した。「朝の十時半にスパゲティーをゆでているの?」
「あなたには関係のないことでしょう。何時に何を食べようが僕の勝手だ」、僕はちょっとむっとして言った。

「それはそうね」、女は表情のない乾いた声で言った。ちょっとした感情の変化で声のトーンががらりとかわるのだ。「まあいいわ、あとでかけなおすから」
「ちょっと待って」、僕はあわてて言った。「何かのセールスだとしたら、何度電話をかけてきたって無駄ですよ。こっちは今失業中の身だし、何かを買う余裕なんてないから」
「知ってるから大丈夫よ」
「知ってるって何を?」
「だから失業中なんでしょう。知ってるわよ、そんなこと。だから早くあなたの大事なスパゲティーをゆでてくれば」
「ねえ、あなたはいったい・・・」と言いかけたところで電話が切れた。すごく唐突な切れ方だ。

 感情の持っていき場のないまま、手に持った受話器をしばらく眺めていたが、やがてスパゲティーのことを思いだして台所に行った。そしてガスの火をとめてスパゲティーをざるにあけた。スパゲティーは電話のせいでアルデンテというには心もち柔らかくなりすぎていたが、致命的なほどではない。



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