『フィールドサイエンティスト 地域環境学という発想』1

<『フィールドサイエンティスト 地域環境学という発想』1>
図書館に予約していた『フィールドサイエンティスト 地域環境学という発想』という本を、待つこと4日でゲットしたのです。
絶滅危惧種の保護と地域環境の再生というテーマには、わりと関心があるわけで・・・
ぱらぱらとめくると、豊岡市のコウノトリが出て来るのがええでぇ♪



【フィールドサイエンティスト 地域環境学という発想】


佐藤哲著、東京大学出版会、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
【目次】
第1章 アフリカのマラウィ湖ー開発途上国のなかの生態学(アフリカとの出会い/生態学者と地域社会 ほか)/第2章 沖縄のサンゴ礁ー定住する研究者(環境保全の主役はだれか/石垣島白保のサンゴ礁 ほか)/第3章 里山を活かすー環境アイコン(人と自然をつなぐもの/コウノトリの野生復帰 ほか)/第4章 アメリカのコロンビア川ーサケをめぐる多様な人々(地域社会のリアリティ/環境アイコンとしてのサケ ほか)/第5章 新たな知の体系を求めてー地域環境学が目指すもの(実践的な総合科学/地域環境知 ほか)

<読む前の大使寸評>
絶滅危惧種の保護と地域環境の再生というテーマには、わりと関心があるわけで・・・
ぱらぱらとめくると、豊岡市のコウノトリが出て来るのがええでぇ♪

<図書館予約:(3/04予約、3/08受取)>

rakutenフィールドサイエンティスト 地域環境学という発想




豊岡市のコウノトリを、見てみましょう。

<3.2 コウノトリの野生復帰>p92~94
■(1) 環境アイコンとしてのコウノトリ
 兵庫県立コウノトリの郷公園の研究部長を長く務めた池田啓さんは、残念ながら2010年に亡くなってしまったが、ぼくの古くからの友人であり、生態学者として尊敬する先輩であり、自然科学者として社会が直面する環境問題の解決になんとか貢献したいとあがいていたころのぼくの、道標となった人だった。

 池田さんはタヌキなどイヌ科動物の生態の傑出した研究者でであると同時に、文化庁で天然記念物行政に長く携わり、けっきょく、特別天然記念物であるコウノトリの野生復帰の現場に飛び込んだ フィールドでの研究から行政へ、そしてまたフィールドの現場へと渡り歩いた池田さんから、ぼくは科学者として社会の現実に向き合うための基本的な姿勢を学んできたように思う。

 池田さんが1999年から赴任した兵庫県豊岡市の兵庫県立コウノトリの郷公園は、ニホンコウノトリの保護増殖と野生復帰をミッションとしたレジデント型研究機関である。ぼくは池田さんに連れられて、2002年に初めて兵庫県豊岡市を訪問し、コウノトリの野生復帰に向けた地域ぐるみの取り組みを目にすることになった。それ以来、豊岡市の取り組みに魅了され、訪問型研究者としてかかわりながら、多くのことを学び続けている。

 豊岡市のコウノトリ野生復帰への取り組みは、環境アイコンを活用した自然再生と地域再生の試みとして有名である。「コウノトリの生息を支える豊かな自然とコウノトリを暮らしの中に受け入れる文化こそが、人にとってすばらしい環境である」という認識が多様なステークホルダーの間で共有され、それぞれの立場からコウノトリをめぐる自然再生と持続可能な地域づくりが進んでいる点が、ぼくにとって新鮮だった。

 ニホンコウノトリは、明治初期までは日本全国に広く分布していた。しかし、農薬による餌生物の減少とコウノトリ自体の汚染、営巣に必要なマツの高木の伐採などが引き金となって激減し、1950年代に日本の野生個体群は絶滅した。

 コウノトリの絶滅は、日本の近代化にともなって、農業のスタイルと水田環境が大きく変化し、水田の多様な生態系サービスが失われてきたことと深くかかわっている。その日本最後のコウノトリの個体が生息していたのが兵庫県豊岡市である。

 豊岡市では飼育下におけるコウノトリの増殖が早くから試みられてきた。そして、いったん絶滅した大型鳥類の野生復帰という世界でも類を見ない成果が、2005年に達成されることになった。コウノトリが日本で最後まで生息していたこと、その保護の取り組みが長く続けられてきたこと、そして世界的にもまれな野生復帰が実現したことが、豊岡市の人々とコウノトリのかかわりに、ほかの地域にはない独自の価値を付与することになった。(中略)

 コウノトリは、水田などの湿地で餌をとり、マツの高木や人家の屋根などで営巣する人里の鳥である。人々の日常生活のいたるところに出没し、生活の瑣末な局面で出会う身近な鳥であった。したがって、コウノトリが地域社会の人々と多様なつながりを持ち、さまざまな感情を喚起してきたことは確かだろう。一度は絶滅した身近な鳥を野生に戻すという試みが現実化したときに、地域の人々のコウノトリに対するなつかしさや愛着が強化されたと考えることができる。
(中略)

 コウノトリの餌資源を確保するための無農薬農法などが生まれ、健康志向に対応した付加価値を生む可能性が芽生えたこと、コウノトリの野生復帰の活動がメディアの注目を集めてコウノトリを中心とした観光の活性化が期待されるようになったことなどが、さまざまな生態系サービスを象徴する環境アイコンとしてのコウノトリを核とした、多様なステークホルダーの協働を生み出していった。

 このようにしてコウノトリの野生復帰をめぐる物語が生まれ、人々の間で共有されたことによって、コウノトリが人々の日常生活と密着した自然再生と持続可能な地域づくりの核となっていったと考えることができる。


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