『本の森 翻訳の泉』4

<『本の森 翻訳の泉』4>
図書館で『本の森 翻訳の泉』という本を手にしたのです。
ぱらぱらとめくると、取り上げている作家が多和田葉子、村上春樹、水村美苗、池澤夏樹と好きな作家が多いのが借りる決め手となりました。


【本の森 翻訳の泉】


鴻巣友季子著、作品社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
角田光代、江國香織、多和田葉子、村上春樹、朝吹真理子ー錯綜たる日本文学の森に分け入り、ブロンテ、デュ・モーリア、ポー、ウルフー翻訳という豊潤な泉から言葉を汲み出し、日本語の変容、文学の可能性へと鋭く迫る、最新評論集!

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると、取り上げている作家が多和田葉子、村上春樹、水村美苗、池澤夏樹と好きな作家が多いのが借りる決め手となりました。

rakuten本の森 翻訳の泉



阿部和重との対談を、見てみましょう。
p271~275
<いま小説家は、どう見えますか?>
■翻訳家への道
阿部:厳密にはそうではないようですが、ほぼ初対面ですね。そこでまずは鴻巣さんご自身のお仕事について伺いたいのですが、いま、多くの媒体で書評をされていますね。

鴻巣:『朝日新聞』の書評委員の他、雑誌にレギュラーで書評を書かせてもらっているのは『東京人』『週刊朝日』『週刊ポスト』でしょうか。2000年ぐらいまではほとんど新聞のコラムや翻訳のみでしたが、この十年は、書評に限らずエッセイなどを書く仕事も増えました。

阿部:ちなみに翻訳はいつ頃から?

鴻巣:大学四年のときに『翻訳の世界』というカルチャー誌に足を突っ込んだのが最初で、大学院の二年目には自分の名前で翻訳書を出すことができたので、キャリアはもう二十数年になります。

阿部:当初から翻訳は文学に関するものを目指されたのですか?

鴻巣:洋画の映画字幕をやりたいという希望がまずありました。ただ当時はビデオやDVDなんてものもありませんし、劇場で封切られるものといえば、ハリウッド超大作かヴィスコンティのようなヨーロッパの巨匠の芸術作品、そしてポルノグラフィがほとんどでしたので、若手の字幕翻訳家などなかなか需要がない。戸田奈津子さんや彼女の先生筋の大家によって、席は埋まっている状態でした。

 それでどうしようかなと考えていた19歳のある日、写真週刊誌『フォーカス』でひとつの広告を見たんです。「あなたの翻訳力をテストします」という翻訳学校の広告でした。それではじめて、字幕翻訳は無理でも文芸書の翻訳家にはなれるのかも、と。

阿部:そこから一直線に翻訳家の道へと進まれたわけですか。

鴻巣:恥かしい過去をお話しすると、二十代の頃までは自分でも小説を書き、原稿用紙百枚ほどの短篇を今はなき『海燕』という文芸誌に送ったこともあります。でも翻訳の作業をやってみると、すぐにこれこそ自分にぴったりだと実感しました。もともと読むことが好き、書くことも好き、語学にも興味がある。だけど小説家のようにゼロから構築する才能はない・・・これらの要素をいっぺんに充たす仕事はまたとないな、と。

 それで独学で勉強し始めて、翻訳家の柳瀬尚紀先生のところに行きました。最初は「弟子はとらん」と拒否されながらも周囲をウロウロし続けることで、ついに「弟子はとらないが運転手なら」と言ってもらえた。二十代後半まで先生の運転手をしていました。

阿部:すごい経歴ですね。たけし軍団の付き人みたいだ(笑)。子どもの頃から積極的に行動するタイプだったんですか?

鴻巣:うーん、運転手をしていると先生の周りの猛者の方々ともつきあうので鍛えられはしました。酔っ払った作家や編集者を乗せた車を中央分離帯に乗りあげて大破する、などの人生修業を積んだものです。でも、もとはものすごく引っ込み思案な子どもだったんですよ。

阿部:またまた(笑)。
(中略)

■小説家の五大悩み!?
阿部:せっかくの流れなので、ここで、これまでの「和子の部屋」をお読みになったご感想などをお伺いできますか?

鴻巣:とにかくお話が哲学的で思弁的で、言葉の密度が濃いと思いました。漠然と「作家の日常をお見せします」的な茶飲み話がなされるのかと思っていましたから(笑)。

阿部:じつはわれわれも気楽な茶飲み話のつもりで始めたんです。でもいざやってみると、回を追うごとに相談内容がディープになっていった。小説家に悩みを聞くとこうなるのかと、当初の目論見の甘さに気づかされました。

鴻巣:これまでの五回には、創作に関わる「五大悩み」というべきものが網羅されています。タイトルをつけるなら、一人目の角田光代さんは<創造の源とは何か>。彼女が「幸せだと小説は書けないのでは」とおっしゃるのに対し、阿部さんは「不幸というファクターは創作に必要ない」と答えられた。そのあざやかな対比が面白かったです。

 じつはこれまでわたしも、親への反発をはじめとする何かしらの屈託が、自分を創作や翻訳に向かわせていると考えていた節があります。

阿部:ひとつ言い訳めいたことを述べれば、それはあくまで角田さんへの返答である、という部分が少なからずあります。全部通して読むと、「お前、前に言ってたこととこれ、矛盾してないか?」と指摘されかねない回答もあるかもしれません。この連載はライブ感を重視したいということもあり、ほとんどその場の思いつきばかりを僕は述べているので矛盾も生じやすい。それと人生相談の回答って、必ずしも回答者自身の考えをそのまま伝えることが正しいわけでもない。

鴻巣:もちろんそれはよくわかります。阿部さんだって、実生活の影響をまったくゼロにすることは不可能ですよね。


『本の森 翻訳の泉』3:読書つれづれ日記2006~2007
『本の森 翻訳の泉』2:『エクソフォニー』で読む『文字移植』
『本の森 翻訳の泉』1:対談 日本語は滅びるのか

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