『本の森 翻訳の泉』3

<『本の森 翻訳の泉』3>
図書館で『本の森 翻訳の泉』という本を手にしたのです。
ぱらぱらとめくると、取り上げている作家が多和田葉子、村上春樹、水村美苗、池澤夏樹と好きな作家が多いのが借りる決め手となりました。


【本の森 翻訳の泉】


鴻巣友季子著、作品社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
角田光代、江國香織、多和田葉子、村上春樹、朝吹真理子ー錯綜たる日本文学の森に分け入り、ブロンテ、デュ・モーリア、ポー、ウルフー翻訳という豊潤な泉から言葉を汲み出し、日本語の変容、文学の可能性へと鋭く迫る、最新評論集!

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると、取り上げている作家が多和田葉子、村上春樹、水村美苗、池澤夏樹と好きな作家が多いのが借りる決め手となりました。

rakuten本の森 翻訳の泉



著者の書評を2006年の日記から、見てみましょう。

<読書つれづれ日記2006~2007>
■2006年9月2日p71~74
 翻訳者というのはよく「巫女さん」に喩えられる。神の声をつたえる者、すなわち作者の代理だという発想で、わたしも以前は作者になりきろうとジタバタした。でも、じつは訳者は作者の代理ではなく、読者の代表、いや、読者のひとり。小説家の胸のうちは謎のままだ。

 ところが、小説家のエッセイ集というのは、時にその胸のうちを垣間見た気にさせてくれるから、にくい。そうした本のなかでも、『博士の愛した数式』の作者・小川洋子のエッセイ集『犬のしっぽを撫でながら』は、格別にスリリングだ。

「無いものを存在させる」虚数や0を発見した数学者というのは、「言葉にできないことを言葉にしようとする」小説家と近い存在なのでは? と感じたのが、あの小説の種子となったとか、「友愛数」という言葉から、博士と家政婦さんの出会いの場面がそれこそ天啓のようにパーッと浮かんでくる、といったくだりに、著者の感性と知性がきらめいいている。

 自身の文学の原点だというアンネ・フランクをめぐるエッセイの静かな迫力や、犬と野球への熱愛ぶりもいいが、「フーヴォー村と泉泥棒」という短いエッセイにわたしは胸をつかれ、泣いた。 わけのわからない涙がこんこんと湧いてきた。人の心にインスピレーションが宿る瞬間をこんなに美しく綴ったものがあるだろうか。強いてあげれば、ヴァージニア・ウルフの随筆の最高作『自分ひとりの部屋』ぐらいだ。

 ところで最近、おしゃれな「モダン温泉」がすごい勢いでふえているらしい。「お二人さま」でしか泊まれない室内風呂付きデート旅館も大賑わいだそうだ。吉田修一の短篇集『初恋温泉』は、どれもカップルが温泉に行く話だが、登場するのは格式ある老舗か渋い宿ばかりで、イマドキの温泉は出てこない。

 家族連れやひとり客も交じっている宿へ、夫婦や恋人やわけありのふたりが、それぞれ思惑をもってやって来る。貸切風呂に恋人をつれこもうと必死になる高校生もいれば、故あってひとりで来て、単身の女と親しくなる既婚の男もいる。
(中略)

■2006年11月25日p86~87
 ドゥマゴ文学賞は、毎年ひとりの選考委員が受賞作を決めるユニークな賞だ。対象作品は、「日本語の文学作品」となっている。今年は山田詠美氏の選考で平松洋子の『買えない味』が受賞したが、こういう例は珍しいのではないだろうか。本書は、アジアのごはん事情に詳しい著者による、食とその周辺のエッセイ。

 ドゥマゴ賞にかかわらず、いわゆるフード関係のエッセイが文学賞をとることじたいが画期的ではないか。わたしは、懐かしい味を手放しで恋しがり、ちょっと古風なことばを並べるだけで情緒が出ると思っているような食のエッセイが嫌いだ。その点、平松洋子の『買えない味』には、小股の切れあがった文章のなかに、毎回、小宇宙がでんぐり返るような瞬間があって、どきどきした。箸置きは「自分の戻る場所」になり、檸檬は梶井基次郎的な比喩ではなく本当に「爆弾」になる。

 東洋の輪廻思想を愛する西洋人は、四季が移ろうのではなく「めぐる」ことに惹かれる。季節のめぐりを鮮やかにとらえ、すぐれた「四季文学」たる本書のなかでも、「扉に閂を落とすように、夏はぱたりと終わる」の一文で始まり、桃をつやっぽく描く「指」は、その白眉と言えそうだ。

ウン この日記の取り上げたページに大使の好みが表れるのだが・・・
吉田修一『初恋温泉』を別にして、著者、作品、受賞作、選考委員の全てが女性となっていました。


『本の森 翻訳の泉』2:『エクソフォニー』で読む『文字移植』
『本の森 翻訳の泉』1:対談 日本語は滅びるのか

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