『知性は死なない』2

<『知性は死なない』2>
図書館に予約していた『知性は死なない』という本を、待つこと5ヶ月ほどでゲットしたのです。
自身の「うつ」からカミングアップした著者の近作であるが・・・
副題が「平成の欝をこえて」となっているのがええでぇ♪



【知性は死なない】


與那覇潤著、文藝春秋、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
平成とはなんだったのか!?崩れていった大学、知識人、リベラル…。次の時代に、再生するためのヒントを探してーいま「知」に関心をもつ人へ、必読の一冊!
【目次】
はじめに 黄昏がおわるとき/平成史関連年表 日本編/第1章 わたしが病気になるまで/第2章 「うつ」に関する10の誤解/第3章 躁うつ病とはどんな病気か/平成史関連年表 海外編/第4章 反知性主義とのつきあいかた/第5章 知性が崩れゆく世界で/第6章 病気からみつけた生きかた/おわりに 知性とは旅のしかた

<読む前の大使寸評>
自身の「うつ」からカミングアップした著者の近作であるが・・・
副題が「平成の欝をこえて」となっているのがええでぇ♪

<図書館予約:(7/25予約、12/09受取)>

rakuten知性は死なない


第5章「知性が崩れてゆく世界で」で中国が語られているので、見てみましょう。
p217~221
「帝国適性」の高い中国
 いままさに帝国の解体が進もうとしている米・欧・日にたいし、平成初頭の冷戦終焉のころから「崩壊する、崩壊する」といわれながら、いっこうに崩れない帝国があります。 われわれの隣国である中国です。
 
 なぜ、中国はいまだに崩壊しないのか。同語反復ではありますが、「歴史的に、帝国としての適正が高い地域だから」とこたえるほかないでしょう。

 「帝国」としての中華人民共和国のルーツをどこに求めるかは、むずかしいですが、多数派の漢民族を支配者とする王朝としては、1368年建国の明朝。かつて大日本帝国が「満州国」をつくった東三省をも、支配下に入れていたという点では、1644年に全土統一をはたした清朝となるでしょう。

 いずれをとっても直近の400年近く、同じ地理的サイズで国を運営してきたことは、中国の帝国維持において、大きな強みとなっています。これは、ヨーロッパおよび日本と比較すれば、すぐわかります。

 ヨーロッパの場合、イギリスをふくめた全土を完全に支配下においた帝国は古代のローマ帝国をふくめて、存在したためしがありません。大陸部にかぎっても、ナポレオンやヒトラーの絶頂期をのぞいては、統一されたことがなく、しかも彼らの支配は安定的な帝国というより、戦争にともなう「占領地」のそれでした。

 日本の場合、そもそも列島の外部に進出して帝国をきずこうという志向が、歴史的にみてあまりありません。近代の大日本帝国をのぞけば、1590年代におこなわれた豊臣秀吉の朝鮮出兵が、ほぼ唯一です。

 じっさいに経済統合という面にしぼっていえば、EUを一種の「できそこないの中国」としてみる専門家もいます。
 EUの場合、加盟国の主権をのこしているので、いかにブリュッセルから経済政策を発令しようと、各国政府を完全には統制しきれません。EU本部が「緊縮財政をしろ」といっても、ギリシャ政府がお金をばらまいてしまったら、それまでなのです。

 中国はとうぜんながらひとつの国であり、しかもご存知のとおり、一党性ですので、中央政府が発した命令は党官僚をつうじて、それなりには徹底します。発足時はカリスマの欠如が心配された習近平政権ですら、官吏の綱紀粛正をつうじて、いまはむしろ強権統治を強めているといわれるゆえんです。

 それではなぜ中国では、ソ連共産党を解体に追いこみ、アメリカでトランプ現象をまきおこした「官僚帝国への身体的反発」が、かたちをとらないのか。

 大日本帝国のすぐれた中国観察者であった、東洋史家の内藤湖南は、一見するとあまりにもわかりやすい答えを示しています。要は、「あまりにも長くつづきすぎて、もうみんなあきらめてしまったから」。

 最初の統一国家とされる紀元前の秦朝にすら、法家主義というかたちで官僚制度があったように、中国の王朝は官僚制の先進国です。とくに、960年成立の宋朝からは、儒教思想とセットになった科挙制度の普及によって、世襲ではなく筆記試験で選抜される、かなり「近代的」な官僚制が採用されました。

 こんにち漢民族とよばれているのも、実際にはこの「帝国官僚の選抜試験にエントリーするために、儒教的な思考法や風習を身につけた人びと」というのが正確な定義で、ローカルなエトノスとはだいぶちがいます。いいかえれば、ソ連政府は「ソ連民族」の創出に失敗しましたが、中国は歴史が長いぶん、ほんとうに帝国のサイズにほぼひとしい「民族の身体」をつくりだしてしまったのです。

 科挙じたいはかなりフェアな試験でしたが、合格した官僚たちはとうぜん、その後の統治にあたっては自分の出身である一族をえこひいきします。ネポティズム(縁故主義)とよばれるもので、これはソ連統治下の中央アジアなどでも、民族より細かいレベルの「部族対立」をしばしばもたらしました。

 ところが、現にそういう体制が数百年を超えてつづいた結果、中国の人びとは「政治とは、そもそもそういうものだ」と慣れきってしまった。だから中国では、意識の高い人ほどもうあきらめて、政治にはコミットしない。むしろその才能をビジネスや文化でつかうのだ・・・というのが、内藤湖南の考察でした。

中国崩壊論は、こうした中ソの帝国としての「年季の差」を無視して、たんに社会主義国というくくりだけを見て、「ソ連が崩壊したなら、中国も」といっていただけです。そうした希望的観測は、平成を最後にすてたほうがいいと、私は思います。


『知性は死なない』1

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