『馬賊で見る「満州」』6

<『馬賊で見る「満州」』6>
図書館に予約していた『馬賊で見る「満州」』という本を、ゲットしたのです。
ちょうど『張学良の昭和史最後の証言』という本を読んだところで、このところ「満州」が個人的なミニブ-ムとなっている感があるのです。



【馬賊で見る「満州」】


澁谷由里著、講談社、2004年刊

<「BOOK」データベース>より
馬賊が誕生した清末期。あるものは官憲の銃弾に倒れ、あるものは混乱を潜りぬけ略奪者から脱却し、軍閥の長として中原の覇権をうかがう。覇権に最も近づいた男=「東北王」張作霖とその舞台の激動の歴史をたどり、併せて日本にとって「満洲」とは何だったのかを考える。

<読む前の大使寸評>
ちょうど『張学良の昭和史最後の証言』という本を読んだところで、このところ「満州」が個人的なミニブ-ムとなっている感があるのです。

<図書館予約:(10/01予約、10/06受取)>

rakuten馬賊で見る「満州」


終章で「満州の馬賊」のおさらいを、見てみましょう。
p212~214
<過酷な「満州」の申し子>
 「馬賊」は、社会からドロップアウトしかねない(あるいはしてしまった)人々と、「満州」地域社会が共存していくうえで考案された、自衛のための政治的装置であった。ゆえにそこに参加し、あるいはそれを組織・後見することには社会的ステイタスがあった。軍隊に似た編成だったうえ、名望家層の推薦があったので、帰順への道も用意されていた。「馬賊」は「満州」地域社会の日常生活の一部であり、正式名称「保険隊」は堂々と名のれる職名だった。

 だが自衛武装集団が割拠する清末期が終わり、いわゆる奉天軍および張作霖政権が「満州」屈指の軍事力を獲得するに従い、「馬賊」は名目上、「満州」では次第に必用のない存在になっていった。張作霖と同様の道をたどって底辺層から這い上がろうとする人々の野心は、張作霖自身によって抑圧された。張作霖政権期に、かつての張作霖のような高名な「馬賊」が生まれないのはそのためである。

 つまり「馬賊」は、近代「満州」における地方行政と治安維持機構の麻痺という特殊な社会的条件下で生れた時代の申し子だった。大きな動乱があれば、匪賊や退役兵が組織されて類似したものが生まれる可能性があった。

 満州事変から「満州国」建国期にかけての混乱の中、抗日勢力の工作で結集された匪賊の軍隊は、スポンサーと活動領域、政治的な意義ははなはだ異なるが、地方行政と治安維持機構の麻痺から「満州」社会の底辺層を救うという意味においては「馬賊」の再生ではなかったか。

 張作霖は「馬賊」出身だった、と紹介されるとき、従来そこにはいささか侮蔑的なニュアンスがあった。しかし「馬賊」は単純な匪賊とは違う。張作霖は最初、自身が社会で台頭する手段としてこの職業を選択し、希望どおり軍隊への帰順を果たすと今度はその枠組みにのっとって身を処し、辛亥革命の混乱でも自分を見失わずに生き残った。革命家の暗殺に荷担するなど、従来の革命史観からすればそれは反動的な生き方であろうが、あの時代、総ての人が革命に身を投じたわけではないし、歴史学に道徳的判断を持ち込んでもどうにもなるまい。

 それに民国期の自分の地位に鑑みて、早い段階で「馬賊」体質を断ち切ろうとした点からも、彼が状況判断力を持つ優れた政治家であったことがわかる。つまり社会の最上層に上り詰めた彼には、もはや「馬賊」であることはなかったのだ。換言すれば、勢力範囲外での自由と放埓を部下に認めていた寛容なリーダーから、中国全土に号令を下せる政治的指導者へと変貌するため、張作霖は「馬賊」を卒業したといえるだろう。

 「馬賊」が輝きを放っていた時代は短かった。大陸浪人と謀略「馬賊」の活躍を通してしか「馬賊」を知らなかった日本人はその姿に憧れたが、中国近代史と「満州」社会の文脈においてこれを考えてみると、単純な匪賊でもなくさりとて軍人でもない、やや中途半端な存在であり、ずっとこの職業を続けるのがいかに厳しいかがおわかりいただけたと思う。張作霖の気持ちを代弁してみれば、匪賊より当然いいが、軍人以上の存在になれたら早く脱ぎ捨てたい、さなぎにとっての殻のようなものだったということではないだろうか。


ウン 単純な匪賊でなかったことが、よくわかりました。
この本も満州あれこれR1に収めておきます。

『馬賊で見る「満州」』6:「満州の馬賊」のおさらい
『馬賊で見る「満州」』5:間島地域
『馬賊で見る「満州」』4:日清戦争の衝撃
『馬賊で見る「満州」』3:清朝滅亡時の国家組織
『馬賊で見る「満州」』2:中国最後の王朝・清朝
『馬賊で見る「満州」』1:馬賊誕生の背景

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