『壊れた地球儀の直し方』5

<『壊れた地球儀の直し方』5>
図書館で『壊れた地球儀の直し方』という本を、手にしたのです。
政治家やジャーナリストが公言できないようなことを、青山さんは腑分けして目の前にさらしてくれる感があるでぇ。


【壊れた地球儀の直し方】


青山繁晴著、扶桑社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
アメリカもEUも中国も壊れていく。世界大戦の敗者の出番が来た。それは、ぼくらだ。さぁ、何からやろうか。幻の名著が新書で待望の復刊!

<読む前の大使寸評>
政治家やジャーナリストが公言できないようなことを、青山さんは腑分けして目の前にさらしてくれる感があるでぇ。

rakuten壊れた地球儀の直し方


バクダッドでの青山さんを、見てみましょう。
p124~129
<四の章 共同通信バクダッド支局へ>
 目を覚ますと、そこはもう、バクダッドの喧噪と渋滞の真ん中だった。
 だが、健康な都市の渋滞ではない。動かない車の列が二重、三重に道路の多くを占めているために、まともに走ることができない。やがて、その奇妙な車列はすべて、ガソリンスタンドから並んで延びていることが分かった。

 産油国のイラクにガソリンがなく、タクシーの運転手を含めて、とにかく車のある者はみな、スタンドに終日並んでいるのだ。久しぶりに口を開いたサラは「パイプラインはテロリストに破壊されるし、何よりオイルを米軍が押さえているから」と言う。それが理由のすべてとはわたしは考えないが、イラク経済の実情をこの車列が語っていることは間違いない。

 車で埋まった道の、わずかな隙を縫ってじりじりと進み、この最後の行程は不意に終わった。
 サラは、武器を手にした民兵が固める一角で車を止め「エンド」と言った。そこが、」わたしの最初の目的地、共同通信バクダッド支局へ通じる路地の入り口だった。
 バクダッド着、12月1日午後3時ちょうど。アンマンとの時差1時間、13時間半の行程はとにかく生きて完了した。

 車を降り、縮こまって曲がった腰をギリギリと音を立てて伸ばすと、向かって左側に黄色い巨大なビルがそびえ、重火器で攻撃されたらしい穴がいくつも開いている。パレスティナ・ホテルだ。世界中のジャーナリストが、ここなら安全と集まったが、まず米軍が戦車砲を撃ち込み、次にサッダーム殉教者軍団の残党がロケット砲を発射した。

 「ミスター、あなたの立っている、その場所でテロリストがロケット砲を構えて撃った」とサラは言った。RPG7の命中した箇所は最上階に近く、大きな噴火口のなかに中小の噴火口が重なったように見える。RPG7が「実戦」で命中した現場は初めて見るから、わたしはしばらく、しげしげと見あげていた。

 そのわたしを、民兵がカラシニコフ小銃を構えて睨んでいる。逃げ出せば、当然に撃たれる。ふつうにしていれば、こうしたときはまず撃たれない。

 噴火口から左下へ目を移していくと、アマリカ軍戦車がロイターTVのクルーを砲撃して殺傷した部屋の跡が黒く焦げている。
 パレスティナ・ホテルと通りを挟んだ向かい側には、ショッピング・モールが半壊で続いている。共同通信は、攻撃を避ける智恵として、目立たないその場所に支局を構えているということだった。

 モールの一番奥まで歩き、黒いガラスのドアを押すと、そこには小さな白い空間が意外なほど静かに残されていた。アパート形式のホテルのロビーである。
 両手を出して、約束の支払いよりも多くを要求するサラに、ある程度だけを上積みして渡し、別れを告げた。
(中略)

 さぁ、共同通信の支局を探そうとロビーの奥へ歩き出すと、乾いた音がしてロビーが薄暗く変わった。停電だ。

 暗い館内の階段を登ると、ドアの開いた一室があった。きっとここだろう。テロを避けるために電話番号も公開していないし、日本で出版されるこの本にも何階の何号室かを記すことができないが、ペルー日本大使公邸人質事件でリマに支局を構えたときも、共同通信はドアを開いていた。わたしを育ててくれた古巣のこの体質が好きである。

 一歩入ると、イラク人が六人、狭い空間に詰めている。驚きの眼で一斉にわたしを見た。あ、これは通訳や助手だな。親戚や兄弟もついでに押しかけているのかも知れない。
 その奥の部屋を覗きこむと、及川仁支局長が穏やかな表情で、壁に貼った地図の前に立っていた。凄惨な民族紛争で黒煙のあがっていたボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボを、当時は政治部の記者だったわたしが訪れ、外信部のサラエボ支局長だった及川さんと出逢って以来の再会である。

 「あ、青山さん、いや、よくぞご無事に」
 及川さんは、はにかんで微笑した。地獄で仏、わたしの疲弊した頭にはそんな古い言葉が明滅した。


イラクでの取材を見てみましょう。
p135~136
<五の章 ファッルージャでテロリストに会う>
 バクダッドは、たとえばCNNの報道で見てきたよりも徹底的に破壊されていた。大統領官邸や空軍省、情報省といったあたりはもちろんのこと、ただのスーパーマーケットや住宅も、空爆や砲撃で無秩序な断片に変わり果てている。その石の下で流れた人血、飛び出した脳髄や内蔵が変わり果てて、一部はまだこびり付いていた。

 バクダッドを流すうち、わたしたちのあいだに早くも不思議な、ほのかな連帯感めいたものが芽生えてきた。
 そこで、わたしはネビルに「ファッルージャへ行きたい」と告げた。
 運転するネビルも助手席のアドナンも驚いて振り返り、わたしを見つめた。「ファッルージャは、昼間に通ってきたけれど、夜にもう一度、行きたいんだ」

 ネビルは英語を話せないが、聞くことはできる。ハンドルから両手を離して広げ、アラビア語で叫び、アドナンがそれを英語に通訳する。「そんな馬鹿な」
 わたしは後席から身を乗り出して言った。
「ネビル、きみは大統領やその息子たちの警護官だったんだから、サッダーム・フェダイーン(殉教者軍団)にも友だちがいるだろう。その友だちは、ファッルージャに夜に行けば会えるだろう。内緒で会わせてくれ」

 ネビルは無言で、顔いっぱいに「なぜ、そんな危ないことを」と問いかけている。

ウン ジャーナリストとしての経験に裏打ちされた論述は(多少ハッタリ気味でも)切れ味がええでぇ♪

『壊れた地球儀の直し方』4:北朝鮮崩壊後に誕生する「反日連邦」に備えよp90~93
『壊れた地球儀の直し方』3:米朝戦争シミュレーションp249~260
『壊れた地球儀の直し方』2:なぜ胡錦濤は国家主席になれたのかp208~212
『壊れた地球儀の直し方』1:日本の警察には担当大臣がいないp45~49

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