『壊れた地球儀の直し方』2

<『壊れた地球儀の直し方』2>
図書館で『壊れた地球儀の直し方』という本を、手にしたのです。
政治家やジャーナリストが公言できないようなことを、青山さんは腑分けして目の前にさらしてくれる感があるでぇ。


【壊れた地球儀の直し方】


青山繁晴著、扶桑社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
アメリカもEUも中国も壊れていく。世界大戦の敗者の出番が来た。それは、ぼくらだ。さぁ、何からやろうか。幻の名著が新書で待望の復刊!

<読む前の大使寸評>
政治家やジャーナリストが公言できないようなことを、青山さんは腑分けして目の前にさらしてくれる感があるでぇ。

rakuten壊れた地球儀の直し方


青山さんは中国をどう見ているのか、また東アジアの地政学的認識について、見てみましょう。
p208~212
<なぜ胡錦濤は国家主席になれたのか>
 アジアでは、ふたつの発火点が見え隠れしている。
 ひとつは朝鮮半島である。
 ここでは、もともとひとつであった民族がふたつに分断されている。その北部、北朝鮮では独裁政権が崩壊の気配を漂わせている。それは、無理に統合されたものが分解したヨーロッパや中東とはちょうど逆に、無理にわけられたものが、ひとつに戻る動きである。
 そして、それだけではない。
 ヨーロッパや中東と同じように、「無理に統合されたもの」がいずれ崩れ去る気配も漂っている。
 中国だ。

 中国は国連に届け出た人口で13億人、人口問題の専門家のなかには14億人をはるかに超えるとみるひともいる。その膨大な人口を抱えて、すでにエネルギー不足に陥っている。日本に伝わる中国の姿は沿海部が大半で、一人っ子のサラリーマン家庭が多いように見えているが、わたしが内陸部に入ってみると戸籍にも入れない子供が農家の庭先を走り回っている。

 中国は、周辺民族の侵入を、こころの底から恐れてきた国である。「中国4000年の歴史」と言い、それを誇りながら、実は途中でモンゴル人に滅ぼされ「元」という国に変わった。近代でも女真族に滅ぼされ「清」という国に変わった。歴史は何度も途切れているのだ。

 わたしが中国を最初に訪れたとき、1980年代前半の中国は、個人の富よりも国を思う若い人がほとんどであった。拝金主義にくまなく冒された現在からすれば嘘のような夢のような話だ。
 若手記者であるわたしには、監視役を兼ねて若い男性通訳が中国当局によって付けられた。
 
 仕事の合間に、万里の長城に向かうことになり、車のなかで彼は「中国人は、少なくとも昔は戦争が好きだった日本人と違って、古代から崇高な平和主義者です。その証拠が万里の長城です」と大きな声で言った。
 わたしはこの彼が好きだったが、「いや、ちょっと待ってください」と答えた。

 「それは違うでしょう。平和主義者だったのじゃなくて、周辺民族より戦争が弱かったから、やむを得ず、あまり意味がないと分かっていても大変な努力を費やして長い砦を築くしかなかったのがほんとうでしょう。愛国者でも嘘はいけない」

 彼は長く沈黙し、「また今度、青山さんと一緒に考えましょう」と言った。この答えをわたしは好きだ。彼の誇りと愛国心と、そして素直さが自然に表れている。

 漢民族は、周辺民族への恐れのために、かつては万里の長城を築いた。築いたが、その甲斐もなくモンゴルに征服されたために、現在ではそのモンゴルの一部やウイグル、さらにはチベットを呑み込んで「人民共和国」をつくり、彼ら異民族の反乱を「人民解放軍」の武力行使で抑えている。

 江沢民体制のあとを継いだ胡錦濤国家主席は、穏やかな笑顔だけが印象に残り、一見すると何が優れていて巨大国家のリーダーなのか分からない。実はチベットで、反抗したチベット人の大量殺害を果断に指示、実行し、それをきっかけに頭角を現したのである。周辺民族の脅威を冷徹に抑えた実績は、中国漢民族にとっては何よりも評価の対象になるのだ。

 中国にとっては、北朝鮮も、実質的にこうした「周辺民族の併合」に近かった。
 中国からいても、自らを頭とするなら北朝鮮は喉であり、その下の大きなアメリアン・パワーの一群、韓国から日本そしてアメリカ本土から中国を隔ててくれる、貴重な「喉」である。
 この喉を失うと中国は、やがてウイグルやチベットの反乱を抑え込めなくなる可能性がある。

 ユーゴに始まりイラクを経て、東進する潮流がアジアに至り、朝鮮半島と中国大陸という日本の死命を左右する地域に、ユーゴよりもイラクよりも遥かに巨大な戦乱と「本来の姿に戻るための膨大な流血」が待っている。

 それが日本に何をもたらすのか。
 日本の同盟国アメリカ、主人アメリカは、これまでの潮流すべてに深く関与してきた。しかもブッシュ大統領は加速度を付けて、直接に手を下す度合いを高めている。
 日本国民が、敗戦後からこれまでと同じようにアメリカの従属者として、すなわち曖昧な自立、曖昧な独立の姿でいるならば、アメリカの先兵として動くほかない。

 イラクでは古い型の戦争こそ終わった。だが新しい型の戦争、すなわち市民の姿をしつつプロフェッショナルな軍事訓練を積んだテロリスト、ないしテロリストに似た兵士が自在に攻撃してくる戦争が続く。いや、これからむしろ激化するだろう。その戦場へ、「海外での武力行使」が禁じられ「武力による威嚇」すら禁じられた自衛隊が小泉総理によって送られるのは、まさしくその始まりである。


『壊れた地球儀の直し方』1

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