『SFの書き方』1

<『SFの書き方』1>
図書館で『SFの書き方』という本を、手にしたのです。
主任講師の大森望はケン・リュウ『紙の動物園』を引き合いにして、「これがSFだ!」と言い張れるポイントがあればなんでもOK。ケン・リュウを倒すつもりでチャレンジしてくれと、けしかけています。



【SFの書き方】


大森望著、早川書房、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
2016年4月、書評家・翻訳家・SFアンソロジストの大森望を主任講師にむかえて開講した「ゲンロン大森望SF創作講座」。東浩紀、長谷敏司、冲方丁、藤井太洋、宮内悠介、法月綸太郎、新井素子、円城塔、小川一水、山田正紀という第一線の作家陣が、SFとは何か、小説とはいかに書くかを語る豪華講義を採録。各回で実際に与えられた課題と受講生たちの梗概・実作例、付録エッセイ「SF作家になる方法」も収録の超実践的ガイドブック。

<読む前の大使寸評>
大森望はケン・リュウ『紙の動物園』を引き合いにして、「これがSFだ!」と言い張れるポイントがあればなんでもOK。ケン・リュウを倒すつもりでチャレンジしてくれと、けしかけています。

rakutenSFの書き方


SFの梗概(あらすじ)例を、見てみましょう。
p15~16
<課題その1 講評レポート:大森望>
 SF創作講座の受講生と言っても、全員がSFに通じているわけではなく、これからSFを勉強つもりという人も少なくない。そこで第1回は、受講生がSFに抱いているイメージを知るためにも、それぞれが「SFってこういうのでしょ」と思う話をかたちにしてもらった。

 梗概(あらすじ)を書くのは生まれて初めての人がほとんどだったが、受講生40人ののうち34人が提出してくれた。
 目立って多かったのは、ロボットやAIが登場する話と、ディストピア小説に分類されるもの。前者はともかく、後者は個人的にちょっと意外だったが、三十代以下にとっての未来はディストピアが標準らしい。

 梗概二例のうち、太田知也「饒舌な屍肉」は、かっこよさで勝負するポストサイバーパンク系の近未来ノワール。ストーリーより設定の説明に多くの分量が割かれているのはSFならではの特徴か。

 受講生年長組を代表する火見月の「ロボちゃんの印鑑登録」は、AI開発の現状を踏まえつつ、全体としては懐かしいテイストを醸し出す。親しみやすさと独特の魅力が評価された。

<課題その1 梗概例1「饒舌な屍肉」:太田知也>
 時は2050年・・・都市部の人口爆発を背景として、人間の屍体を再利用することが世界規模の主要産業になった未来である。屍体には多くの利用価値があり、タンパク質の供給は主なものだが、ほかにもサイバネティック・コスメの材料源、臓器移植や生分解材料の供給源としても認められている。

 本作の舞台はジャカルタ近郊のスラム街<アナトミア>・・・その経済は屍体供給の一次産業に多くを負っており、事業者は三種類に区分できる。ひとつは生前の生体情報を中抜きして情報業者に横流しする「中抜き屋」である。匿名に漂白された肉体は「植込み屋」へと引き継がれる。彼らは屍体のパーツを(そう、新鮮な人肉を)切り出し、生体にインプラントする業者である。
 コスメや医療用途への切り出しにおいて必然的に生じる端材は、最後に生分解業者である「塑型屋」に流れ着き、材料へと加工される。

 本作の主人公は妻を亡くした傷心の果てに<アナトミア>へ流れ着いた屍体写真家のカール・リンネである。彼は警察の無線チャンネルを傍受し誰よりも早く事件現場に駆けつけ、新聞社に写真を売って生計を立てている。

 そのため彼は自動車事故や強盗事件よりもよほど扇情的な画を求めてスラムを這いずる。写真家がファインダー越しに眼差す被写体、それは裂傷した筋肉であり、肋骨の飛び出した腹部であり、泥濘に滴る脳漿である。撮影後の屍体はクリーナーへと渡される手はずになっており、業者との関係は良好だ。

 ある日撮影を終えたリンネは、業務提携先のクリーナーに呼び止められる。その屍体は継ぎはぎのパーツとプラスティックスから成型された肉人形であり、そこにはリンネの亡き妻のログが詰められていたというのだ。妻の亡霊を追ってスラムを行脚し、真相に辿り着いた彼は(たとえそれが肉人形であろうとも)愛する決断をしてシャッターを切る。

■内容に関するアピール
 屍体産業の席巻する腐臭にまみれた未来のスラムで、屍体写真は亡き妻の亡霊に出会う・・・それが本作のプロットである。SF者の語彙で言い換えるなら「ギブスン・テイストのノワールなスラムでバラードの狂気が爆ぜる」とでもなろうか。人口増に対する解答として「屍体」を再利用するテクノロジーが発達した未来を外挿法的に仮定したうえで、そのサプライ・チェーンのどこにも属さない第三者としての「写真家」を視点人物として配したことは注目に値する。
(後略)

 この本は、2016年にSFアンソロジスト翻訳家の大森望を主任講師に迎えて開講した「ゲンロン大森望SF創作講座」の講義禄を収録した超実践的ガイドブックという触れこみである。
 大森望はケン・リュウ『紙の動物園』を引き合いにして、「これがSFだ!」と言い張れるポイントがあればなんでもOK。ケン・リュウを倒すつもりでチャレンジしてくれと、けしかけています。

ケンリュウ
『紙の動物園』2より

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