『言葉はこうして生き残った』2

<『言葉はこうして生き残った』2>
図書館で『言葉はこうして生き残った』という本を、手にしたのです。
著者の河野さんは雑誌「考える人」の編集長も務めた人だそうで・・・期待できそうである。



【言葉はこうして生き残った】


河野通和著、ミシマ社、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
「考える人」編集長メルマガ、待望の書籍化。膨大な書籍群の中に飛び込み、6年半かけて発見しつづけた、次代へつなげたい知と魂!!300超のメルマガから厳選した、必読の37本!!

<読む前の大使寸評>
著者の河野さんは雑誌「考える人」の編集長も務めた人だそうで・・・期待できそうである。

rakuten言葉はこうして生き残った


「ドストエフスキーと愛に生きる」というドキュメンタリー映画のお話です。
p336~340
第7章 翻訳という夢を生きて
 なんともイヤな事件です。『アンネの日記』や関連書籍が、東京や横浜の図書館で300冊以上も破られていたという事件です。誰が、なぜ?というのはまだ憶測の域を出ませんが、まったくの気の滅入る話です。加えて、ロシアがウクライナに軍事介入するという動き。情勢は次第に緊迫の度を増しています。

 そんなタイミングで、たまたまこの二つの出来事につながりのある映画が公開されました。2011年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で優秀賞・市民賞を受賞した「ドストエフスキーと愛に生きる」です。

 全篇が詩情あふれる映像と、美しい言葉の響きに満たされた圧倒的な作品です。気の滅入る事件の“口直し”はもちろんのこと、かき乱された心をも安らげてくれる、静謐で、ゆたかな時間がそこにはゆったりと流れています。

 主人公はドイツを代表するロシア文学の翻訳者スヴェトラーナ・ガイヤーさん。すでに2010年11月に87歳で亡くなっていますが、映画は最晩年の2006年から撮影されました。原題の「五頭の象」とは、90年代から彼女が新訳に着手したドストエフスキーの五大長編小説…「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」「カラマーゾフの兄弟」を巨大な象に見立てたものです。
 タイトルだけを眺めると、世界文学の偉大な作品に生涯を捧げた「文学的」なドキュメンタリーだと予想する人が大半でしょう。私自身も多分にそうでした。
 ところが、見終わってしまうと、彼女が優れた翻訳者であることなど、実は「どちらでもいいこと」(柴田元幸)に思えてしまうほど、もっと根源的なテーマ…生きることについての深い省察に導かれる作品なのだと気づきます。

 たしかに、翻訳家としての彼女の献身的な仕事ぶりが作品の基調になっていることは間違いありません。翻訳の口述に取りかかろうとする瞬間の、最初のひと言が発せられるまでのおごそかな緊張感。原作の世界をありのままに感受し、さらにそれを別の言語に正確に移しかえようとする、無償の願い。そのエロティックなまでの言葉との交感が、テキストと触れ合う彼女の真剣な姿を通して伝わってきます。

「(夜の書斎で、翻訳の)準備をしていると、優れた文章だけに起こる不思議なことがある。文章が自ら動き出す。それは突然起こる。何度も目を通した文章なのに、不意に未知のものが見えてくる。汲めども尽きぬ言葉の織物。そのような文章はすでに訳したことがあっても、汲み尽くせない。おそらくそれこそが最高の価値をもった文章である証拠。それを読み取らねば」

 しかし、全体の印象からすれば、翻訳の仕事はこの作品のひとつの柱にすぎません。むしろそれを包み込むように、静かに流れていく、落ち着いた日常が魅力的です。買い物に行き、料理を作り、お茶のひと時を楽しみ、訪れてきた孫やひ孫たちをもてなす、繊細でシンプルな暮らし。家の中には、長い間丁寧に扱われ、主に寄り添うようなかたちで時を刻んできた家具や雑貨が置かれています。居心地のよさそうな、あたたかで威厳と気品のあるたたずまいは、彼女の心映えそのもののようです。
(中略)

 作品の序盤に、アイロン台を組み立てる場面がいきなり登場します。いったい何が始まるのかと思っていると、本当にアイロンかけでした。その時、彼女が語ります。「洗濯をすると繊維は方向性を失う。その糸の方向をもう一度整えてやらねばならない。織りあわされた糸、文章も織物と同じこと」。つまり、テキスト(文章)とテキスタイル(織物)は同じラテン語の「織る」から生れた言葉であって、一本一本の糸が絡み合い、織り合わされて生地ができるのと同じように、文学もまた言葉の織物だ、と。
 
 彼女が語るからこそ、胸にストンと落ちる言葉です。
 一方で、その半生は波乱に満ちたものでした。1923年、ウクライナ共和国のキエフに一人娘として生まれますが、15歳の時に、農学者だった父親がスターリンの大粛清の犠牲となり、逮捕されます。

(追って記入予定)

『言葉はこうして生き残った』1

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