(ニッポンの宿題)やはり新築・持ち家?

<(ニッポンの宿題)やはり新築・持ち家?>
 神戸大学大学院教授の平山洋介さんが朝日のオピニオン欄で「政策的につくられた価値観」と説いているので、紹介します。

新築
(平山さんのオピニオンを2/09デジタル朝日から転記しました)


社宅や賃貸住宅から、いつかはマイホームに。これが住宅をめぐる標準コースと多くの人が信じ、政策的にも「新築」「持ち家」を手厚く支援する時代が続きました。そのひずみが出ています。ローンを抱えて新築を買う、という以外の選択肢は必要ないのでしょうか。

■《なぜ》政策的につくられた価値観
平山洋介さん(神戸大学大学院教授)
 日本の持ち家率は6割強です。戦前の都市部では住宅の8割が借家でしたから、大きな変化です。住宅政策が「持ち家」一辺倒になったのは1970年代でした。持ち家の増大は経済成長の必然の結果という見方がありますが、私は政策的につくられたと考えています。同じ先進国のドイツやスイスなどでは持ち家率は低い。

 政府が持ち家建設を重視した理由の一つは、経済刺激です。73年の第1次オイルショックで高度成長が終わると、住宅建設で景気を浮揚しようとした。それ以来、第2次オイルショック、プラザ合意、バブル崩壊と、景気が傾くたびに持ち家建設を拡大するという政策パターンが定着しました。

 政治的理由も見逃せません。家という財産を持った人が保守化するのかは学界でも議論がありますが、当時の自民党幹部は、人々がマルクス主義的な思想をもたないよう、「勤労者階級にどうやって財産をもたせるのかが大事だ」と言っています。革新自治体の相次ぐ誕生に危機感がありました。

 もう一つの理由が社会保障としての持ち家です。70年代後半、国家ではなく家族と企業を福祉の柱とする「日本型福祉社会」をつくり、社会保障の水準を抑える構想が示されました。公的年金は住居費を考慮していません。国民は家を買い、高齢期までにローン返済を終えておかないと生きていけない、と考えざるをえないのです。

 企業の福利厚生でも、持ち家への融資がありました。社員に資金を貸し付けて家を買ってもらうことは、終身雇用制度に適合し、労使協調の企業コミュニティーを強固にする意味をもっていました。

     *
 70年代以降、景気対策のため、当時の住宅金融公庫の融資供給が増大し、銀行の住宅ローン販売も増えました。家は貯蓄ではなく借金で買うものになりました。持ち家は「金融化」したのです。

 90年代から、合理性が揺らぎます。所得が減ったことから大型の住宅ローンを組む世帯が増え、返済の負担は重くなりました。ローン負担の増大は、消費低迷の一因です。退職金が減り、定年後も返済が必要になるケースが出ています。しかも、かつては増えていた住宅の資産価値は、たいていの場合、どんどん減っていきます。それでも家を買おうとするのは、高齢期の不安に対処するためです。

 戦後、膨大な住宅投資をしましたが、成果の大半は「私物」の持ち家です。中古住宅の市場は小さく、家を買った人は住みつぶすしかありません。その結果、たとえば社会の流動性が減りました。不安定就労の若者の多くは親の家にとどまり、なかなか独立できません。長くなった高齢期に、体調や家族の都合で引っ越す必要があっても、持ち家の売却は難しい。

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 新築促進による経済刺激の効果は減りました。欧米に比べ、日本はいまも人口あたりの新築戸数は多いですが、住宅への投資の総量は小さい。既存住宅の修繕や維持に力を入れ、中古市場を育ててきた欧米のシステムの方が、住宅投資を持続する効果をもっています。いま、日本で新築は年100万戸にとどきませんが、既存住宅は5200万戸以上あります。中古住宅をもっと動かし、社会としても使えるようにするべきです。

 持ち家で生活が安定した世帯は多いですが、ほかの選択肢がほとんどないのは非合理です。中間層が減り、低所得の高齢者や非正規労働者が増えました。公的な低家賃住宅は欧州諸国では2~3割を占めるのに、日本では3.8%。公的な家賃補助制度がないのは、先進国では日本くらいです。私物の住宅ばかり積み上がり、住宅困窮者が増え、社会や経済が停滞する状況から、抜け出さないといけません。(聞き手・山田史比古)

     ◇
平山洋介:1958年生まれ。住宅政策や都市計画が専門。著書に「住宅政策のどこが問題か」「東京の果てに」など。


まったくもって、お説ごもっともで・・・
自民党と役人たちが敷いた「新築・持ち家」路線に乗せられてきたようなものでしたね。

(ニッポンの宿題)やはり新築・持ち家?平山洋介2018.2.09


この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップR5に収めておきます。

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