『邪悪なものの鎮め方』3

<『邪悪なものの鎮め方』3>
図書館で『邪悪なものの鎮め方』という本を、手にしたのです。
内田先生には『呪いの時代』という著作があるが、この本もその系統であろうかということで借りることにしたのです。


【邪悪なものの鎮め方】
内田

内田樹著、バジリコ、2010年刊

<「BOOK」データベース>より
「邪悪なもの」と遭遇したとき、人間はどうふるまうべきか?「どうしていいかわからないけれど、何かしないとたいへんなことになる」極限的な状況で、適切に対処できる知見とはどのようなものか?この喫緊の課題に、ウチダ先生がきっぱりお答えいたします。村上春樹『1Q84』の物語構造、コピーキャット型犯罪が内包する恐るべき罠、ミラーニューロンと幽体離脱、被害者の呪いがもたらす災厄、霊的体験とのつきあい方から、草食系男子の問題にいたるまで、「本当ですか!?」と叫びたくなる驚愕の読書体験の連続。不透明な時代を生き延びるための「裏テキスト」。

<読む前の大使寸評>
内田先生には『呪いの時代』という著作があるが、この本もその系統であろうかということで借りることにしたのです。

amazon邪悪なものの鎮め方


草食系男子が語られているので、見てみましょう。
p297~300
<草食系男子の憂鬱> 
 大学の3年生ゼミは「草食系男子」について。
 先般、4年生のゼミでも同じ主題が取り上げられたので、彼女たちからするとかなり喫緊の課題のようである。発表後とりあえず全員に聞き取り調査をして、「あなたが知っている草食系の実像」についてご報告をうかがう。
 いや、聞いてびっくり。
 特徴は…
 すぐ泣く。拗ねる。「どうせぼくなんか…」といじける。かわいこぶる。メールに顔文字をたくさん使う。優柔不断で、「何食べる?」「どこ行く?」といった質問に即答できない。化粧品にうるさい。肌を美白に保つことに熱心。ヘア命。家族と親密。などなど。

 こういう男子が20代に大量に存在しているらしい。ううむ、そういうことになっているとは、おじさん、知らなかったよ。
 「これはどういうことなのでしょう」と訊ねられるので、ただちにその所以について私見を述べる。
 草食系男子の生存戦略の基本は「様子見」である。

 デタッチメントと言ってもよいが、別に決然として現実に背を向けているわけではない。「洞ヶ峠で様子見」である。世の中の帰趨が決まってから、自分の生き方をそれに合わせるつもりでいるのである。見た目の柔軟さとは裏腹に、かなり冷徹で計算高い生き方と言わねばならない。

 実存主義というのがありましたね。
 そのころは「参加」という言葉があった。フランス語で「アンガジュマン(engagement)」という。自らを自らの誓約によって拘束することである。

 「われわれは~最後の最後まで戦うぞ~」というのは一種の誓言である。
 これを言質に取られて、言ったことの責任を取らされるというかたちで「抜き差しならぬ羽目に陥る」のがアンガジュマンである。

 それのどこがいいのか、と当今の若者はいぶかしく思うであろう。
 「どこがいいのか」と改めて言われるとちょっと返答に窮するのであるが、まあ、いわば「未来において抜き差しならぬ羽目に陥ること」の代償として、今現在は「でかい顔ができる」ということである。

 「オレは革命のためには命も惜しまないぜ」という人間は、とりあえず「ぼく、痛いのキライだしい」というような人間と、今この現場においては圧倒的な政治力の差というものを享受できたのである。その政治力の差というのは、「でかい顔ができる」というだけでなく、その場にいるきりっとした感じの文学少女に声をかけて「ちょっといいかな? キミ、今度ブルトンの『ナジャ』の読書会やるんだけど、来ないか?」というふうに話しかけて、そのまま某所に拉致するというような大技も繰り出すこともまたできたのである(というか、こちらの方がメインだったりして)。

 まあ、そういう余禄などもあって、1960~70年代において「アンガジュマン」的生き方はそれなりに政治少年たちに支持されたのである。
 かくいう私も「自らの誓言によって自らを拘束し、それによって、抜き差しならぬ事態に自分を追い込む」ことによって、「そうでも言わないとできやしないこと」をいろいろと成就したのである。旧友石川くん(アゲイン店主)などは私のそのような生き方を「ウチダの宣言主義」と(わりと冷たく)評したものであった。
 でも、実存主義的生き方は人間の可能性を押し広げるという点では悪くないものであったと思う。

 何しろ「未来を担保」に差し出すのである。
 支払いをするのは「未来の私」であるから、まあ、赤字国債みたいなものではあるが、この債務を誠実に履行しようとするうならば、言った分だけのことはせねばならないのである。


『邪悪なものの鎮め方』1:アメリカの呪い
『邪悪なものの鎮め方』2:「内向き」で何か問題でも?
『呪いの時代』3:『日本辺境論』の構造的三本柱

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