『鉄の文明史』2

<『鉄の文明史』2>
図書館で『鉄の文明史』という文庫本を、手にしたのです。
製鉄にまつわる、その歴史、技術、遺跡の調査など、多角的な視点が見られるわけで・・・
理系の読者には、より興味深い内容になっています。


【鉄の文明史】
(画像なし)

窪田蔵郎著、雄山閣出版、1991年刊

<「MARC」データベース>より
鉄を造る原材から、シルクロード、旧約聖書などの古代文化の中に見られる鉄など、鉄の歴史を西アジア、中国・韓国、日本にたどる。著者自らが足で調べた興味深い話の数々。
<読む前の大使寸評>
製鉄にまつわる、その歴史、技術、遺跡の調査など、多角的な視点が見られるわけで・・・
理系の読者には、より興味深い内容になっています。

amazon鉄の文明史


鉄の文明史といえばダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』が想起されるが、窪田さんのこの本には技術者の視点が加わっているのが異色である。

物語を語る上の苦労話が「あとがき」に出ているので、見てみましょう。
p260~262
<あとがき> 
 趣味で始めた日曜大工のような『鉄の歴史』の調査ですが、30年以上も続けておりますと随分資料が溜まるものです。図書・文献の類はとにかく、採集鉄〇200種、化学分析データ80通、顕微鏡写真700枚、最近では走査電子顕微鏡やⅩ線回析データまでも集まってきました。

 なお外国から送られてくる鉄〇は小片なので、化学分析に使ってしまうと後は顕微鏡用の樹脂埋め込みをしたものだけになってしまうのですが、国内の鉄〇は現場に出掛けた折に欲を出して集めるので、1ヶ所分が500~600グラム程度はありますし、中には数キロのものもあってこのようなものは庭にころがしてあります。ついでに集めた砂鉄や鉄鉱石、羽口などもあります。一つ一つに想い出もあってなかなか整理できないものです。それにしても蟻が物を運ぶように良く集めたものだと思います。

 私がこの方面に興味をもち始めました昭和30年頃は、鉄の歴史に関する文献も論文もまったく少なく、遺跡の鉄〇などは見向きもされなかったものです。それが今日では打って変わって注目されるようになり、考古学の分野でも民俗学の分野でも研究の飛躍的な進展をみました。

 研究者も十指を越える著名な先生方が輩出しておられ、書先生方の続々と発表される精力的な御研究で、日本における製鉄技術の創始年代も確定しているようであり、鉄△の古代日本における通貨としての地位も確定され、炉形の細かな形式分類などによる技術の系統付け、鉄〇や鉄器の詳細な科学的研究、そこから導き出される抄鋼法をはじめとする製鉄技法など、学問的な体系付けも実に精緻に論し尽くされた感があります。

 一方私はと申しますと、目下は厚い壁に突き当たって足踏み状態であり、錆びた鉄塊を抱えて八幡の藪知らずの中に迷い込んだような心境です。したがってたまたま鉄鋼関係に就職してので、早い時期からこの分野に興味をもっていたというだけの素人が今さら出る幕ではないのですが、何冊かのファイルに綴られたメモを前回の『鉄の民俗史』の続きのような形のものとして取り纏めた次第です。

 原稿の整理に当ってはなるべく原典に当るようにし、現場に足を運んで実際に見ることを心掛けました。しかし、文献類にしましても購入できなかったものも少なくなく、遺跡は国内も海外も資金面での制約もあって、僅かな点と点を結んだ程度の貧しい見学で、とても調査してきたなどと言えるものではありません。このあたりはアマチュア調査の限界笑って見逃して頂きたいと思います。

 4、5年前鉄鋼業界の不況から、鉄鋼時代の凋落・新金属時代の到来が喧伝されました。しかし、資源からみた場合と生産技術の長足な進歩、それに何より需要の実情を考えあわせますとき、鉄の生産は全体としてまだまだ続くものと確信いたします。

 なるほど日本におりますと周囲は鉄だらけと言っても良い状況で、どちらを見渡しても鉄製品が溢れていますが、中央アジアの土木建築などの実際を見てきますと、鉄鋼使用量の少ないのには驚かされます。オアシスに聳える壮麗なモスクも鉄の使用量は知れたものです。低層ビルの壁面1メートル当たりにせめて丸棒が5本も入れてあれば、某国の地震の被害など恐らく半分以下で済んだでしょう。世界的な視野でみると地球上の過半の地では、鉄の文明は武器とナイフと火打金それに馬具の一部程度でこと足りてきており、土建分野などは無くても不自由はしないと考えられ、経済的な問題はありますが、基調としてはまだまだ需要は増大する可能性を秘めています。


『鉄の文明史』1



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