『湾岸戦争データファイル』

<『湾岸戦争データファイル』>
図書館で『湾岸戦争データファイル』という本を、手にしたのです。
湾岸戦争といえば史上初めて、家庭のテレビで…
良いか悪いか知らないけど、ハイテク軍事技術が報道されましたね。


【湾岸戦争データファイル】
湾岸

河津幸英著、三修社、2001年刊

<著者談>より
本書は、改めて湾岸戦争の軍事テクロノジーを公刊戦史の制度の高いデータを駆使して分析、再現しようとするものである。(中略)湾岸戦争は遠い国の出来事と感じる向きもあるであろうが、多国籍軍が費やした戦費610億ドルのうちなんと130億ドルは日本国民の税金から拠出したことを忘れてはならない。

<読む前の大使寸評>
湾岸戦争といえば史上初めて、家庭のテレビで…
良いか悪いか知らないけど、ハイテク軍事技術が報道されましたね。

sanshusha湾岸戦争データファイル


ハイテク戦争とされた湾岸戦争であるが、そのあたりが「はじめに」で語られているので、見てみましょう。
p2~4
<はじめに:河津幸英>
 さて湾岸戦争をマスメディアは、過去のローテク戦争に対して、『ハイテク戦』と形容し、戦争専門TVを思わせるような過熱した中継報道を続けた。

 日本の家庭でもTVをオンにすれば、ブラウン管画面には戦場の最新兵器がコンピューター・ゲームそのままに、イラクの軍事目標だけを正確に選別し破壊する生々しい映像が毎日放送されていた。これは米中央軍・多国籍軍が、世界中のマスメディアを、情報操作の最大のハイテク・ウエポンとして狡猾に利用したからに他ならない。

 とりわけ湾岸戦争=ハイテク戦という図式を強く印象づけたのは、米空軍のF-117ステルス攻撃機がピンポイントの精度でレーザー誘導爆弾をバクダッドの軍司令部ビルに命中させるシーン、戦艦「ミズーリ」から眩しい炎を噴射して発射されるトマホーク巡航ミサイル、リヤドの夜空から降るスカッド弾道ミサイル目掛け連射されるパトリオット防空ミサイルの光跡のラインといった劇的な映像であったろう。過去の戦争では司令官たちのみが見ることを許された軍事機密の光景ばかりである。

 ところが湾岸戦争を10年後に改めて検証してみると、一般人ばかりでなく専門家や指導者も含めて、こういった華々しい画像に幻覚され、湾岸戦争の実態を冷淡に見極められなくなっていたことに気が衝く。湾岸戦争に関して最大の誤解があるとすれば、それはハイテク戦争というイメージのために、この戦争があたかもコンピューターの画像を眺めながらミサイルの発射ボタンを押すだけの軽くて素早い、血もあまり流さないデジタル型の戦争のように思われたことであろう。

 疑いもなく1991年に開戦した湾岸戦争は、第二次世界大戦後に行われた最大規模の現代型世界戦争であった。多国籍軍には38ヶ国の軍隊が参加し、総兵力は78万人(米軍54万人)に達し、地上軍は14個師団・46万人・戦車3200両、航空戦力は作戦機2800機、海軍戦力は艦艇180隻が海域に集結っしたのである。

 対するイラク軍は総兵力120万人。主力の地上軍は大統領警護隊8個師団を含む63個師団・戦車5800両・装甲車輌1万1200両・野砲3850門と世界第4位の規模を誇り、空軍は724機戦闘用機を有していた。

 湾岸戦争では聞き慣れないハイテク兵器が数多く登場し、大いに利用されたが、戦争全体の形態としては21世紀型を彷彿させるようなハイテク戦争ではなかった。例えば空爆作戦においてピンポイント攻撃に使われた誘導爆弾やミサイルの量は戦争で使われた総爆弾数のわずか7.8%にすぎないのである。

 さらに多国籍軍の中核となった米軍の実態は、21世紀の軍隊が目指している軽量・コンパクト・高機動なハイテク戦争マシーンではなく、冷戦期に完成を目指していたポスト・ヴェトナム戦争スタイルの重厚長大な戦争マシーンそのものであった。米軍は巨大なイラク地上軍を破壊するための3個軍団の陸軍・海兵隊を湾岸戦域に派遣したが、彼らの派遣には1000万トンに達する膨大な兵器・装備・補給品や燃料の準備、なにより半年もの輸送時間が必要であった。幸運にもフセインがアラブ流なのか悠長に構えて戦争を早期に仕掛けてこなかったため、米軍輸送部隊は湾岸への輸送を全うしている。

 結論を言えば、湾岸戦争は、ハイテク戦争という強いイメージにもかかわらず、第二次世界大戦に代表される物量主義型、あるいはマスプロ型世界戦争の最後の戦争で、その終焉を人類に告げたといえよう。


湾岸戦争の回顧シーンといえば、トマホーク発射のシーンをよく見るが…そのあたりを見てみましょう。
p30~32
<トマホーク巡航ミサイルの威力と限界>
 1月17日、午前3時6~11分の間、バクダッド中心部とその周辺は、米海軍艦艇が発射した52発のトマホークの空襲にさらされた。最初のトマホークは午前1時30分頃、紅海に展開したイージス巡洋艦「サン・ジャシント」が発射し、わずかに遅れてペルシャ湾の巡洋艦「バンカーヒル」が続いた。トマホークの攻撃を取り仕切ったのは戦艦「ウィスコンシン」で、自らも箱型ミサイル・ランチャーから8発を発射している。戦艦の艦橋からは「ミズーリ」や巡洋艦からオレンジ色の炎を上げて発射されるミサイルが遠望できたという。

 最初にバクダッドを襲った52発のトマホークの標的は、電力施設に12発、政権バース党本部に6発、大統領官邸に8発、化学兵器関連施設に20発が割り振られていた。またこの日発射された全122発のうち116発は首都に向けられたものであった。そして3日間に212発が集中的に発射され、2月1日の282発目で攻撃は終了した。
(中略)

 トマホーク巡航ミサイルは、長射程の誘導方式に最大の特徴があり、中間段階が慣性航法装置、デジタル・マップを利用した地形・等高線照合装置、そして終末段階にデジタル方式情景照合装置(DSMAC)を搭載している。特にDSMACは、事前に撮影しておいた目標地域のデジタル画像と、トマホーク内蔵カメラが撮影した画像を照合してピンポイントの最終誘導を可能にするシステムで、精度はCEP(半数命中半径)10m以下になる。

 湾岸戦争で発射されたトマホークは、艦艇に搭載した477発のうち288発で、目標への飛行コースに乗ったのは282発、そのうち226発が昼間に発射され、56発が夜間であった。つまりバグダッドに対する爆撃は、昼間がトマホークの攻撃、夜間はF-117のレーザー誘導爆弾の空襲というふうに24時間絶え間なく行われたわけである。トマホークの命中確率は80%程度といわれている。発射艦艇は18隻で、潜水艦2隻(12発)、戦艦2隻(52発)、巡洋艦9隻(112発)、駆逐艦5隻(112発)で満遍なく撃っている。

 トマホーク運用の特徴は攻撃した目標の種類にはっきり表れている。ほとんど戦略目標(政府機関、電力、石油施設、NBC施設、指揮通信施設、スカッド陣地など)であり、海軍や陸軍部隊などは1発も狙っていない。反対に空母の艦上攻撃機がまったく爆撃しなかった危険なバグダッドの政府施設を45発が攻撃している。
(中略)

 値段の高いトマホークは、防御の堅い価値の高い重要施設攻撃専用であって、安い爆弾のように道路や範囲の広い目標の破壊には使えないということである。
 トマホークの欠点は、事前に世界的な規模でのデジタル・マップや情景撮影等の準備が必要なこと、飛行コースが決まっている上、飛行高度が低く(90m)、低速度なため撃墜される可能性があることであろう。


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