『キトラ・ボックス』

<『キトラ・ボックス』>
図書館に予約していた『キトラ・ボックス』という本を、待つこと3ヶ月ほどでゲットしたのです。
新疆ウイグル自治区とキトラ古墳天文図とが、どう繋がるのか興味深いのである。


【キトラ・ボックス】
キトラ

池澤夏樹著、KADOKAWA、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
奈良天川村ートルファンー瀬戸内海大三島。それぞれの土地で見つかった禽獣葡萄鏡が同じ鋳型で造られたと推理した藤波三次郎は、国立民俗学博物館研究員の可敦に協力を求める。新疆ウイグル自治区から赴任した彼女は、天川村の神社の銅剣に象嵌された北斗が、キトラ古墳天文図と同じであると見抜いた。なぜウイグルと西日本に同じ鏡があるのか。剣はキトラ古墳からなんらかの形で持ち出されたものなのか。

<読む前の大使寸評>
新疆ウイグル自治区とキトラ古墳天文図とが、どう繋がるのか興味深いのである。

<図書館予約:(4/19予約、7/05受取)>

rakutenキトラ・ボックス


天文図キトラ古墳天文図


この本の語り口を、ちょっとだけ見てみましょう。
p19~20
 讃岐大学文理学部の藤波三次郎准教授は院生を相手の「考古学演習2」の授業を終えて自分の研究室に向かった。
 テーマは2年前に瀬戸内海のいくつかの島で行った高地性集落の発掘調査で出た遺物の分析と同定だった。

 瀬戸内から畿内にかけて、定住には適さない標高2百メートル前後の高地に弥生時代中期の居住の跡が見つかっている。軍事的な目的と言われるがそのわりには長期の滞在が可能なように設備が調っている。時には槍が刺さったままの兵士の死体などという生々しいものが出てくる。

 しかし藤波准教授が学生と分類しているのは兵庫県家島諸島男鹿島の遺跡の出土品で、もっぱら土器の破片という平和的な性格のものだった。残念ながら大発見の見込みは薄い。

 自分の部屋に戻る途中、藤波准教授はエレベーター・ホールで社会学の宮本美汐にばったり出会った。研究室は同じ建物の3階と4階だからすれ違うのは珍しいことではない。
 「三ちゃん、元気?」と美汐は気安く声を掛けた。

 「ちょっと、それは軽すぎないかい、宮本先生」
 「そうか。たしかに学内で三ちゃんはまずいか。では、その後いかがお過ごしですか、藤波先生?」
 「それもわざとらしい」
 この二人、しばらく前には恋仲だった。男の方が他に気を移して仲は壊れ、しかも彼は新しい相手にさっさと捨てられたのだが、だからと言って美汐との仲を回復させてもらえる筈がない。顔を合わせるたびにからかわれるのが関の山。それでも三次朗の私生活でもなく、彼の研究にまつわる話。なにしろ美汐は好奇心が強くてどんな話題にでも首を突っ込んでくる。専門は社会学で最近は「人間の安全保障」という分野に力を注いでいるらしいが、それが社会学とどう繋がっているのか三次朗には皆目わからない。いずれにしても美汐の社会学はずいぶん広い範囲の好奇心に駆動されるもののようだ。

 「男鹿島の遺跡から・・・」
 「その話はこのまえ聞いたよ。その後ですごい展開があった?」
 「いや、そういうわけでもないが」

 正直に言うと三次朗は美汐が苦手だ。元気がありすぎて、気が強くて、相手をしていても追いたてられるような気がする。


ところで、この本を読んでいてわかったのだが・・・この本は『アトミック・ボックス』の続篇になっているのです。

アトミック・ボックスより
アトミック

<原発と原爆の違い:永江朗>
 サラリーマンを辞めて漁師になった父が、臨終にあたって娘に託したのは国家機密だった……。
 池澤夏樹の『アトミック・ボックス』は、機密ファイルを持った娘が公安警察に追われながら、父の秘密と謎を解いていくという冒険小説である。
 スピード感あふれる展開が気持ちいい。読んでいるうちにヒロインの美汐とともに自分も駆けたり泳いだりしている気分になる。
 追われる者と追う者という古典的な枠組みのなかで、扱われていることは今日的かつ壮大だ。
 美汐の父は大学で数学を専攻し、コンピューターの専門家になった。メーカーで設計の仕事をしていたが、上司からの命令である極秘プロジェクトに参加する。それは国産の原爆をつくるシミュレーションだった。ところがプロジェクトは突然中止、チームも解散する。前後して父は自分が胎内にいるとき広島の原爆で被爆していることを知る。被爆者である自分が新たな原爆をつくろうとしていたという事実にショックを受けた父は、故郷に戻って漁師になっていた。やがて福島で原発事故が起き、父は癌になった。そして、原爆開発計画の証拠ファイルを、娘に託す決意をする。
 登場人物たちの口を通じて語られる、核に関する情報や見解が、「考えろ」とぼくたち読者の背中を押す。
「ずっと運転しつづける発電所に比べたら、出番を待って眠ったままの爆弾の方が作る方が気が楽さ」と極秘計画のスタッフがいう。核の連鎖反応をずっと続ける原発の方がコントロールが難しいのだ。
 アメリカのスリーマイル島原発事故が1979年、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故が86年、そして東電福島第一原発事故が3年前。大きな事故だけでも、すでにこんなに起きている。「安全が確認されたものから再稼働」という言葉がいかに無意味であるか、ちょっと考えただけでもわかる。それなのに……。
    ◇

『アトミック・ボックス』池澤夏樹著、毎日新聞社、2014年刊

<「BOOK」データベースより>
28年前の父の罪を負って娘は逃げる、逃げる…「核」をめぐる究極のポリティカル・サスペンス!

<大使寸評>
池澤夏樹が、これほど面白く読める活劇をものにするとは、意外でした。
ほぼ同時期に読んだ「コラプティオ」、「やっちゃれ、やっちゃれ!」と比べてみると、この本がいちばん面白く読めたのです。
この3作品の優劣を比較するのはどうかとも思うが(笑)、ストリーテラーとしては池澤夏樹が優れているということでしょうね。

rakutenアトミック・ボックス


この本も池澤夏樹の世界に収めておきます。

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