『芸術新潮(2016年10月号:ダリってダリだ?)』
<『芸術新潮(2016年10月号:ダリってダリだ?)』>
図書館で『芸術新潮(2016年10月号:ダリってダリだ?)』という去年の雑誌を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、大型の画像、写真、イラストが満載のビジュアル版になっていて…ええでぇ♪
ダリ邸
横尾忠則さんのダリ会見記を、見てみましょう。
図書館で『芸術新潮(2016年10月号:ダリってダリだ?)』という去年の雑誌を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、大型の画像、写真、イラストが満載のビジュアル版になっていて…ええでぇ♪
【芸術新潮(2016年10月号:ダリってダリだ?)】 ![]() 雑誌、新潮社、2016年刊 <「BOOK」データベース>より データなし <読む前の大使寸評> ぱらぱらとめくってみると、大型の画像、写真、イラストが満載のビジュアル版になっていて…ええでぇ♪ amazonく芸術新潮(2016年10月号:ダリってダリだ?)) |

横尾忠則さんのダリ会見記を、見てみましょう。
p28~30 ダリ:君は私が好きかもしれないけど、私は君の作品は嫌いだ 僕がダリに会ったのは1975年です。スペイン政府に招待された、2週間のスペイン旅行中のことでした。 僕の展覧会を企画しているキュレーターから「会いたい人は?」と聞かれたので、「ミロ」と答えました。が、ミロはイビサ島にいて会えなかった。そこで「巨匠が面白いだろうから、ダリかな」と言ったら、二人の人に連絡してくれました。 誰に連絡したのかはわかりませんが、一人からは「ダリは1年前にアポイントメントを取らないと会えない」と言われ、もう一人は「あんなフランコ政権べったりのダリに会いたいのは誰だ?」と紹介する気が全然ない。しょうがないからダリの劇場美術館へ行ってみました。 すると、ちょうど館長らしき人がいました。で、その女性に「スペイン政府の招待で来た」と書類を見せたら、すぐ目の前でダリに電話をしてくれた。そしてダリがOKしていると…。びっくりしましたね。 訪ねて行ったのは、ポルトリガトのアトリエです。ところが、ここで待たされました。最初は「シエスタタイムで寝ている」と言われました。時間を潰して出直すと、今度は「シャワーを浴びている」と言われ、さらに1時間後に行ったら、「自伝を書きだした」。そしてその次は「絵を描きだした」。 だんだん苛ついてきました。また1時間後に行って、その時は僕の展覧会のカタログを差し出しました。すると、ガラが「会う」と言っているとのことです。ガラもいるとは思っていなかったので、これにも驚きました。 案内された庭園のソファには、なぜか若い男の子がいて、しばらくしてから、ガラがやって来ました。黒いセーラー服で、頭に黒い大きなリボンをつけていました。当時ガラは80歳くらい。おばあちゃんですが、格好は若い。 日に焼けていて、胸のところが開けた服で、中の方までソバカスだらけでした。そしていきなり「お土産を持ってきた?」と聞いてきました。「持っていない」と答えると、横の男の子を指して、「この子をご覧なさい。この子もお土産を持ってきていないけど、“美”を持ってきたわ」。彼はガラの恋人で、ニースから来たファッションモデルでした。 しばらくすると、本当にダリが出てきました。柄の部分にライオンが付いたステッキを持って、白いケープを着て、サッササッサと歩いてきた。けっこう顔が大きくて、体も大きい。そして「君はアーティストか?」「そうです」。 ダリは僕のカタログを持っていました。「ダリ美術館へ行ったか?」「行った」「どうだった?」ということで、さすがにここでは「素晴らしかった」と言うしかありません(笑)。 ところが「君は私が好きかもしれないけど、私は君の作品は嫌いだ」。で、僕のカタログをソファのほうへ、ポンッと放りました。そこにはいつの間にかマネジャーらしき人が座っていて、僕のカタログを見始めました。ダリはチラチラとカタログを覗いている。きっとちゃんと見ていなかったのでしょう。すごく気にしているようでした。 僕が質問すると、ダリはそれに答えてくるのですが、どれも常識的な答えばかりです。エキセントリックな画家という印象があったのに、ものすごくまじめ。僕はなぜ自分がここにいるのか、だんだんとわからなくなってきました。それでいて、妙に冷静に観察もしている。 シャワーを浴びた後だからか、髪の毛がベチャッと濡れていて、やかんの上に海藻が乗っているみたいに、髭もイセエビのようにピンとはしていなくて、ベローンと下がっている。「トゥーランドット」の中国人みたい。顔には、朽ちた石碑の表面のようにプツプツと穴が開いている。20世紀の巨匠中の巨匠が、真横に座っている…。 自分の存在が希薄に感じられ、横にいるこの人は一体何なんだろうと感じてきます。奇妙な霊力のようなものがダーンと来て、彼のオーラに拉致されたかのようです。気がつくと、4時間近くもそこにいました。 ガラのほうは、男の子といちゃついていました。そして、時々僕に声をかけてきます。「あなた、今晩時間はある?」「あります」「じゃあ、私と結婚しない?」。つまりは「私と寝ない?」という意味だと思いますが、いきなり言われたって、それがジョークなのかどうかよくわからない。すると「困ってる、困ってる」と茶化してくる。写真を撮らせてほしいと頼んでみましたが、「この前『プレイボーイ』が写真を撮りに来たんだけど、1セントもくれなかった。だからダメ」と、ガラに断られました。 ダリと会ったこの体験は、言葉にしようと思ってもなかなかできません。結局、しばらくしてから、これをもとに「ポルト・リガトの館」という小説を書きましたが……。 |
この記事へのコメント