『砂の海』3

<『砂の海』3>
図書館で『砂の海』という本を、手にしたのです。
ちょっと古い本ではあるが、砂漠、西域は大使のツボでもあるし、シーナの紀行とあれば期待できそうやでぇ♪


【砂の海】
砂

椎名誠著、新潮社、2000年刊

<「BOOK」データベース>より
目的地は、探検家ヘディンが「さまよえる湖」と名づけたロプノールと2000年前の幻の王国・楼蘭。太陽のコノヤロ光線、岩山も刻む砂嵐の中、“あやしい探検隊”隊長は、“正しい探検隊”である日中共同探検隊と、ずんがずんがと砂漠を突き進む。金属味の缶詰料理に辟易し、激しく車に揺られながら、著者が最終地点で目撃したものは?ハードな旅をユーモアで描く、シルクロード紀行。

<読む前の大使寸評>
ちょっと古い本ではあるが、砂漠、西域は大使のツボでもあるし、シーナの紀行とあれば期待できそうやでぇ♪
借りたのは、1998年刊のハードカバーです。

amazon砂の海

砂漠

この探検のとっかかりの<停滞>を、見てみましょう。
p26~30
<停滞>
 だから、そういう人体の科学がわかっている人は飛行機の中では酒はほどほどにしているらしい。山へ登っても同じことなので、すぐれた登山家は山に入ると酒など口にしないそうだ。

 おれもヒトに聞いたり本を読んだりしてそういう人体の科学を知っていたが、酒の好きなただのバカ作家なので、この記念すべき旅の出発がうれしくてうれしくてビールをさらに飲んだ。カキピーとイカクンもさらに食べた。高度1万メートルのアタマのご加護を得て酔いの増す頭で、向かうべきはるかな砂漠の国への想いをつのらせる。

 果たして計画通り楼蘭の地を踏めるであろうか。それには東京から見ると地の果てにも思える中国西域へまず入っていかなければならない。中国というのは北京や上海などの都市には簡単に行けるけれど、西の奥地ということになると案外難しいのだ。それはこれまでの二度の中国の旅で感覚的に知った。

 一番最初は開放されてまだ間もない頃で、観光客はツアーでしか入れなかった。「中国悠久シルクロードの旅・ときめきと魅惑の14日間」なんぞというやつだ。

 成田空港で参加者全員初顔合わせ、というのでときめきつつ指定された部屋に行くと、きれいな若い女が20人ぐらいいた。おお・・・・とさらにときめいていると女たちの持っている物や話の様子がどうもおかしい。

 部屋の入口の看板を改めて見ると部屋の左右を間違えていることに気がついた。そこはタヒチ方面のツアーだった。中国シルクロードは反対の部屋で、入っていくと老人ばかりが8人、ひっそりと背中を丸めて座っていた。タヒチ方面とは大違い陰気にしんとしており、時おりハナをかむ音やゴホゴホ咳きこむ音がする。8人のうち3人がお坊さんで、おれが挨拶すると、三人揃って手にした数珠をざりざりさせて念仏をとなえた。

 老人が多いのでその旅は「人はどこで死んだらいいか」とか「信仰と功徳」とか「よい輪廻よくない輪廻」などといった話題ばかりでため息も多く、敦煌につくとみんなくたびれて腰などトントン叩いてはまたため息をくりかえしていた。

 敦煌はシルクロードの入口でもあり、そこから続く砂漠の砂のうねりを眺めながら、このむこうにロプノールや楼蘭があるのだなあ、と思った。当時はしかしそこから先は入っていけなかった。

 二回目はそのはるか先、西域のウルムチまで行く、という待望の旅であった。西域はテレビの取材なら許されていた。おれはその番組のレポーターとしていよいよそこに潜入できるヨロコビにコーフンしていた。

 そして北京に入り、いよいよウルムチへ向かおうとする前の晩に政府からいきなり取材許可いったん取り消し、北京でしばらく待機せよ、などと言われた。1週間の再交渉もうまくいかず、結局取り消しの理由もはっきりしないままにその旅は途中で挫折してしまった。1万メートルの高度の影響でいつもより酔いの進む頭でおれはぼんやりそのようなことを思いだしていた。

 だから、今度こそ大丈夫だろうな、と思った。いわゆるひとつの「三度目の正直」というやつである。そもそも今回は《日中友好十周年、朝日新聞創刊百周年、テレビ朝日開局三十周年》を記念してのものだ。個人的には三度目であり、そこに十周年と三十周年と百周年が「どおーん」と加勢している。加えておれはおん年44歳である。これだけ周辺をいろんな記念的数字でどっと固めているのである。なんだかわからないが、とにかく「どうだまいったか!」と鼻の穴をふくらませていると、機長から妙にかすれたダミ声のアナウンスがはじまった。

 「北京空港が閉ざされていますので、急遽大連へ向かうことになりました」
 うーむ・・・。腕を組んで窓の外を見た。そうか今回はそういう手できたのか・・・。
(中略)

 「大連も空港封鎖されましたので、これから福岡へ降下します」
 うーむ・・・、とまた腕をくんだ。事態は油断ならなくなっている。

 「しかしまあそういうこともあるだろう・・・」シルクロード三度目突入の男はこんな程度ではおどろきはしないのだ。「まあいい・・・」そう自分に言いきかせつつも、やや落ち着きのない目で降下していくあたりの風景をしかりと眺めた。福岡などといいつつ「平壌空港」などと書かれてはいまいか・・・・とフト不安になったのである。

 よかった。ちゃんと「福岡」と書いてある。しかしよく考えたら我々はまだ福岡あたりをうろうろしているのである。よろこんでいる場合ではなかった。


『砂の海』1
『砂の海』2

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