『南米「棄民」政策の実像』

<『南米「棄民」政策の実像』>
図書館に予約していた『南米「棄民」政策の実像』という本を、待つこと6日でゲットしたのです。
垣根涼介の『ワイルド・ソウル』という小説を読んだ後、南米移民がトゲのように気になっていたので、この本を図書館に予約したのです。


【南米「棄民」政策の実像】
南米

遠藤十亜希著、岩波書店、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
19世紀末から20世紀半ばにかけて、新天地を求め未知の地である中南米に移住した約三一万人の日本人。その多くは、日本政府が奨励・支援した「国策移民」だった。これまで、人口増加や貧困への対策とされてきた日本の移民政策が、「不要な人々」を国内から排除したうえで、移住先の現地において再び「国民」として統合し、利用するためのものであったことを明らかにする。

<読む前の大使寸評>
垣根涼介の『ワイルド・ソウル』という小説を読んだ後、南米移民がトゲのように気になっていたので、この本を図書館に予約したのです。

<図書館予約:(4/07予約、4/13受取)>

rakuten南米「棄民」政策の実像


1950年~60年代の南米移住における炭鉱離職者を見てみましょう。
p160~162
<炭鉱離職者から「農業専門家」へ>
 先に見たように、戦後の炭坑ベースの労働運動は、首都圏を中心に展開されていた安保反対運動と連帯するなど、政治色を濃くしていたが、政府は、三池問題の根底には経済問題すなわち炭鉱業合理化計画による失業や生活への不安があると理解していた。そして、炭鉱離職者(以下「離職者」)に転職先や補償制度を提示するなどして、反対派を懐柔し、抵抗運動を押さえ込もうと考えた。

 労働省は、離職者問題の本質を次のように分析している。離職者の失業問題は「通常」の失業とは異なり、失業者が地域的に集中していること、石炭鉱業全体の合理化で失業者が一時期に大量規模で発生していること(1959年だけでも18万1000人)、彼らの多くは帰省先を持たないこと、などである。特に、三池労働者は合理化反対闘争で全国に名を馳せたが、実際には採炭以外の職能は持ち合わせていなかったので、自力で再就職することは容易でないとみられた。離職者が抱える特殊な事情には、国による特別な措置で対応する必要があった。

 三池での労使対立が深まる中、東京では労働省、厚生省、通産省、経済企画庁が合同で、九州炭鉱離職者への補償問題について協議を進めていた。通産省の炭鉱離職者対策本部は、三井三池の離職者に対して、会社を介して再就職の斡旋を進める一方で、臨時対策として海外移住案を提案。1959年9月8日の閣僚会議で、民間企業からの退職金に加え、政府も離職者援助を行うこととし、その具体策として、就職対策強化、住宅等公共対策、及び、海外移住の斡旋が決定された(「炭鉱離職者臨時措置法」1959年12月18日施行)。

 移住計画には、外務省、農林省、建設省も加わり、1959年12月、三池大ストの最中に炭坑からの南米移民も開始されえている。

 実は、この移住計画より4年前の1955年、日本政府は離職者を旧西ドイツのルール地方に労働目的で移住させる計画を実施していた。現地の炭鉱技術を習得する名目で、1957年から65年の間に436名(すべて単身赴任の男性)が3年間の契約でルール地方の炭坑に派遣されたが、65年で打ち切りとなっている。

 一見すると、西ドイツという先進国への労働移住の方が南米より魅力的だが、炭坑離職者のブラジルへの移住もいくつかの好条件を備えていた。受入国であるブラジル政府は、永住を目的と日本人を家族単位で大量に受入れるというのだ。しかも、開墾した土地が無償で譲渡される可能性も示唆されていた。

 ひとつ問題だったのは、移住者の職種だった。先の西ドイツ出稼ぎ計画では、受入国側が採炭労働者の受入を求めていたのに対し、ブラジルへの移民は主に未開地を開墾する「」を想定していたことだ。炭坑離職者は明らかに不適格だった。

 しかし、日本政府は「離職者を海外移住者として斡旋するについては、有能技術者として移住せしめる方途は少数しか見込めない。従って、大量的には農業移民として主としてラテンアメリカに斡旋する以外に途はない」と決心した。

 離職者対策会議でも、「離職者は農村出身者が多いので、また、体力もあるので訓練を行い、経験者と混入すれば農業移民は可能である」というこじつけにも近い解釈がなされた。最終的に、移住希望者に520時間の短期集中農業訓練を行うことで資格条件を満たす、という方針で決着した。

 炭鉱労働者を南米に大量移住させるというニュースは、ブラジルの日系人社会にもすぐに伝わった。邦字紙『サンパウロ新聞』は「筋金入り」の三池労働者の移住に対して神経質になっている地元の様子をこう報じている。

[前略]南米通の麻生産業の麻生典太専務の話によれば、ブラジルに早くも三池のスジ金入りの連中がくるという話が伝わって警戒気分になっているとか・・・。三井鉱山では人物を厳選して送り出したいといっているが、この移住計画がうまく行くかどうか一部ではあやぶむ向きもあるようだ。

 日本人移民の中に戦闘的労働運動家が含まれているとか、日本が移民を利用して過激派を南米に送っているといった噂が広まることに、移民受入国との折衝窓口だった外務省は神経を尖らせた。北部九州から一部の「炭労」指導者や組合員たちがブラジルへ移民することになった折、鈴木サンパウロ総領事は藤山外相への書簡で、「離職者には左翼が相当含まれると思われているので、ブラジルでこうした活動をさせぬよう要注意」と進言している。

 外務省の方でも、離職者のブラジル移民は他の移民と一緒にコーヒー農園に雇用農として入植させるようにし、離職者のみの集団移住は極力避けるよう、現地大使館に通告している。この方針は、ひとつには、農業未経験者だけでは定住が難しいとの配慮であり、もうひとつの理由は離職者が集団移住することで「離職者の移住という印象を受入れ国側に与えぬ」ためであり、また、元活動家たちが集まって現地で騒動を起こさぬようにとの警戒の意味も込められていた。


ウーム お役所のなかで三流と評される文科省、農水省、外務省であるが(もっとあるかも)・・・
南米移住における外務省の冷酷さが際立っていたようです。

垣根涼介著『ワイルド・ソウル』

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