『火星に住むつもりかい?』

<『火星に住むつもりかい?』>
図書館に予約していた『火星に住むつもりかい?』であるが・・・・
売れっ子作家の新刊であっても予約0とあれば、待つこと4日でゲットできたのです♪
映画の『それでも僕はやってない』をもっと酷くしたような「平和警察」であるが・・・怖い物見たさで読んでみるか。



【火星に住むつもりかい?】
火星

伊坂幸太郎著、光文社、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが…。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき!全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!

<読む前の大使寸評>
売れっ子作家の新刊であっても予約0とあれば、待つこと4日でゲットできたのです♪
映画の『それでも僕はやってない』をもっと酷くしたような「平和警察」であるが・・・怖い物見たさで読んでみるか。

<図書館予約:(2/12予約、2/16受取)>

amazon火星に住むつもりかい?


この小説の語り口を、ちょっとだけ見てみましょう。
p44~46
 千葉県が「安全地区」となり、その調査と管理がはじまったのは7ヶ月前だ。はじめの2ヶ月は大きな動きがなかった。誰かが捕まったというニュースはおろか、調査を受けたという噂すら聞かず、それは臼井淋の同僚が表現した、「税務調査みたいなものですかね」という物言いがぴたりの感覚で、物足りなさを覚えるほどだった。

 5月末に処刑されたのは、押し込み強盗を繰り返す中年の男だった。通常の警察が取り締まる範疇の、規模の小さな犯罪者に思えたのだが、強盗で得た金品をテログループに渡していたのだという。それを皮切りに、次々と、危険人物が見つかった。東京湾アクアラインの、海ほたるパーキングエリアでの爆破を企むグループが見つかり、仲間が芋蔓式に発見された。さらには、学習塾を経営する男が国家機密の情報にアクセスした罪で捕まり、そこから会社員の男も数人、連行されたと新聞には書かれていた。

 9月末、2回目の処刑が行われ、その斬首の現場を見た時は、臼井淋も緊張した。緊張し、恐怖し、興奮した。
 壇上で、首が切られた瞬間、流血や小さな悲鳴はあったものの、シンプルで美しい造形の、斬首装置のせいもあるのか、どこか厳かな儀式がなされた雰囲気が漂っていたのは事実だった。罪の意識と恐ろしさ以上に、達成感や満足感を覚えた。不謹慎を承知で言えば、大掃除や害虫駆除を終えた、すっきりとした気持ちすらあった。

 「それにですね」テレビの中で、教授がまだ続けていた。「犯罪者が処刑されて、大変な事件が未然に防がれているのだとすれば、それはもちろん、悪くはないかもしれません」
 「かもしれません、じゃなくて、断定しいてくださいよ」
 「ただ、これは政府にとって、都合の悪い人間を片端から処分していく手段にもなりかねませんよ」
 「どういう意味ですか」
 「罪を犯した人間を処刑するのではなく、未然に防ぐとなれば、誰がいつ捕まり、処刑されるのか分かりません。中世の魔女狩りと同じです。それにほら、噂が絶えませんよね」
 「噂?」
 「平和警察の取調べでは、怖ろしい拷問がつきものだ、という話です」教授の口ぶりは、美食家がコース料理の食べ方をレクチャーするような優雅なものだ。深刻さはない。
 「警察は否定していますし、そのあたりは首相がコメントもしていますよ」
 「そりゃあ、実は拷問しているんだけどね、とは言えませんよ」
 論客全員が苦笑し、言葉を濁した。

 野党議員は、「そういうのは、UFOに連れ去られて手術されちゃった人の話みたいなものですから」と笑い飛ばし、別の男は、「昔の特高警察とかをイメージされているんでしょうが、さすがに現代にあれはないですよ」と手を振った。

 そこで教授が、「小林多喜二の死!」と訴えはじめる。帝国軍隊を批判した作品を書いた小林多喜二はよほど特高警察から憎まれていたのか、逮捕された後、拷問され死亡した。体中が内出血で変色し、腫れあがり、体には釘を打たれたという話もある、と彼は興奮気味に話した。「あれだって、当時からすれば平和のための取り調べだったわけです。特高警察は、それを、心臓発作だ、と言い張ったんですから。どう見ても、拷問された遺体を前に、心臓発作で押し通せる。それが国家権力ですよ」

 「昔と今とは違います」議員が顔をしかめる。
 「しかし結果は出ています」「だからこれまでも言ったように、結果が出ているからそれで良いとは」「じゃあ、どうしろって言うんですか」
(中略)

 矢継ぎ早に言葉が行き交った末に、教授は一瞬、言葉に詰まった。そこでわずかではあるが静かになったところで、カメラに写らぬところで誰かが、「そんなに反対反対って、嵐山さんこそ、危険人物なんじゃないっすか」とぼそっと言った。

 嵐山さん、と呼ばれた教授の表情が強張り、困惑したように苦笑するのが画面に映る。ほかの論客たちが笑ったところで、コマーシャルに入った。


ウーム 国会では共謀罪の議決が取りざたされているが・・・
この小説ではもっと過酷な悪夢のような世界となっています。

とにかく、この小説では主人公が次々と変わる、つまり次々と死んでいく構成になっていて・・・
そういえば、井坂さんの小説には死神を第一人称に据えたのも、あったなあ♪

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