『村上春樹 雑文集』2

<『村上春樹 雑文集』2>
図書館に予約していた『村上春樹 雑文集』という本を待つこと4日でゲットしたのです。
なるほど、予約するには6年前発刊の本なんかが狙い目なのか♪


【『村上春樹 雑文集』】
村上

村上春樹著、新潮社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
1979-2010。未収録の作品、未発表の文章を村上春樹がセレクトした69篇。
【目次】
序文・解説など/あいさつ・メッセージなど/音楽について/『アンダーグラウンド』をめぐって/翻訳すること、翻訳されること/人物について/目にしたこと、心に思ったこと/質問とその回答/短いフィクションー『夜のくもざる』アウトテイク/小説を書くということ

<読む前の大使寸評>
なるほど、予約するには6年前発刊の本なんかが狙い目なのか♪

<図書館予約:(2/07予約、2/11受取)>

rakuten『村上春樹 雑文集』


村上さんは翻訳家でもあるのだが、翻訳のあたりを見てみましょう。
p224~226
<翻訳することと、翻訳されること>
 過去に欠いた作品は、よほどのことがなければまず読み返しません。「過去は振り返らない」と言うといかにもかっこいいけれど、自分の小説を手に取るのはなんとなく気恥ずかしいし、読み返したってどうせ気にいらないことはわかっているから。それよりは前をむいて、次にやることについて考えたい。

 だから昔の本のなかで、自分が何をどんな風に書いたか、すっかり忘れてしまっていることがよくあります。読者に「あの本のこれこれこういうところは、どういう意味なのですか」と訊かれて、「そんなところあったっけなあ」と首をひねるのはしょっちゅうです。何かの本か雑誌で目についた文章を読んでいて、「これ、なかなか悪くないじゃないか」と思ったら、それが実は僕の書いた文章の引用だったりすることもあります。ずいぶん厚かましいようですが・・・・。

 でも逆に、引用されているのが、いやな、気にくわない文章だったりすると、「あ、これは僕の書いた文章だ」と必ず一目で見分けられる。どうしてかはわからないけど、いつもそうです。よいところはだいたい忘れてしまって、不満のあるところばかりよく覚えている。なんだか不思議なものですね。

 とにかくそのようなわけで、僕の小説が、書き上げた何年かのちに外国語に翻訳されて出版されるころには、その本のなかで自分がいったい何を書いたのか、うまく思い出せなくなっていることが多い。もちろん筋書きをすっ駆り忘れるということはないけれど、少なくともディテイルの大半は、まるで夏の驟雨の湿り気がアスファルト道路の路面からさっと音もなく蒸発してしまうみたいに、僕の記憶から(もともとがそれほど上等な記憶でもないんだけど)きれいに消えてしまっています。

 僕は英語で翻訳された自分の小説は、いちおうぱらぱらと読んでみるのですが、読み出すとけっこうおもしろくて、わくわくしたり笑ったりしながら、最後まですっと読み終えてしまったりする。だからあとで翻訳者に「翻訳はどうでした?」と訊かれても、「いや、すらすら読めましたよ。いいんじゃないですか」と答えるしかない。「ここはどうで、あそこはああで・・・」というような技術的な指摘はまったくといっていいくらいできない。自分の小説が翻訳されるのはどんな感じがするものですか、と訊かれても、正直言ってそういう実感はほとんどありません。

 でも、すらすらとよどみなく読めて、それで楽しめたのなら、その翻訳は翻訳としての義務を十全に果たしていることになるだろう・・・というのが僕の原著者としての基本的なスタンスです。僕の考える物語、設定する物語というのは、つまりはそういうものなのだから。

 自分の作品が多言語にトランスフォームされることの喜びの一つは、僕にとっては、こういうふうに自分の作品を別の形で読み返せるというところにある、と言ってもいいでしょう。日本語のままでならまず読み返さなかったはずの自作を、それが誰かの手によって別の言語に置き換えられたことで、しかるべき距離を置いて振り返り、見直し、いうなれば準第三者としてクールに享受することができる。

 そうすることによって、自分自身というものを、違った場所から再査定することもできる。だから僕は、僕の小説を訳してくれる翻訳者たちにとても感謝しています。たしかに僕の本が僕自身に読まれる(これはいまのところ残念ながら英語の場合に限られているのだけれど)のも、僕にとってはなかなかうれしいことなのです。


ウーム 英訳文を意識して小説を書くといわれる村上さんならではのお話ですね。
『村上春樹 雑文集』1

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