『漁港の肉子ちゃん』

<漁港の肉子ちゃん>
図書館に予約していた『漁港の肉子ちゃん』を待つこと約3ヶ月でゲットしたのです。
この本の表紙はクリムトの絵の摸写であるが、なかなかのもんやでぇ♪
・・・・と、大使は加奈子画伯が描く絵にも注目しているのです。


【漁港の肉子ちゃん】
肉

西加奈子著、幻冬舎、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
みんな、それぞれで生きている。それでいい。圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編。

<読む前の大使寸評>
この本の表紙はクリムトの絵の摸写であるが、なかなかのもんやでぇ♪
・・・・と、大使は加奈子画伯が描く絵にも注目しているのです。

<図書館予約:(7/07予約、9/27受取)>

rakuten漁港の肉子ちゃん
加奈子画伯の画像


それでは、この小説の語り口を、ちょっとだけ見てみましょう。
p17~20
 サッサンの奥さんは、私と肉子ちゃんがこの街にやってくる1年ほど前に、亡くなった。子供もいなくて、夫婦だけで経営してきたから、サッサンは、孤独に絶望して、「うをがし」を畳もうとした。

 そこに現れたのが、肉子ちゃんだった。
 サッサンは、肉の神様が現れた、と思ったらしい。

 肉子ちゃんを雇うようになって、「うをがし」は、より繁盛しだした。肉子ちゃんって、大袈裟な大阪弁と同じように、良くも悪くも、人を惹きつける力があるのだ。こっちに来てから、恋人も、ふたり出来た。ふたりとも漁師で、「うをがし」のお客さんだったけれど、ひとりは借金を背負い、遠洋漁業で遠くに行ってしまって音信不通。もうひとりは、実は結婚していた。

 ふたりとも色が真っ黒で、大酒飲みで、いかにも「女にだらしない」という風貌だった。女を何人抱いたか、みたいな話を、私や他の子供がいる前でもするので、サッサンは、ふたりのことをすごく嫌っていて、でも、店に来るのを止めはしなかった。港には、閉鎖的だけれど、なんだかんだ人を包んでいまうおおらかさ、のようなものがあって、サッサンは、その空気を体現した人だった。

 皆、肉子ちゃんがふたりのどういうところを好きになったのか分からない、と言った。でも、私は、肉子ちゃんの過去の遍歴を知っているから、ものすごく理解出来た。

 ある日、男の奥さんが、「うをがし」にその男を連れて乗り込んできた。私はそのとき、家にいたから、どんなことになっていたのかは、知らなかったけれど、知らないでよかった。サッサンに聞いたところによると、「あれこそまさに修羅場」だったらしい。

 肉子ちゃんは、「男を寝取った豚泥棒」と呼ばれたそうだ。どれほど興奮していても、肉子ちゃんの風貌を見て、きちんと「猫」と「豚」を使い分ける奥さんはすごいな、と思った。感心した。

 肉子ちゃんは、罵られ、ぼこぼこにどつかれている間も、男が、自分は独身である、と自分を騙していたことを、言わなかった。男は肉子ちゃんにひっそりと感謝をし、のちのち、真実を知った奥さんは、男を捨て、結局、肉子ちゃんと仲良くなった。大人って、特に女って、よく分からない。

 お腹を壊しただけで、噂が広まる街で、あんな「修羅場」を繰り広げたのだから、肉子ちゃんはしばらく、有名人だった。学校でも、「あの漁港の肉子ちゃんの娘」だ、と言われたし、興味津々に「どんなだったの」と聞かれたこともある。

 私はそのとき、自分の人生が、10歳にも満たない今終わった、と思ったけれど、その騒ぎも、いつの間にか収まった。サッサンに聞けば、この街では、そういう色恋の噂が絶えないそうで、皆「修羅場」的なものには、慣れているらしい。

 誰々のお母さんが、誰々のお父さんの昔の恋人とか、昔の結婚相手同士が仲良く酒を飲んでいるとか、街が狭いから、すぐに広まるし、後ろ指を差されることも多いのだけど、結局は共同体の形のない繋がりの中に、溶けてしまうのだ。

 ずっと都会で暮らしてきた私からすれば、そういう感じは、全然理解できない。肉子ちゃんは、結局「不倫相手の奥さんと仲良くなった明るいデブ」くらいの感じで、皆に認識されていて、それはそれで、ほっとしている。

 元凶の男も、たまに「うをがし」に来るし、肉子ちゃんも、「久しぶりやなぁ!」などと軽口を叩く。肉子ちゃんって、本当に馬鹿なのじゃないか、と、そういうとき、思う。


著者の加奈子さんはうら若き女性であるが、語り口はまるで、おっさんやないけ♪
まあ 可愛げと無頼の徒とも言える二面のアンバランスが魅力の一つなんでしょうね。

ところで、クリムトの絵の魅力については、先日、『ジャポニスム』3で伝えているのでご笑覧ください。

成就
成就(部分)

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