『天下大乱を生きる』

<天下大乱を生きる>
図書館で司馬遼太郎×小田実著『天下大乱を生きる』という本を手にしたのです。
おお 偉大な思想家とも言えるお二人の対談とは・・・すごい対談が企画されたもんやでぇ♪
初版が1977年とかなり古いのだが、当時の歴史認識には興味を惹かれるのです。


【天下大乱を生きる】
天下

司馬遼太郎×小田実著、風媒社、1996年刊

<「MARC」データベース>より
渾沌とする時代状況をまっすぐにつき進んだ二人の「自由人」。国家とは何か。日本人とは何か。アジアを駆け、世界を股にかける唯一無二の対談集。1977年潮出版社刊行の再刊。

<読む前の大使寸評>
おお 偉大な思想家とも言えるお二人の対談とは・・・すごい対談が企画されたもんやでぇ♪
初版が1977年とかなり古いのだが、当時の歴史認識には興味を惹かれるのです。

amazon天下大乱を生きる



1977年当時の歴史認識について、お二人の対談を通じて見てみたいのです♪
1977年当時といえば戦後32年で、1972年の日中国交正常化、1974年のベ平連解散の後、1989年の天安門事件、1991年のソ連崩壊の前なので、かなり昔になります。


<精神構造において官僚的な日本人>p170~174
司馬:ともかく日本人というのは個人の能力を信用しないんです。トップの能力というのを。稲作農民はみんなそうですね。えらい変なことを言うようだけど、ヨーロッパも、もとは遊牧社会の基盤があるでしょう。スキタイとか、モンゴルとか、ロシアとかいうのは、遊牧社会が基盤でしょう。遊牧社会というのは、キャップが偉くなかったらいかんのです。キャップが偉くなかったら、冬どこで過ごすかということで失敗する。

小田:だから、さっきのぼくの言い方をすれば「平時の感覚」の問題ですね。稲作というのは「平時」を前提としないとできないからね。

司馬:そうですね。

小田:ぼくが在日韓国人と一緒に運動してわかったことは、韓国人は一人の人物に賭けるね。それは安全のためにいろんなアンテナを張るよ。だけど、こうと決まったら賭けるというところが、ちょっとあるね。よく、日本人は一人の人間を信頼したら一緒に死ぬというようなことを言うけど、あれはウソやと思うんだ。

司馬:そうかもしれない。韓国の場合は、賭けるのは人間しかないといえるかな。

小田:「平時の感覚」というのは、個人はひっくり返るし、死ぬ。しかし組織は永遠に残るという確信があるね。稲作だから、共同体は確実に残るという。

司馬:日本だと、貴殿はいくらやり手かもしれんけど、貴殿には金貸せん。三菱に貸す、というところがあるな。

小田:それは「平時の感覚」で生きていればできますよ。個人は死ぬし、没落するけど、共同体は残るよ。稲作をやっている限り、しかし、遊牧民だったら破滅する。

司馬:いまは日本は稲作の時代でないのに、それをやっているわけです。いくら危機感をそそるような情報が入っても、庄屋は握りつぶす。村内の秩序のために。それを握りつぶしても稲は伸びるんだから。また、庄屋が非常に優秀なやつだとかえって困る。村内が暗くなって。ヒットラーとかムッソリーニとか、ワシントンとかというようなやつが出てきたら、しんどくてしようがない。日本の政治風土は決して英雄を出さない。

 日本人は他の民族と同様、人間は好きだけど、しかし個人の能力に大きな期待を持たない。韓国も稲作だから、本来はそうなんだけど、しかし韓国には何にもないから。

小田:歴史がムチャクチャやからね。

司馬:それで経済といったら借款しかない。そのほかに、組織があるかといったら、人間の群がりはあるけど、組織じゃない。組織というのは金が要るから。ただ処士横議の国やから、処士横議せざるを得ない。集まっとるだけや。

 だから、あの人が出てきたら大丈夫やというのは、果たしてほんとうに韓国人は思っているのか、それしかないと思っているのか、というところがある。だから、韓国の問題は、われわれの社会で判断したこととずいぶん違うな。

小田:日本の場合は、精神構造において、昔から非常に官僚的な国だね。僕はつくづく痛感した。

司馬:たとえば幕府だってそうだから。将軍にたくさん子供ができたら、松平という姓になったりして、御親藩とか御家門の大名ができる。しかし幕政を見るのは井伊とか酒井やからね。つまり彼らだけが大老―内閣総理大臣―になれるわけで、血族の大名は老人にも若年寄にもなれない。

 それは、家康が三河の庄屋に毛のはえた程度の家に生まれたときからの制度なんですね。家康が死ぬときに、制度は三河のままにせよ、と言って死ぬ。つまり番頭政治です。番頭のほうが信頼できるわけですね。

小田:そうですね。

<損か得かの帝国主義>p204~208
小田:ただ、こういうことがあると思うんです。ぼくは民主ファシズムと呼んだことがあるけど、つまり一つのイデオロギーがあって、それが強引に引っ張っていくのがファシズムでしょう。ところが、各人がちょっとずつファシズム的要素を持っていて、集大成したら、だいたい同じくらいになるでしょう。

司馬:小田君が前に言っていたことで、東条の位置についたらファシストになると言うんだな。あれはおもしろいね。

小田:あるいは官僚機構の中のファシズムとかがあって、それは一見ものすごい民主的体制をとるでしょう。ぼくがおもしろいと思うのは、そういうちょっとずつのものが官僚機構の中に組み込まれた場合、猛烈なファシズムになるんだけれども、現代の世界を見ていると、だんだんそうなっているという気がするな。

 つまり、さっきおっしゃったとおり、帝国主義というのは得したらいいんだから、日本として朝鮮問題を損得でいったとすれば、北と南とどっちもやればいいわけよ。南北統一してくださいぐらい言ってやっていれば、いちばん得じゃない、日本の資本家にとって。それで相手はものすごくかたくなになって、さっき言った征韓論の蒸し返しみたいなことをやって、朴正煕にだけくっついて、ムチャクチャやっているわけよ。だから反感を買うさ。資本主義の原則からすれば損なことをやりますね。

 ところが、全世界的にみて、いまは資本主義社会が危機にあると思っているじゃない、明治時代に比べて。ヨーロッパもそういう権威的感覚を失っている。つまり、官主導型にだんだん移行しているというんだ。

司馬:明治維新のとき、イギリス帝国主義は安定政権が欲しかったわけや。安定政権が出ないと、日本と貿易ができないから。帝国主義というのは商売やから、貿易による収入がないから薩長を応援した。幕府ではだめと。ところがフランスは、まだいまの日本みたいな段階やから、内乱が起こって儲かったらええやないかというところがある。だけどイギリスは、さすがに帝国主義の先進国やから、早く安定してくれ、早く安定してくれというので薩長グループを応援したわけやね。
 いまの朝鮮半島だって、安定政権を望むことが帝国主義でしょう。

小田:朴ではなくて別なやつにかけるわけだ。

司馬:あるいは南北統一する遠い将来にかけて、安定政権を求めることで、いがみ合わせることが帝国主義じゃない。これがもし帝国主義だとしたら、これも擬帝国主義で、政商的帝国主義で、その場限りの金儲けや。おれが儲けたらしまいというやつで、国家レベルで考えているわけじゃないでしょう。

 朝鮮半島の安寧こそわれわれの儲けになりますということがあったら、初めて19世紀のイギリスになれるわけで、そこまで無論いっていない。それで朴正煕にばっかりかけている。

小田:それはこういうことなんだ。1960年ぐらいまでは、先進諸国が力を回復する段階でしょう。その間隙を縫って新興諸国があらわれる。つまり、アジア・アフリカ・・・A・A時代と言われるようなものが出てくるわけですね。で、1960年ぐらいで、いわゆる先進国は力を回復して、そこから新植民地時代が始まるけれども、いわゆる先進国は二つの危機を持っているわけです。

 一つは、社会主義諸国が昔みたいに弱くない。ものすごく勃興してくるでしょう。それと対決せないかんという東西関係が出てくる。

 もう一つは、もう少し後に出てくるけど、南北問題がある。初めは貧乏な国だからばかにしていたら、資源がある。そういう危機にいま直面しているわけ。

 東西危機はいまデタントとか何とか言って回避している。中国は怒っているけれども、これは第三世界にくみするから怒るわけですね。一応そこでごまかすわけ。ほんとうの危機は第三世界との対立にあると思っていることでしょう。そこが出てきていると思うんですよ。なりふりかまわず、とにかくやらなきゃだめじゃないかという感じを持っているな。防衛線として守らなきゃいかんと見てる。だからアメリカがいちばんいいでしょうね。

 そうすると、そこでまさに資本主義は崩壊しつつあるわけ。だから明治時代のイギリスの賢明な資本主義で操縦できない時代が来ているんじゃないかと思う。つまりうまいこと安定してやっていこうとするが、しかし、できないかもしれないという危機意識みたいなものがすごくあると思う。だからアフリカでの動きなどを見てても、損なことをやっているでしょう。たとえば南アフリカに賭けてみたり。そんなのは損だよ、安定政権をつくったらいいんだから。


これらを見ると、お二人にしてもソ連崩壊の予兆を感じていないわけで・・・・
逆に、ソ連崩壊の衝撃がより大きく思い出されますね。



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