『栽培植物と農耕の起源』4

<『栽培植物と農耕の起源』4>
図書館で『栽培植物と農耕の起源』という新書を手にしたのです。
中尾佐助さんと言えば、照葉樹林文化論を唱えた第一人者として大使が尊敬している学者だから、この新書もいけてるのではないかと期待するわけでおます♪


【栽培植物と農耕の起源】
農耕

中尾佐助著、岩波書店、1984年刊

<「BOOK」データベース>より
古書につき、データなし

<読む前の大使寸評>
中尾佐助さんと言えば、照葉樹林文化論を唱えた第一人者として大使が尊敬している学者だから、この新書もいけてるのではないかと期待するわけでおます♪

rakuten栽培植物と農耕の起源


第4章・サバンナ農耕文化から、雑穀について見てみましょう。
p78~82
<雑穀というもの> 
 雑穀という言葉は、英語ではミレット、ドイツ語ではヒルセであるが、日本語の「ザッコク」はむりに作った言葉である。これに対して日本語の「ムギ」という言葉の中には、コムギ、オームギ、ライムギ、エンバクなどを一括するのに、かえってそれらを主作としている西洋には「ムギ」に対応する言葉がない。

 これは両方とも、一度成立したそれぞれの農耕文化基本複合の上に、あらたな作物群の波を受けたとき、新しい作物グループだけに総括名が生じた結果であろう。東洋では雑穀よりムギが新しく、西洋ではムギより雑穀が新しいのだ。このようにムギと雑穀とは、根本的にそれぞれ異なった文化複合から起源したものである。

 では、雑穀とはどんなものだろう。アワやキビは古代シナ文化をきずきあげた基本穀類であることはよく知られたことである。このほかにも、げんざい栽培されている雑穀の種類をかぞえてみると、これはまたびっくりするほどたくさんある。

 インドには驚くばかりいろいろな雑穀が大量に栽培されており、アフリカのサハラ砂漠以南のサバンナ地帯にもまた様々な雑穀が栽培されている。げんざい雑穀を主食としている国や民族の人口の合計は数億人以上もあって、経済上忘れることはできないが、ただ彼らはほとんどが後進文化をともなっていて、文化的に発言力が弱いのでめだたないだけである。

 雑穀という穀類の通有性をみると、そのすべてが夏作物であることが第一の特色である。日本のような温帯ではムギ類はすべて冬作物であるが、雑穀に入るアワ、キビ、ヒエなどはすべて夏作物である。この特性は熱帯のインドやアフリカまでまったく共通しており、それは夏の高温だけでなく、モンスーンの雨期の作物である。手短にいえば雑穀とは、モンスーン農業の穀類である。それはまた一方において日長反応などのいろいろな生理的特色も夏作物としての通性をもっている。

 雑穀は種類が多いだけに草姿はいろいろある。とくに高さはいろいろある。その植物の群落の中に人がはいると、草の方が人より高くて、まったく人間の姿の見えない群落をつくるのがトールグラスである。人が群落の中にはいると、腰から胸くらいまで草の中にかくれるのはミッドグラスといい、草の高さが膝か、せいぜい股下くらいのものをショートグラスと分けている。たとえばトウモロコシはトールグラスであり、ムギ類は全部ミッドグラスである。ところが雑穀の中にはトールグラスにはいるものにコーリャン、トージンビエがあり、ミッドグラスにアワ、キビ、ヒエ、シコクビエなどたくさんある。さらにショートグラスに入るものにテフ(エチオピアの主作物)、フォニオなどがある。

 こんなに雑穀の草長にいろいろなものがあることは、非常に異なったいろいろの環境にそれぞれ適応した雑穀が存在していることの反映である。

 穀類としての雑穀の特色の一つは穀粒の大きさが小さいことであって、そのため雑穀はときとして小穀類などと呼ばれることもある。その点についてカール・サウアーはうまいことを言っている。「雑穀の人為淘汰は個々の粒の大きさを大きくすることを考えず、むしろ粒をつけうる穂の大きさをさらに大きくすることに向けられた」と。

 これは印象的にうまい表現だが、事実はアワにしてもテフにしても、あきらかに野生原種より栽培種は粒が大きくなっている。しかしそれにもかかわらず雑穀はたいてい粒が小さいのが特色であって、たとえばアワの粒は古代インドの古典では小さいものの例えとしてたびたび引用されている。
(中略)

 このように雑穀類はとんでもない植物が栽培されており、その貧弱なものは純然たる野草とほとんど連続している。禾本科の雑草の種子はどれでも集めて加工すれば全部人間の食料になる。野生の雑穀だ。ほんとだろうか。


ここで・・・
周達生著『東アジアの食文化探検』という本で、モチ性穀類を見てみましょう。

<照葉樹林の食文化>p112~116
  イネ、アワ、キビなどの穀類の、モチ性澱粉を利用するのは、東アジアの特徴だといえる。すでに述べた中国や日本だけでなく、モチ米のモチ以外にも、たとえば、モチアワで作ったアワモチやモチ性のモロコシのモチは、韓国・朝鮮でもよく作られている。大阪の鶴橋の在日韓国・朝鮮人による市場でも、アワモチ用のモチアワが売られているのである。

 このように、モチ性穀類の澱粉利用は、東アジアの特徴の一つになっているが、東アジアに限定されているだけでなく、東南アジアの一部も利用している。しかし、それは、広くいってもアジアだけのものであって、欧米その他にはない特徴なのである。

 けれども、いっそう限定していえば、伝統的には、アジアのなかでも、ヒマラヤ南麓からアッサム、雲南の山地を経て、長江の南の、いわゆる江南地方にいたり、さらに、西日本にまで達する東アジアの暖温帯の地帯である。その地帯には、一部が現在禿山同然になっていたとしても、もともとは、常緑のカシ、シイ、クス、ツバキなどの広葉樹が生育しており、その葉の表面は、ツバキのように光沢のあるものが多い。それで、その種の樹林は、照葉樹林と称されているのである。
照葉樹林

 この照葉樹林帯に共通してみることのできる文化を、中尾佐助氏は、照葉樹林文化と名づけられた。モチ性澱粉の利用は、この照葉樹林文化の食文化に関する文化要素の一つなのである。モチ米のおこわ、チマキ、モチ、ナレズシ、モチ米の発酵酒、納豆、茶などは、すべてこの照葉樹林文化を構成する食文化方面の文化的要素なのである。


『栽培植物と農耕の起源』1
『栽培植物と農耕の起源』2
『栽培植物と農耕の起源』3

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