『中国と日本』

<『中国と日本』>
図書館に予約していた『中国と日本』という本をゲットしたのです。
過激なナショナリズムを抑える論調は、日中両国の民にとって大切なんでしょうね。


【中国と日本】
中国

張承志著、亜紀書房、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
“戦争50年”を経て“平和70年”の今、人はねじれたナショナリズムの波に呑まれ、曲がりくねった道を歩く。かつての過ちは記憶の外に消されていき、あとに残るのは「人間」のみ。その人間に必要なはずの道徳は、そして人道はどこへいったのか。中国人作家が歴史・文化・人物・平和憲法をとおして、日中の絆、そして日本を見つめなおす。他者への「敬重」と「惜別」の覚悟をもって語られる日本論。
【目次】
第1章 はるかなる東ウジュムチン/第2章 三笠公園/第3章 ナガサキ・ノート/第4章 赤軍の娘/第5章 四十七士/第6章 解説・信康/第7章 文学の「惜別」/第8章 「アジア」の主義/第9章 解剖の刃を己に

<大使寸評>
過激なナショナリズムを抑える論調は、日中両国の民にとって大切なんでしょうね。

著者は30年以上も岡林信康を聴いてきたそうだが、一事が万事、かなり毛色が変わった中国人のようです。

<図書館予約:(1/06予約、7/21受取)>

rakuten中国と日本


張承志張承志

岡林信康との交遊あたりを見てみましょう。
p256~258
<岡林信康にみちびかれて>より
 外国人の私が岡林信康にこれほど熱心であることに、少なからぬ日本人は、「度が過ぎている」、と感じている。彼らは芸術の断崖の淵に立っている人間が何を必要としているのか分からないのでは、と思う。長い時間が経ってしまった。

 私自身何故これだけ長いあいだ彼を聴いてきたのか分からない。あるいは、この経路を通じて思想を議論し、美的感覚を探し求めてきたのかもしれぬ。私は、何度も彼の歌を議論し、比較をしてきた。私は、彼を通して自分の立場を検討し、彼の歌を通して美的感覚を確認してきた。

 そうだ、もうひとつある。彼は、私の日本理解の窓であった。

 その後、私の子供も彼の歌を聴き始めた。
 娘はよく音楽を聴きながら勉強した。山ほどの宿題のプレッシャーを軽減させようとしたのだった。だが、「岡林おじさんの歌は、勉強しながら聴くなんて絶対できない。だって、歌詞もそうだけど、声があまりにも素敵なんですもん!」と彼女は言う。
(中略)

 30数年来、彼の歌を聴くことが私の休息になり、私の仕事にもなった。その後、彼はモダン派の先駆ではなくなり、ひとりの優しい兄貴分になった。我々は、淡いが、遠くにいて互いに尊敬するような間柄になった。彼は、私が日本で遊学しアルバイトで生計を立てていたころにつきあった多くの日本人のなかで唯一の有名人であったが、もっとも着飾らないひとりでもあった。


p277~278
 2007年の日比谷野外音楽堂では、きっとこの歌も高々と響いたに違いない。そこの空気のなかに、もしくは人々の記憶のなかに。決して私ひとりではないだろう。少なからぬ人がじっと前を見てこの歌を最後の一句まで歌ったことだろう。

 私たちの望むものは・・・
 私たちの望むものは・・・

 もしもボブ・ディランをひとつの基準にした場合、岡林は、中毒性の高い奇怪な歌詞をつくるのに長けたボブ・ディランをとっくに超えたと思う。だが、政治にたいする懐疑、回避、恐れのあまり、重大な問題から遠く離れる態度が、彼をさらに前に進めさせることができないでいる。

 彼は自分を超えることができるのか。
 分からない。

 しかし、どうあろうが、私は彼が好きだ。たくさんの日本の友人が無私にそうしてくれたように、彼は私を芸術に開眼させ、参考にさせ、喜びを与えてくれた。彼は、私の優しい兄貴であり、たくさんいる誠実な日本人のひとりだ。

 私は、ずっと最後まで聴いていくだろう。
 彼か、私のどちらかが先に離れていく日まで。


保阪正康さんの書評を見てみましょう。

<熱狂的な民族主義は「毒薬」> 

中国語圏で広く読まれている日本人論。
著者は北京に住む著名な作家で、かつては日本に滞在し、研究生活も体験している。

日本への関心の深さとその分析が、正鵠を射ていて、日本人も自省を促される。
論じる内容は実に幅広く、赤穂浪士から大川周明、そして歌手の岡林信康まで、さらに長崎という街を通じての原爆論、福沢諭吉を引いての入欧論からアジア主義、リッダ空港銃撃の3人の赤軍兵士と、日本史の中を縦横に目配りする。

日本人とはどのような国民性を持っているかをあくことなく探り続ける。
それはとりもなおさず中国自身を見つめることになるというのだ。
冷静な筆調に加えて、文学者の視点が随所にあり、この種の書としては説得力をもっている。
著者が達した結論は、日本の物語から中国人が学ぶべきは、「熱狂的でかつ利己的な民族主義が、もっとも恐ろしい毒薬」ということ。
日中双方がじっくりかみしめたい表現である。

 

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