翻訳のさじかげん

<翻訳のさじかげん>
図書館で借りた「翻訳のさじかげん」という本を読んでいるのだが・・・・
翻訳者という人たちは、日頃から古今東西の言葉や文献にふれているせいか、実に物知りであり薀蓄に溢れているのです。

翻訳者のエッセイは、出版界でも渋いジャンルとして旗を揚げているのかも♪

金原さんはいろんな分野で目利きのようであるが…カクテルの薀蓄を見てみましょう。
p25~27
<禁酒法とカクテル>より
 カクテルというのは、酒にジュースやシロップや砂糖やスパイスや、まあ、いろんなものを混ぜたものだ。いうまでもなく、もとはまずい酒を飲むための方法だった。うまい酒にジュースを混ぜたりする人はいない。禁酒法時代、いうまでもなく酒の値段が高騰した。そしてバスタブ・ジンなどと呼ばれる、自家製の非常に質の悪い酒が売られるようになった。

 そんなものがストレートで飲めるはずがない。ジュースや牛乳を混ぜて飲むようになる。そのうちに、少しでもおいしく、というわけで、カクテルが発達し、種類もどんどん増えていく。同時に優秀なバーテンダーも出てくるようになり、彼らが一種のステイタスを獲得する。

 1933年に禁酒法が廃止になると、腕のいいバーテンダーたちがヨーロッパに渡り、やがて世界的にカクテルが広まっていく。60年代から70年代にかけて、日本でもカクテルブームがあって、ちょっとおしゃれな家の食器棚にはシェーカーがあったりしたものだ。

 それはともかく、カクテルはまずい酒を飲むための方法だったことはまちがいなく、酒好きにとっては、ある意味、邪道といっていい。だから、酒を愛する金原は、カクテルは飲まない。が、ひとつだけ例外がある。マーティニだ。なぜかというと、サリンジャーの『フラニーとゾーイ』に繰り返し出てきて、それが非常におしゃれなのだ。

 マーティニは、基本的にはジンにドライベルモットを混ぜてつくる。シェーカーは使わず、氷を入れたミキシンググラスでかき混ぜる。マーティニは、カクテルの王様ともいわれているだけに、ついつい薀蓄を傾けたくなるし、エピソードも多い。

 たとえば、通はベルモットの量をぎりぎりにおさえたものが好きなので、それに合わせたリンススタイルというのがある。これは氷を入れたミキシンググラスにベルモットを少量入れてかき回したあと捨ててしまい、そこにジンを入れてかき回し、グラスに注ぐというもの。しかし、ワンランク上の通は、冷やしたジンをグラスに注ぎ、ベルモットの瓶をながめながら飲むとか。いや、さらにハイレベルの通は、ストレートのジンを飲みながら、ちらっと頭のなかでベルモットの瓶を想像するとか。まあ、勝手にしてくれといいたくなるが、実際、誇張でなくもない。
 
 『大統領をめざした少年』(ウォード・ジャスト著)という本に、マーティニを飲む場面があるのだが、どこにもベルモットなどでてこない。訳者が作者にたずねたところ、冷やしたジンさえあればそれでよくて、気が向けば「ベルモット」とささやく、とのこと。
 それはともかく、バーにいくとまず、気取ってマーティニを注文する。が、おいしいと思ったことがなかった。それが、ついこのあいだ、ある店で初めてうまいと思った。ちょっとうれしかった。



【翻訳のさじかげん】
翻訳

金原瑞人著、ポプラ社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
料理に骨董、三味線に歌舞伎…翻訳しているヒマがない?人気翻訳家の最新エッセイ集。三浦しをん氏との「文楽対談」も収録。

<大使寸評>
翻訳者という人たちは、日頃から古今東西の言葉や文献にふれているせいか、実に物知りであり薀蓄に溢れているのです。

rakuten翻訳のさじかげん

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