流れとかたち(その2)

<流れとかたち(その2)>
図書館で『流れとかたち』という本を手にしたが・・・・
最近は読みやすい本ばかり読んでいるので、たまには歯ごたえのあるこんな本もいいかと思ったのです。

流れに関する論説を熱力学界の著者が書いたとのことであるが・・・熱力学というのが意外というか、意味深である。
かつて学校の教科で一番難しく思ったのは熱力学と流体力学だったが・・・
リタイアした今となっては、こんな本にも手が出るんですね♪


【流れとかたち】
流れ

エイドリアン・ベジャン, J.ぺダー・ゼイン著、紀伊国屋書店、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
樹木、河川、動物の身体構造、稲妻、スポーツの記録、社会の階層制、経済、グローバリゼーション、黄金比、空港施設、道路網、メディア、文化、教育ー生物・無生物を問わず、すべてのかたちの進化は「コンストラクタル法則」が支配している!ダーヴィン、ドーキンス、グールド、プリゴジンらに異を唱える熱力学界の鬼才が放つ、衝撃の書。
【目次】
第1章 流れの誕生/第2章 デザインの誕生/第3章 動物の移動/第4章 進化を目撃する/第5章 樹木や森林の背後を見通す/第6章 階層制が支配力を揮う理由/第7章 「遠距離を高速で」と「近距離を低速で」/第8章 学究の世界のデザイン/第9章 黄金比、視覚、認識作用、文化/第10章 歴史のデザイン

<読む前の大使寸評>
学校の教科で一番難しく思ったのは熱力学と流体力学だったが、リタイアした今となっては・・・
こんな本にも手が出るんですね♪

生物・無生物を問わず、すべてのかたちを支配する「コンストラクタル法則」とのこと・・・よく覚えておこう。

rakuten流れとかたち

この本は読みどころが多いので(その2)として紹介します。

熱力学界の鬼才といわれるエイドリアン・ベジャンの人となりを見てみましょう。

<自由を与えられれば>p32~34
 あらゆる領域同様、ルーマニアという国も、商業やアイデアなど、多くのもののための流動系だ。共産主義政府は何十年にもわたってこうした流れを妨げていたので、私の母国は破綻した。

 旧チェコスロバキアの民衆蜂起は1968年のプラハの春につながり、束縛がある程度緩められた。そのころルーマニアは数学の競技会を開催し、全国で6人の勝者が国外留学を許されることになった。私はその催しで最高得点を取り、その後、アメリカのマサチュ-セッツ工科大学に入学を許可され、工学の学位はすべてそこで取得した。こうして自由へのささやかなアクセスを得たおかげで、自分を作り直す、つまりこの地球上での自分の動きをデザインし直すことができた。

 変化する能力を欠いた融通の利かない統治機関は、流れを妨げる避けようもない抵抗形態の一つの現れにすぎない。独裁者や全体主義政府の下で苦労するかわりに、流動の配置は時とともに一方向、すなわち、流れを妨げるような摩擦をはじめとする「ブレーキ」の影響を減らす方向に進化する。

 抵抗は必然的で避けようがない。だからこそこの世界はけっして完全な場所にはならないし、流動系にしてみれば、前より良くなり続けること、つまり、不完全性の程度を減らし続けることがせいぜいなのだ。それでも、コンストラクタル法則は進歩という概念を示し、希望を与えてくれる。自由さえ与えられれば、流動系はしだいに優れた配置を生み出し、流れやすくなる。

 私は自分の学究生活を通じて、この現象とはとりわけなじみが深かった。まったくの偶然から、デューク大学の工学教授として、また産業界と政府のコンサルタントとして、研究を通して、河川や樹木が直面するのと同じ流れの問題に取り組んできたからだ。

 私たち技術者は洒落た存在とはあまり思われていないが、私の専門は、電子機器の冷却用の、より小型で効率的なシステムをデザインすることだ。一般に、演算能力を上げれば上げるほど多くの熱が出る。ノートパソコンの下側やプラズマテレビの画面を撫でるとわかるだろうが、目玉焼きが作れそうなほど熱い。私は何十年にもわたって数学と物理法則を使い、その熱が本体の内部を通って外部に出るように導くための、より優れたデザインを開発してきた。

 私は自分が生み出している図面が自然界に見られる樹状の流動構造と一致することに気づきはしたものの、別段気にも留めなかった。1995年にブリゴジンの講演を聴くまで、両者のつながりを見破って、母なる自然と自分が同じような答えにたどり着く理由を普遍的な原理が説明できるということに気がつかなかった。だが、あの晩に経験した閃きのせいで、私はいやおうなしに自分の仕事から目を上げ、身の周りのありとあらゆるものの形と構造を考えることになった。



コンストラクタル法則発見の、更にその萌芽期のエピソードを見てみましょう。

<生命は流れであり、動きであり、デザインである>p120~121
 このように私たちは、コンストラクタル法則の中に、活動している生命の果てしない映画を目にする。人工の流れから、自然界の生物の流れと無生物の流れのいっさいに至るまで、一見まったく異なる数々の現象が単一の物理的原理に支配され結び付けられていることを、コンストラクタル法則によって私たちは初めて知ることができる。物事の様相(進化を続けるもののデザイン、すなわち、刻々と形を変える流動系の境界)に私たちの焦点を合わせ直すことで、コンストラクタル法則は自然界のデザインを明らかにし、予測し、説明してくれる。

 そして、熱力学の法則のような、森羅万象を支配する緒法則が、いたるところで私たちの目にする、脈動し進化を続けるデザインを生むために配置を伴って流れようとする普遍的傾向と、協働していることを示してくれる。コンストラクタル法則のおかげで、私たちは、長い間、単なる壮大な偶然の一致にすぎないと考えていた事象に、予想可能なパターンを見て取ることができる。

 私はこの事実を発見したばかりではなく、身をもって体験した。1960年代のルーマニアで、店頭から肉が消え始めたころ、獣医だった私の父は、ある解決策を思いついた。鶏の雛を孵すことにしたのだ。父は、卵の内部を電球で照らし出して胚が成長しているかどうかを確認できる、検卵用の箱を持っていた。当時10代だった私は、日々目の前で繰り広げられる血管系の成長の場面を驚異と畏敬の念を持って見つめた。

 卵の殻の内側に血管が伸び、やがてびっしりと広がっていった。私は、そのとき見えていたデザインが、学校で描いていた色塗りの地図の河川流域のデザインと同じであることにも気がついた。ひよこの胚が丸い卵の内側で進化しているのに対して、ドナウ川の流域は丸い地球の表面で進化していたのだ。

 あのころは、この二つの事象の類似は興味深いものであって、なかなか良いところに気がついたと思っていた。今思えば、父の箱は、私たちの周りのいたるところにあるデザインを照らし出していたのだ。

最後に、木村繁雄・金沢大学教授の解説を見てみましょう。

<解説>p392~394
 本書は、ノーベル化学賞受賞者イリヤ・プリコジンの熱力学に関する講演が誤まりであると断定するところからはじまる。序章のこの衝撃的な書き出しに続き、コンストラクタル法則の基本的な考え方がきわめて戦闘的な文章で開示されてゆく。一般に科学的方法とは、ミクロな領域を支配する原理から出発し、積分という数学的操作を経て、マクロな現象を予測しようとする。

 これに対しコンストラクタル法則はマクロな観測事実をそのまま原理としてとらえようとする、一見過激なものだ。ベジャンは細分化による全体像の欠如が現代科学の悲劇であるとする。

 第一章、第二章は流動系を対象として、工学的応用(電子機器冷却)、地球物理学的応用(河川流域の形成)、生物学的応用(血管系の形成)について述べ、そこに現われる流れ構造はすべて流動抵抗低減の方向に求めた結果であることを照明する。

 第三章、第四章、第五章では生物進化の秘密に迫る。そこではなぜ動物は体の大きさと移動速度が比例するのかについて論じ、また樹木がなぜ我々が見るような幹と枝から構成されなければならないかを明らかにする。そしてダーウィンの進化論は否定され、生物のみならず、無生物についても、進化の方向には必然性があることが示される。

 第六章、第七章、第八章では社会システムと社会秩序に言及し、そこに見られる階層的構造がコンストラクタル法則の原理に基き必然的に生まれたものと説く。これらのいずれの解析においても「スケール解析(スケーリング則)」が重要な役割をはたしている点は注目すべきである。

 圧巻なのは最後の第九章、第10章である。これらの章で、ベジャンは物理学の世界では扱うことのない領域に踏み込んでゆく。それは文明と歴史の問題である。これらもまた物質と情報の流れであり、コンストラクタル法則に支配されると主張する。

 彼はここでコンストラクタル法則の勝利を高らかに宣言する。情熱の迸るような力強い議論は、疑問を呈する余地さえ与えないでわれわれを圧倒する。その強烈な説得力を持つ彼の言葉の底に流れているものは、激しい「思考する自由」への渇望であり、文明の進化の方向への楽観的な信頼であることを読者は理解するであろう。

 本書は全編を通して堅牢な構成力に貫かれており、みごとな造形美ともいうべき魅力に満ちている。これほど多様なテーマを扱いながらすこしも衒学的なところがない。説明はきわめて平易で具体的であり、ベジャンが「視覚の人」であることを感じる。かなり革命的な理論の話でありながら、熱力学のことなど知らない読者でも楽しく読み進められる、良質なポピュラーサイエンスの一冊に仕上がっている。


なるほど、簡潔で必用十分な解説でんな♪
わりと我の強いベジャンの論説には熱力学、工学、生物学、地球物理学などの下地が裏打ちしていること、そして視覚に拘るところがアートにも感じられるのが、ええでぇ♪

流れとかたち(その1)

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