再読『習近平の中国』

<再読『習近平の中国』>
図書館の本を手当たり次第に、借りている大使であるが・・・・
なんか慌しいので、この際、積読状態の蔵書を再読しようと思い立ったのです。
で、再読シリーズ#2として『習近平の中国』を取り上げてみます。

折りしもインチキ国会で集団的自衛権などの安保法案が可決されたが・・・
集団的自衛権の必要性の根拠とも言われる「中国の脅威」について考えてみたい。

【習近平の中国】
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宮本雄二、新潮社 、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
猛烈な反腐敗闘争、戦後秩序を揺さぶる外交攻勢、急減速する経済の立て直しー。二〇一二年の総書記就任以来、習近平は猛烈なスピードで改革を進めている。基本的な方向性は間違っていない。しかし、まさにその改革によって、共産党一党支配の基盤は崩れていかざるを得ない。危ういジレンマに直面する中国は今後、どこに向かうのか。中国大使をつとめ、習近平を知悉する外交官が描いた「苦闘する超大国」の実情。

<読む前の大使寸評>
中国大使をつとめ、習近平を知悉する著者が描いたとのこと・・・
本屋で立ち読みしていて衝動買いしたのです。

bunshun習近平の中国
習近平の中国byドングリ


かの地で腐敗が蔓延した理由を、この本に見てみましょう。

<負の遺産としての腐敗問題>p74~77
 江沢民時代に政治改革が進まなかったのは、トウ小平がブレーキをかけたからだと言い訳できるが、トウ小平があれほど警告を発していた腐敗問題の悪化については、江沢民は何の言い訳もできないだろう。改善されるどころか著しく悪化したからだ。

 悪化を続けた理由の一つは、すでに触れた制度的要因による。共産党があらゆることを指導し、しかも国家としての憲法の上にいる。法律を守れ、憲法を守れといっても、党員がこれらを遵守しているかどうかをチェックするのは党の紀律検査委員会しかない。そして党員を司法のプロセスにのせて裁くかどうかも党が決めるのだ。

 中国においては政府職員をはじめ国有企業等の重要ポストは、ほぼ共産党員に独占されている。これらのポストには取り締まりや許認可の権限があり、直接、実利と関係している。だから簡単に腐敗する。

 こういう仕組みの中で腐敗を減らそうとすれば、一方で仕組みそのものをしにくくする必用があるし、もう一方で監査と取り締まりを厳しいものにする必用がある。これらの改革は胡錦濤時代に次第に意識されるようになり、習近平の時代には最大の課題の一つになり、目下大ナタを振るっている最中だ。

 江沢民の時代には、腐敗撲滅を口で言う割りには具体的行動が伴わなかった。江沢民の時代に腐敗が蔓延した第二の理由は、江沢民が本気でやらなかったからだ。それは、99年に表面化した福建省の遠華密輸事件の処理ぶりに典型的に表れている。

 主犯の頼昌星は、国しか輸入できない石油を軍の名義で輸入し、しかもそれを精製してガソリンとして堂々と販売していたというから驚く。もちろんあちこちに賄賂を贈り、見逃してもらっていた。あの当時としては驚天動地の800億元とも言われる巨額の脱税、そして多数の贈収賄事件であった。

 この事件は、江沢民の側近の買慶林が福建省のナンバーワンをつとめていたころに起源をもつ話で、福建人である買慶林夫人の関与も取りざたされた。党中央、すなわち江沢民が本気なら買慶林に対しても何らかの処分はするだろうと思われた。それほど桁違いの腐敗案件だったのだ。

 買慶林は当時北京市長に栄転していた。だが、“巷の噂”では、江沢民は「この事案は地方の案件であり地方で処理すべし(北京の買慶林には手を出すな)」という処理をしたという。これを聞いて私は、江沢民は本気で腐敗退治をするつもりはないなと思った。中国国民も同じように感じたであろう。

 諸葛孔明は、軍記を維持するために“泣いて馬ショクを斬る”ことをした。自分の信頼する有能な将軍馬ショクでさえ軍規にそむけば、その首をはねたのだ。ルールを定め、それに違反するものは誰であれ許さない。それが組織の紀律維持のために必用不可欠なことだ。

 だが江沢民はそうしなかった。だから私は共産党に明日はないと感じたのだ。私が01年に中国共産党の統治があと5年で終わると早とちりした最大の理由は、このような江沢民の対応にあった。

 そして江沢民は胡錦濤の時代にも人事に影響を及ぼし続け、彼の系列の人たちが「良いポスト」に就いていった。その結果、既得権益層のかなりの人たちは江沢民とつながり、また腐敗している可能性も高くなってしまったのだ。習近平は今、江沢民が本気で腐敗退治をしなかった後始末をやらされているともいえる。

かの地の腐敗はトウ小平が生み、江沢民が育て、習近平がツケを払っているようですね。
元中国大使の著者は、中国共産党の終焉という大胆な予測を01年に出していたが、惜しくも外れようです。

農民工という大問題に対して改善策が決定されたが、どうなるんでしょうね?

<格差問題の象徴としての「三農問題」>p151~153
 現在は、あまり口にされなくなったが「三農問題」、つまり農業、農村および農民のかかえる問題は、依然として大きい。中国のあらゆる格差の問題は、都市と農村との間にもっとも顕著に表れている。

 都市部一人当たり可処分所得の農村部一人当たり純収入に対する倍率は、09年の3.3倍から13年に3.0倍に低下しているが、まだ大きい。農村部は、第二次産業や三次産業が弱体であり、税収も少なく地方政府の力も弱い。社会保障や医療保険、それに教育といった国民が最も必用とするものが、都市と比べて著しく不足している。しかも悪名高い戸籍制度の問題がある。農村戸籍の者は都市に定住できないのだ。

 つまり都市と農村は二元構造となっており、それが都市と農村の一体的な発展を制約する主要な障害となっている。それが教育と就業の機会の差や、社会保障の水準の差を生んでいる。

 11年末に都市部人口が農村部人口を超えたが、それでも6億を超える人が、まだ農村部に住んでいることになる。ここをテイクオフさせ「三農問題」が一応の解決を見ない限り、中国全体の「発展」も「安定」もない。

 農業は土地に縛られ、生産性の向上にも限界がある。農業人口を減らすしか、農民一人当たりの収入を増やすしか抜本的な方法はない。この離農人口をどうするのかが中国指導部に突き付けられた大きな課題となってきた。

 この課題に対する習近平政権の対策は、「都市と農村が一体となった、新しいタイプの工業・農業・都市・農村関係を作り上げるようにする」(『決定』第6項)ことにある。その中心となるプロジェクトは都市化の推進であり、すでに雨後の竹の子のように全国各地で新たな都市が構想され、建設され始めている。中国全土の顔かたちを変えてしまうほどの壮大な実験がすでに始まっているのだ。そこに農村からの人口を吸収していく。

 また、既存の大都市に農村人口が大挙して流入してくると管理不能となるので、そうならないような形での戸籍制度改革を進めることにした。基本は、「都市」を特大、大、中、小の四種類に分け、小都市への戸籍転入制限は全面的に撤廃し、中都市への制限は徐々に撤廃し、大都市への戸籍転入はある程度制限し、特大都市へは原則、転入させない、というものだ。

 さらに都市に住む農村戸籍住民、つまり農民工の救済が決まった。都市の基本公共サービスを受けられるようにし、農村で参加した年金保険・医療保険を都市のものに接続させることにした。

 現代化と言い近代化と言っても、実際は都市化である。先進諸国が長い年月をかけて歩んできた現代化の道を中国はさらに加速させて歩んでいる。その結果は伝統的な社会の崩壊であり、自然破壊であり、環境の悪化だ。それが全中国で、これからもさらに大きな規模で行われるのだ。

 そこに待ち受ける無限と言ってもいい多くの課題や挑戦のことを考えると気持ちはひるむ。だが他に三農問題解決のうまい手もない。そこを突き抜けるしか中国共産党の未来はないのだ。


自己中心的な中国人は、ほんとうに中国脅威論が理解できないようで・・・怖い。

<中国脅威論を理解できない中国人>p216~218
 中国を長年観察していて、中国はまだ“自分探しの旅”をしているのだなとつくづく思う。
 昨今の中国脅威論の高まりを、中国の人たちは、なぜそうなるのか理解できないでいる。脅威論を煽るのは、中国を悪者にして、自分たちの悪行を隠し、よこしまな利益を得るためだと考えている。中国の“ものの考え方”が、中国脅威論の高まりという結果をもたらす仕掛けになっていることに、彼らの多くは気づいていない。その“考え方”とは、「中国の基本国策は平和と発展であり、世界の平和と発展のために大国としての責任を果たし尽力する。しかし領土や主権、海洋権益と言った中国の生存と発展のために必要不可欠なものについては一切譲歩しない」とまとめることができる。

 つまり自分たちの“核心的”な権利や利益を侵犯することは決して許さないという姿勢と、世界の平和と発展のために努力することは両立すると考えているのだ。なぜなら中国の「権利や利益」を守るのは当然であり、侵犯する相手が悪いのだから、世界の平和と発展を損なっているのは相手だ、という理屈になるからだ。

 だがここに本質的な問題がある。それは、正しいか正しくないかを自分たちで決めているからだ。中国は、世界大国になれば何が正しいかを自分で決めることができると考えているが、それは大間違いだ。アメリカはそうしているではないか、と言いたいのであろうが、そうではない。アメリカでは大統領が決めたことにも議会は反対できるし、国民も監視している。国際輿論もある。ルール違反をしたり、国民が正義だと思っていることと違うことをやったりすることは難しいのだ。

 対イラク戦争のように無理してやったことでも、いずれは是正する。戦後の国際政治秩序は、ルールに則った行動をすることを求めており、大国が自由に振る舞うことを簡単に許さないのだ。

 中国が軍事大国になるのは当然だと思っていても、中国以外の世界は「はい、そうですか」というわけにはいかない。軍事力は相手を破壊する手段であるし、持っているだけで相手を恫喝できるからだ。

 一昔前、中国から「核兵器を持たない国に対して核は使用しませんので安心してください」などという説明を聞いたことがある。これは、無防備の人にナイフを背中に隠しながら「このナイフは決して使いませんので安心してください。ところでお金を少々貸してくれませんか」と言うようなものだ。兵力に大差があると、相手を脅して目的を達成することはできるのだ。

 中国は、これだけの世界大国となり、巨大な軍事力を持つようになった。その軍事力をどのように使おうとしているのか、国際社会に説明する必要がある。合理的な説明を聞くことができなければ、他の国は中国の意図に猜疑心をいだき、それに対抗する動きをするだろう。



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