貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告(その3)

<貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告(その3)>
朝日新聞の記事「書棚から見える中国 書店「万聖書園」」で、この本の存在を知り図書館に予約を入れたら、二日後にゲットできたのである。ラッキー♪
この本は、なかなか根性の入ったフィールドワークとなっているようです。

読みどころが多いので(その3)として読み進めたのです。

【貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告】
中国

阿古智子著、新潮社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
焦燥、怨嗟、慟哭、絶望…「格差」が人間を破壊する!中国建国65周年、共産主義の理想は、なぜ歪んだ弱肉強食の社会を生み出したのか。エイズ村、農民工、学歴競争、役人汚職、ネット世論、反日デモ…中国社会の暗部に深く踏み込んだ研究者による衝撃レポート。格差社会の臨界点へと突き進む隣国を、ソフトランディングに導くことは可能なのか。日本人必読の書。
【目次】
第1章 エイズ村の慟哭/第2章 荒廃する農村/第3章 漂泊する農民工/第4章 社会主義市場経済の罠/第5章 歪んだ学歴競争/第6章 ネット民主主義の行方/第7章 公共圏は作れるのか

<読む前の大使寸評>
朝日新聞の記事「書棚から見える中国 書店「万聖書園」」で、この本の存在を知り図書館に予約を入れたら、二日後にゲットできたのである。ラッキー♪
この本は、なかなか根性の入ったフィールドワークとなっているようです。
(予約して借りたのは、2009年刊のハードカバーです)

<図書館予約:(9/15予約、9/17受取)>

rakuten貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告


戸籍制度の「差別的」な側面がレポートされています。

<「勝ち組」が支配する社会の現実>p112~114
 先に述べたとおり、農村と都市を区分する戸籍制度は毛沢東時代に始まったが、当時は農村の人々からも、さほど「差別的な制度」とは捉えられていなかった。農村でも手厚い社会福祉が行われ、教育や医療はほとんど無料であった。人民公社の食堂で、ご飯を食べたいだけ食べられる時期もあった。それは「格差を生じさせない」という共産主義の理想を追求しようとしていたからである。

 しかし、改革開放期に入ると、この戸籍制度の「差別的」な側面が、徐々に明らかになっていった。過酷な市場競争と都市偏重の開発が進む中、「持つ者」と「持たざる者」の格差が、想像を絶するほど大きく広がってしまったのである。農民工の中には、長年に渡って経験を蓄積し、高度な技術を持っている者も少なくないが、彼らのほとんどが居住する都市に戸籍を転入することができず、怨嗟の声を上げている。

 では、一方の都市市民(都市戸籍を持つ市民)は不平等な戸籍制度をどのように見ているのだろうか。中国社会科学院が2002年11-12月、全国31都市で18-69歳の1万5000人に対して実施した「中国都市市民社会観念調査」によると、貧者と富者、幹部と一般民衆、企業の労使間においては「利害衝突が非常に多い」「深刻である」との回答が約3割を、「少しある」を入れると過半数を占めた。

 つまり、都市市民の間では階層間の利害衝突を危惧する声が多かったのである。しかし、一方で、農民と市民の間の利害衝突については、「ない」「非常に少ない」の回答が圧倒的に多かった。これは、都市市民が戸籍制度の差別的な側面にあまり注意を払っておらず、農民を「利害が衝突する対象」とすら見做していないことの証左であり、彼我の格差の大きさを表している。

 都市の人々は、レストランや市場で働く農民工に日常接しているはずであるが、直接的に自らの利益や権利が侵されることがなければ、利害関係を考える必要はないのだろう。逆に、平安な日常生活が乱されるようなことがあれば、強く抵抗する者が出てくるはずである。

 たとえば、上海の友人は最近、新築のマンションを購入したが、「群租」(集団賃貸)の問題が大変だと話していた。投機目的に不動産を買いあさっている温州出身の人たちが、3LDKのマンションをたこ部屋のように細かく分割し、農民工に貸し出したため、環境や治安が悪化していると住民たちが異議を申し立てているのだ。良識ある普通のサラリーマンである我が友人も、「群租」対策として、開放的で風通しのよかったベランダを全面ガラスで囲い、隣家との堺に槍のように先がするどく突き出た金属の棒を設置していた。

 これが今の中国の現実である。都市の中産階級と農民工の生活環境はあまりにもかけ離れている。
(中略)

 社会階層によって異なる利害関係ができており、一方を調整すれば他方にねじれが生じ、衝突が起こる。あまりに格差が大きくなりすぎて、もはや調整不能になっている。「勝ち組」の地域や人々は、経済成長を犠牲にし、現在の有利な立場を崩してまで、変革を起こそうとしない。それどころか、「負け組」に転落することに怯え、既得権益を奪われないよう、自己防衛したり、弱者を排斥したりせざるを得ないのである。


中国の明日を担う子どもたちは、どういう教育を受けているのか?
この本の最後にレポートされています。

<「自分」を表現したい>p179~181
 中国の子どもたちがこれほどまで追い詰められる根本的な原因は、一体何なのか。学歴競争が激しいのは日本やアメリカでも同じであるが、中国の状況がより過酷であるのは、戸籍所在地や親の政治・経済力によって、子どもに与えられる機会が大幅に変わるという不公平なシステムが設けられているからである。

 政治・経済が大きく揺れ動く中で、自らの地位の浮き沈みを身をもって経験してきた親たちは、過剰なまでに「リスク管理」を心がけ、「将来への投資」を増大させようとする。既得権益層の親たちはその有利な地位を手放さず、さらに上を目指すために、弱者層の親たちはなんとか上にのし上がるために、子どもの教育に尋常ならざる力を入れる。そして、これだけ時間も金も費やしたのだから、成果が上がるはずだと親たちは信じる。だが、人間はロボットではない。準備された材料をインプットすれば、計算どおりに製品が出来あがるわけではない。子どもには子どもの選択があり、人生がある。

 筆者が1998-1999年に上海市で調査した3校のうち、1校は民ベン校だった。自動車教習所の敷地内に民間企業が設立した高校で、周りは畑に囲まれ、交通の便の悪い、浦東新区郊外の辺鄙な場所にあった。教師は市中心部から毎日送迎バスで通勤する。生徒たちは寮に住んでいたが、入口に大きな鍵をかけられており、「まるで監獄のよう」と話す者もいた。

 とにかく大学に合格させることが、この学校の使命であり、建平高校が行っていたような課外活動はほとんど実施されていなかった。教師は公立校を退職した年配者が大半で、少数の若手教師はほとんどが農村出身者だった。若い世代の都会っ子の心理を理解できないままに知識を詰め込もうとする教師らに、生徒たちは辟易していた。
(中略)

 受験対策の知識ばかりを詰め込み、自由に思考することさえ許されないような環境で、創造性豊かな人間が育つわけがない。心も体もぼろぼろになった子どもたちは、自分がいったい何を求めているのか、何を感じ、考えているのかさえ、分からなくなってしまう。競争に勝ち残ったエリートたちも、自らの権益を守るのに必死になり、狭い視野でしか物を見ようとしないならば、将来、弱者を支えるための制度など作ろうとはしないだろう。しかし、公平な競争が保障され、多様な価値観をもつ人間がかかわり合うことなくしては、社会の革新は実現しない。


過酷な一国ニ制度が見られますね。
大使思うに・・・
現在の中華システムのもとで、土地の国有と農業戸籍が存続するかぎりは、如何なる改革も成就できないと思うわけです。

西欧的な連邦制が望ましいのだが・・・
かの地では、ちゃぶ台返しのように革命が起こり、非民主的な別の統治システムへ変わるだけではないのか?

貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告(その1)
貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告(その2)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック