朝日デジタルの書評から68
<朝日デジタルの書評から68>
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。
・・・・で、今回のお奨めです。
・草木成仏の思想 安然と日本人の自然観
・遠すぎた家路 戦後ヨーロッパの難民たち
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朝日デジタルの書評から67
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。
・・・・で、今回のお奨めです。
・草木成仏の思想 安然と日本人の自然観
・遠すぎた家路 戦後ヨーロッパの難民たち
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草木成仏の思想 安然と日本人の自然観より ![]() <人間の傲慢がもたらす自然の怒り:本郷和人(東京大学教授・日本中世史)> ひところ「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」という言葉がよく使われた。成仏とは仏になること。また心の働きをもつ「有情」に対し、心の働きのない植物などを「無情」という。そうすると、「山川草木悉皆成仏」とは、無情であっても仏になれる、との意味になる。 哲学者の梅原猛が仏教思想の中からこの言葉を見つけ出し、中曽根康弘首相(当時)が政治の場でしばしば引用した。私たちはすべての生物・自然と調和し、共棲してきた。「共存の哲学」こそが日本民族の生き方である、と説いたのだ。日本人は自然に優しい、環境を大切にする、という表現は現代でも耳にする。 その思想は真実だろうか。著者は忘れ去られていた安然(841?~915?)という学僧の事績を発掘する。彼の手になる『斟定(しんじょう)草木成仏私記』を現代語訳し、その他の著作も吟味しながら、この問題を考察していく。そして「真如」という概念に着目し、安然が「草木が自ら発心・修行し、成仏する」との理解に至ったことを解き明かす。 著者の論点はさらに、日本人と自然の関係へと進んでいく。日本人は本当に環境に優しく、自然を大切にしてきたのか。いや、そんなことはない。私たち日本人は昔から、開発と称して自然を破壊してきたではないか。自然の大部分はどんなに科学が発達したとしても了解不能な領域に属しているのだから、「原子力を制御できるなどというのは傲慢以外の何ものでもない」。 安然が説く「真如」とは、「かたちのある何か」ではない。有情・無情が生成し、帰滅していくところであり、それに思いをいたし接近していくことこそが信仰である。その意味で、人間の思い上がりや不勉強が自然(無情)の怒りの元となり、天災をもたらす、という考え方なり信仰は、十分に成立すると著者は説く。傾聴すべき提言であろう。 ◇ 末木文美士著、サンガ、2015年刊 <「BOOK」データベース>より 「草木などの植物も仏になる」という草木成仏論は、いつ、どのように生まれてきた思想なのか?-それは単なる「自然の賛美」でもなければ、「日本古来の自然観」でもない。平安時代に注目され、議論されてきたその思想を根拠から問い直し、自然との向き合い方を再考する。 <読む前の大使寸評> 中国人が論語を引合いに出すのなら、日本人なら「草木成仏の思想」やで・・・ と、中華嫌いの大使は、そう思うのである。 なんか、中華との対抗でしか考えられないのが、度量が狭いのだが(笑) <図書館予約:未> rakuten草木成仏の思想 安然と日本人の自然観 |
遠すぎた家路 戦後ヨーロッパの難民たちより ![]() <数百万人、大戦最大の「後遺症」:吉岡桂子(本社編集委員)> 欧州は歴史のかさぶたに覆われている。乾いて癒えたように見える皮膚もあれば、血がにじんでいる傷口もある。 その一枚をめくると、第2次世界大戦が欧州に残した数百万人の難民の苦難の物語があった。英国のテレビプロデューサーだった著者が、大戦最大の「後遺症」をドキュメンタリーのように描く。戦争の記憶や記録は「民族ごとに構築されてきた。客観的に書くのは容易ではない」と自覚しながら、民族や国家の枠を超えた歴史の俯瞰に挑んだ。 舞台は、1945年の終戦をはさんだ約10年間のドイツ。主役となる「難民」は、ヒトラーの大虐殺を生きのびたユダヤ人だけではない。ナチス時代に欧州各地から強制連行された労働者、自発的な出稼ぎ、戦争捕虜、共産主義の旧ソ連から逃れようとした人……。ポーランド、ウクライナ、ユーゴスラビア、バルトの国々など、さまざまな背景を持つ人々が難民として吐きだされ、迫害や伝染病、飢えの恐怖にさらされた。 彼らはどこからどのようにやって来たのか。そして、どこへ行ったか??。時が過ぎたからこそ出てきた記録や当事者の証言を生かしながら構成する。外国人への嫌悪や差別をあけすけに語る人がいる。連合国が設けた難民を支援する国際機関の収容所には、「上から目線」の偽善もある。悲劇に潜むきれいごとだけではない生々しさが、欧州の大きな歴史を人々の物語に紡ぎ直している。 難民は、米国が深くかかわった欧州の復興や東西冷戦、イスラエルの建国といった世界の歴史の渦の中にありながら、その潮流を作る存在にもなったという。著者が戦後の出発点とする「難民危機」を追うと、和解と統合の「優等生」では語り切れない欧州の苦悶と打算が見える。 戦時の強制労働の問題、移民の受け入れや民族主義への向き合い方など、日本がいま抱える課題への示唆に富んでいる。 ◇ ベン・シェファード著、河出書房新社、2015年刊 <「BOOK」データベース>より 行き場のない数百万の放浪者!-それは大事件だった!想像を超えた苦難と悲劇の実話。迫害、食糧、伝染病など、多くの要因が絡む巨大な人口移動が、いかに戦後をつくったかを詳細に描く! <読む前の大使寸評> 難民とか移民、そしてディアスポラが大使の関心事である。 吉岡桂子委員の推す本であれば、いい本だと思います。 ちょっと無責任な寸評かもしれないが、それだけ吉岡委員を信頼しているわけです。 <図書館予約:未> rakuten遠すぎた家路 戦後ヨーロッパの難民たち |
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