日本の樹木2

<日本の樹木2>
図書館で『日本の樹木』という本を手にしたが・・・・
カラー写真が多くてビジュアルはグー、挿入されたエピソードも植生や歴史などの薀蓄に溢れていて・・・
ええでぇ♪


【日本の樹木】
樹木

舘野正樹著、筑摩書房、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
本書では、あらためて木の美しさと不思議さを再発見してもらうために、基礎生物学から生態学までをふまえ、ヒノキ、ブナ、ケヤキなど代表的な26種について進化の秘密を紹介します。自然環境のなかで成長した本来の樹形を写したカラー写真をとおして、緑樹の影のしたたかな生き残り戦略について楽しく学びます。

<読む前の大使寸評>
カラー写真が多くてビジュアルはグー、挿入されたエピソードも植生や歴史などの薀蓄に溢れていて・・・
ええでぇ♪

rakuten日本の樹木


26種のうち、スギとイチョウとキリについて見てみましょう。

全国の山間地に見られるスギである。
間伐放棄などで倒木も多く見られて、マイナスイメージが強い樹木であるが・・・
それは日本の植林方針の壮大な失敗によるものであり、スギになんの罪はないわけです。・・・ということで、その悲劇的な状況を見てみましょう。

p14~19
<スギ>
 スギという名前のついた樹木は結構ある。日本にも、ヤクスギ、アシュウスギなどと呼ばれるスギがあるが、これは正真正銘のスギである。ところが、ヒマラヤスギやレバノンスギとなるとこれはスギではなく、マツの仲間だ。英語ではマツの仲間をcedarと呼ぶのだが、これをスギと訳してしまったことが間違いの発端なのだろう。

 スギという名前は付かないがスギに近縁の植物としてはアメリカのセコイアがある。スギとセコイアはともに長生きで知られている。

 さて日本のスギだが、非常に近縁なものは中国にあるだけで、ほとんど日本だけに分布する樹木である。しかし、日本のどこにでも生育していたというわけではない。日本各地に有名なスギ林があるが、すべて降水量の多い場所に限られる。秋田杉で有名な秋田は多雪地だし、屋久杉で有名な屋久島には一年中雨が降る。

 スギは常緑針葉樹の中では比較的成長が速いのだが、それは豊富な降水量に支えられているのだろう。その仕組みについて確実なことは言えない。ともかく、成長がそこそこ速く、木材として使いやすかったため、スギは全国各地に植林された。本来ならばスギの人工林は、日本の木材生産の中核を担うものとして愛されるはずだった。ところが、日本が豊かになるにつれ、国産材よりも輸入材の方が安くなっていった。これがスギにとって悲劇の始まりだった。人工林は放置されて荒れてしまい、それに加えてスギ花粉症がスギの評判を落としてしまった。

 ところで、なぜ人工林を放置してはいけないのだろうか。その理由は間引きにある。スギに限らず、人工林では人間による間引きが必要だ。これを行わないと、光をめぐる個体間の競争が激しくなる。競争が激しくなると、幹の肥大よりも伸長成長が促進される。通常、植物は風などのストレスに十分対抗できるよう、肥大と伸長のバランスをとって形を作っていくのだが、競争が激しいと背に腹は代えられない。

 伸長を優先させて徒長した幹は、写真のように降雪などで折れてしまう。人工林では同じ大きさで同じ性質を持った苗が植えられるため、競争の勝者と敗者がなかなか決まらない。そのため、すべての個体が伸長を続けることになる。一方、自然の林では発芽時期もずれるし、個体の特性も多様であることが多い。こうなるとより速く大きくなれるものが勝者となり、負けたものは日陰になって枯れてしまう。これを自然間引きとよぶ。これによって面積当たりの個体数は常に低下していき、人工林でみられる際限のない競争は回避される。
(中略)

 このように、荒れ果てた人工林と花粉症の二つによって、スギに関するネガティブなイメージができてしまった。木材としてのスギもヒノキより低級だとされているのでなおさらだ。建築には素人の私から見ても、ヒノキの方がなめらかで緻密な木材に見える。筆者の生家は祖父母が隠居所として建てたものだったのだが、安普請のために柱がスギだった。スギの柱は友達から冷やかされることも多く、父の夢はヒノキ造りの家を建てることだったのである。

 しかし、いにしえの出雲大社のような高貴な建築物でさえスギでできていたことがわかっている。出雲大社が造営された頃は木材を遠くから運ぶ手段がなく、仕方なく近くにあったスギを使ったのではないか、という見方もあるだろう。しかし、日光植物園に隣接する旧田母沢御用邸の中で最も景観のよい箇所はスギでできている。ここは江戸時代の建築物を明治になってから移築したものなので、木材は全国から運搬されるようになっていた。それでもスギを使っているのである。


生ける化石と呼ばれるイチョウが興味深いのである。
p95~99
<イチョウ>
 平たい葉をもっているが、これでも針葉樹と同じ裸子植物だ。実は生ける化石。同じ落葉性の裸子植物のカラマツは、過酷な環境に適応できたことで生き延びてきた。しかし、これと言って特殊な能力をもたないイチョウは、被子植物である落葉広葉樹によって淘汰されるしかなかった。

 たまたま中国の奥地に取り残されることで生き延びたのがイチョウだ。こうしてみると、東大のマークがイチョウなのは痛い。未来を開拓することを使命とする大学が生ける化石では困るのである。ちなみに、この本を執筆している時点での東大の行動シナリオは「」だ。こちらには満足している。

 日本のイチョウは百万年ほど前に絶滅している。日本にイチョウが再導入されたのは室町時代ともいわれている。その場合、公卿が鶴岡八幡宮のイチョウの後ろに隠れて実朝を狙うことはできない。もう少し前に伝来していたとしても、そのイチョウが現在まで生きている可能性は低い。落葉樹であるイチョウの寿命がそこまで長いとは考えにくいのである。

 小石川植物園には樹齢300年程度といわれる大イチョウがあるが、この幹は腐朽が進んでいる。おそらく400年程度がイチョウの寿命なのではないだろうか。
 とはいえ、公卿がイチョウに隠れたのかどうかはたいした問題ではない。歴史的には、実朝が公卿に暗殺され、源氏が絶えたことが重要なのだから、イチョウの伝説は伝説として楽しもう。

 イチョウは雌雄別株である。メスの木にやってきた花粉からは自分で泳ぐことができる精子が解き放たれる。この精子の存在を発見したのは、小石川植物園で画工をしていた平瀬作五郎。植物に精子があることだけでもおもしろいのだが、ここではオスとメスについて考えてみよう。

 オス・メスとは何かという定義は結構難しい。筆者が定義するとしたら、子供に遺伝子だけを渡すのがオス、遺伝子+資源を渡すのがメスということになる。動物の場合、メスが子供に渡す資源とは子供の体のことだと考えればよい。植物ならば、種子のことだ。多くの植物ではオス個体とメス個体に分かれているわけではないので、花粉を作る器官をオス器官、種子を作る器官をメス器官と呼べばよいだろう。

 オス・メスは動物と植物で独自に進化したらしい。生物がオス・メスのない単細胞だったときに動物の祖先と植物の祖先が分かれている。その後、動物も植物も多細胞化していくのだから、多細胞生物に特有のオスとメスは動物と植物で別個に進化したと考えるのが合理的だ。面白いのは、別々に進化したはずのオスとメスなのに、片方の性は遺伝子だけを子に与え、もう片方の性は資源までも与えるということだ。またオスとメスの比は一般に1:1となることも興味深い。

(中略)
 さて、イチョウといえばギンナンだ。以前はギンナンが採れるメスの木が好まれていたのだが、最近はその臭いが嫌われ、街路樹としてはオスの木が好まれるという。


軽いわりに強いキリ材には、大使も注目するわけです。
キリは、葉の光合成能力が非常に高いんだそうです。
p100~102
<キリ>
 キリの幹の比重は非常に小さく、菌類や虫に対する抵抗性に欠けるのである。比重の小ささは、キリの成長の速さの一因である。何度も述べたように、比重が小さいと、強度を犠牲にせずに背を高くできるのである。実際、キリは1年に3mも伸びることがある。

 キリの成長が速いもう一つの理由は、葉の光合成能力が非常に高いことである。具体的な数値は示さないが、ほぼイネの葉と同じ能力をもつ。

 光合成能力は葉のタンパク質量に比例することが知られている。タンパク質を作るには窒素が必用であり、根の窒素吸収能力が高いほど、光合成能力が高くなることが知られている。キリは窒素を効率的に吸収することで、高い光合成速度を実現しているのである。
 根の窒素吸収能力を上げるには、同じ根の重さならば相対的に表面積の大きい細い根を作る必要がある。草木の根は細く、窒素吸収能力が高い。キリも草木と同じような根を作る。しかし、細い根は土壌中の微生物にアタックされやすく、キリはどうしても短命となる。

 キリは軽い幹と高い光合成能力とによって急速に成長し、早目に一生を終えるという生き方を選んだ。日本産の樹木では、ヤマグワ、ヌルデ、ヤナギなどが同じような戦略を持つ。


著者は植物生態生理学の権威とのこと・・・道理でこの本の薀蓄がアカデミックであることに納得。
更に、知識だけではなくて、植生に対する愛情が感じられるのは日光植物園園長という職業柄もあるのだろう♪

日本の樹木1

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