証言班目春樹6

<証言班目春樹6>
図書館で『証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?』という本を手にしたが・・・・
原子炉安全の学者でもある著者が、専門家の立場で班目委員長の証言と事故処理について語っています。


【証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?】
斑目

班目春樹, 岡本孝司著、新潮社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
事故当時、総理官邸内では何が起きていたのか。根幹となる原子力安全規制のどこに問題があったのか。そして、なし崩し的に進む再稼働は本当に安全なのかー。この国が戦後最大の危機を迎えた一週間、原子力安全委員長として官邸で事故対応に当たった班目春樹氏が語る「原発の真実」。
【目次】
第1章 未曾有の非常事態(三月一二日早朝、福島第一原発へ/ベント成功!? ほか)/第2章 官邸機能せず(「インチョウが来ました」/情報がない ほか)/第3章 霞が関の罠に嵌った原子力安全委員会(初の記者会見で/漏れ出した放射性物質量を初めて推計 ほか)/第4章 安全規制は何を誤ったのか?(無責任な緊急提言/世界に取り残された日本の安全規制 ほか)

<大使寸評>
原子炉安全の学者でもある著者が、専門家の立場で班目委員長の証言と事故処理について検証しています。
何につけ敗因を検証し、今後の改善に資することは有益なことだと思うのです。

班目春樹・元教授には、個人的に面識があったので、興味深いレポートです。

<図書館予約:(4/20予約、4/29受取)>

rakuten証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?


斑目先生が、お役所仕事の「不作為」について触れているので、紹介します。
この部分はお役所仕事のキモであるので、どうしても追加して紹介したいわけです。
p172~174
<世界に取り残された日本の安全規制>
 緊急提言を出された先生方の何人かは、この先送りを選択したまさに張本人です。「不作為」という言葉があります。やらなければならないことを先送りし、その結果、重大な事故を招くという事です。原子力安全の世界では先送りは許されないことだと思います。
 ある意味、先送りはやらないという決定よりも罪深い。やらないという決定の場合は、決断者が考え抜いて、全責任を負った上での決定です。先送りの場合は誰も責任を負いません。
 「原発が長期間停電したらどうなるか」「津波が襲来したらどうなるか」―。
 大先輩たちはそういう想像力が働かなかった。

 「停電はすぐに復旧できる」「そんな大きな津波は来ない」と決めつけて、それ以上考えようとはしなかったのです。

 世界のシビアアクシデント対策は、全く違う。電力会社が「長期間の停電はない」といくら主張しても、「予想外の事態は有りうる」と考えて予備の電源を備えておく。「原発が水浸しになることはない」と言い張っても、「万が一豪雨、洪水(日本なら津波)が来たらどうなるのか」と想定して、弱点を見つけ出し、必要な補強をする。
 どちらかでも、きちんとやっておけば、今回の悲劇はなかった可能性があります。

 ところが、実際には、軽水炉の安全性に関する指針類に関して、この20年間で改定されたものは、ほとんどありません。あったとしても細かな改訂であり、指針の基本となる大きな思想から考え直す作業をしたのは、2006年の耐震設計審査指針の改定だけです。

 これは、1995年の阪神・淡路大震災を受けての改訂でした。それまで、日本の地震対策は進んでいて、多少の地震が来ても国民の安全は守られるだろう、という「安全神話」が流布していました。

 海外で地震による大きな被害が出ても、専門家は「日本は大丈夫。被害が起きたのは対策が遅れているから」と根拠のない自信を見せていました。ところが、対策が施されているはずの日本の高速道路、港湾施設があっさりと壊れました。多数のビルが倒壊し、大きく損傷しました。そこで、原発も耐震性を抜本的に見なおそうということになりました。そして、地震学や地震工学の最新の知見を踏まえて、実に四半世紀ぶりの改訂がなされました。

 加えて世界では、フランスのルブレイエ原発が洪水の被害を受けたり、米国のデービス・ベッセ原発で原子炉圧力容器の蓋である上部ヘッドが腐食したまま運転されていたことが明らかになったりと、安全性向上の教訓とすべき大きな事象には事欠きませんでした。
 2001年9月11日の全米同時多発テロという大きな環境の変化もありました。これにより、米国などでは、原発の電源対策が強化されました。
 緊張感を持って原子力の規制に当っていれば、日本でも、原発の浸水対策や電源対策を強化すべきだ、と気づくチャンスは十分にあったはずなのです。

 さらに、1990年には、アメリカの原子力規制委員会(NRC)が、「リスク」という観点を重視した規制に大きく舵を切り、安全性の向上に役立てていますが、日本は未だに1980年代の遅れた規制のままです。


お役所仕事の慣性力とか、原子力規制庁への期待についても紹介します。
p177~179
<原子力安全委員会をぶっ壊す>
 原安委の委員長に就任してびっくりしたのは、事務局の考え方です。役所なので仕方がないのかもしれませんが、何事も全て前例の踏襲と、何もない事がいいことという文化がすっかり染みついていたのです。

 やり方を変えると、過去のやり方が間違っていたことになるので、おかしいと感じても、今までのやり方は絶対に変えたくないという、非常に強い慣性力がありました。原子力安全を確保するためには、常に、少しでも前に進み続けることが必用不可欠です。しかし、役所の組織というのは、その方向と逆行した思考を持っているということを思い知らされました。

(中略)
 その後、事務局の理解を得ながら、積極的に改善できるような組織に変えていくことは、本当に難しいことでした。

 その経験を踏まえて新設された原子力規制委員会にアドバイスさせていただくとすれば、例えば、原子力規制委員会の事務局(原子力規制庁)には、職員が出身元の省庁に容易には戻れないという「ノーリターンルール」が適用されると聞いています。これまでの国家公務員の慣習に反しているので骨抜きにされる可能性も高いとは思いますが、もし実施されれば、職員一人ひとりの将来の選択の幅は狭まります。

 国家公務員にとってこれはものすごいデメリットですが、それを逆手に取り、この職場だけは原子力の安全を大きく推進できるような改善提案が出来たかどうかで、給与や原子力規制庁内部での出世を評価する仕組みを作れば、原子力規制庁の全員が改善に積極的に取り組むようになると思います。



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