証言班目春樹5

<証言班目春樹5>
図書館で『証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?』という本を手にしたが・・・・
原子炉安全の学者でもある著者が、専門家の立場で班目委員長の証言と事故処理について語っています。


【証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?】
斑目

班目春樹, 岡本孝司著、新潮社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
事故当時、総理官邸内では何が起きていたのか。根幹となる原子力安全規制のどこに問題があったのか。そして、なし崩し的に進む再稼働は本当に安全なのかー。この国が戦後最大の危機を迎えた一週間、原子力安全委員長として官邸で事故対応に当たった班目春樹氏が語る「原発の真実」。
【目次】
第1章 未曾有の非常事態(三月一二日早朝、福島第一原発へ/ベント成功!? ほか)/第2章 官邸機能せず(「インチョウが来ました」/情報がない ほか)/第3章 霞が関の罠に嵌った原子力安全委員会(初の記者会見で/漏れ出した放射性物質量を初めて推計 ほか)/第4章 安全規制は何を誤ったのか?(無責任な緊急提言/世界に取り残された日本の安全規制 ほか)

<大使寸評>
原子炉安全の学者でもある著者が、専門家の立場で班目委員長の証言と事故処理について検証しています。
何につけ敗因を検証し、今後の改善に資することは有益なことだと思うのです。

班目春樹・元教授には、個人的に面識があったので、興味深いレポートです。

<図書館予約:(4/20予約、4/29受取)>

rakuten証言班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?


事故後の斑目さんの反省と提言です。
p195~197
<何を失敗したのか>
 今回の事故後に私も知ったのですが、この検討の時、SBO(全交流電源喪失)対策の規制化を見送った原安委の報告書は、原案作りの多くを電力会社に任せていたようです。長時間のSBOを考慮しておかなくていい理由についても、「作文」を電力会社に依頼していた。信じがたいことです。
 やはり「単一故障」だけ考えればいい、という呪縛が背後にあるのだと思います。だから、交流も直流も同時にだめになることは考えていなかった。

 機械や設備の設計では、「単一故障」という仮定をすることは必ずしも間違いではないと思います。そうしないと、逆に設計ができない。最初から、あれもこれも同時多発で壊れるという前提では、個々の部品の信頼性を高めようという発想にもならず、いい加減な設計になってしまいます。

 しかし、単一故障はあくまでも仮定です。別途、複数故障が起きたらどうするかを考えておかなくてはなりません。これがシビアアクシデント対策であり、IAEAの考え方で言う第4層です。

 (中略)
 安全委は事故の後、安全設計審査指針の見直しを始め、中間とりまとめを発表しています。その中では、電源の重要性を再認識し、代替交流電源を設置する事によって、SBOのリスクを低減すべきだとしました。ただし、これはあくまでも設計段階の見直しです。一方、保安院は2011年3月末に出した緊急安全対策で、緊急時の電源の確保についてすでに各原発に対応を求めています。

 しかし、本当に重要なことは、これまで甘かった第4層のシビアアクシデント対策ではないでしょうか。長時間にわたり交流電源が使えなくなるだけではなく、バッテリーも使えなくなるような事象を想定し、それでも、原子炉を冷やすにはどうしたらいいか、その対象を設けておくことが必用だと思います。
 
 新知見の反映という点では、米国で同時多発テロの後に導入が進んだテロ対策が、日本では検討されなかったことも大きな問題です。保安院は米国から、具体的に内容を知らされていたということです。しかし、それが原安委には全く報告されていなかった。その意味では連係も悪すぎると言わざるを得ません。

 このテロ対策は、これを記述した米国の指示文書の項目から「B.5.b」と呼ばれ、予備のバッテリーを増強することなどが定められています。もし日本で導入されていれば、津波が「B.5.b」でいうテロリストに当たりますから、運転員もそれなりの訓練をしていたはずで、電源喪失にもっとうまく対応できたかもしれません。

 日本ではテロは起きないという思い込み、あるいは平和ボケによって、保安院は思考停止に陥っていたのでしょうか。もし、日本で原発テロが起きたらどうやって原子炉を冷やせばよいのか、机上訓練でも何でも、ちょっとでも考えておけば良かった。たぶん、シナリオを考え出せばドンドン広がっていくので、事業者も規制側もそんな大変な作業は出来ないと考えたのでしょう。しかし、可能な限り様々なシナリオを検討し、考えておくという事が重要です。


著者の岡本さんは、「おわりに」で斑目さんの業績と提言をまとめています。
p213~216
<おわりに>より
 斑目先生は、機械工学の出身で、振動工学が専門です。東芝の原子力関係の部署で仕事をされた後、20代の若さで東京大学原子力工学科の教員となられました。その後は、振動工学の分野を中心に、長年にわたり原子力安全に関する工学的、社会学的な研究教育に携わってこられた。

 美浜発電所の蒸気発生器破断事故、もんじゅのナトリウム漏れ事故など国内の様々な事故に対する原因究明と対策、改善にも深く関わられました。原子力安全に関しては、おそらく日本でもトップの実力と知識をお持ちだと思います。

 事故の約1年前に、東京大学の教授を退職され、原子力安全委員会委員長に就任されました。本文中でも述べられている通り、この委員会は権限をほとんど持たない助言組織であったのですが、そういう委員会のあり方を含めて、原子力安全への改革に本格的に取り組まれた矢先に3.11に見舞われてしまいました。事故さえなければ、改革を成し遂げ、原子力安全委員長として、近年まれに見るような実績を残されたことでしょう。

 その観点から、福島第一原発事故についても、斑目先生を中心とする5人からなる原子力安全委員会に権限を持たして対応していればと思います。あの非常事態に、法律上の助言組織では限界がありました。

 1979年に米国で起こったスリーマイル島事故の時に、カーター大統領が、当時40代だった原子力規制委員会(NRC)のハロルド・デントン原子炉規制部長に指揮を任せ、対応にあたらせたような体制が組めればよかったと思います。逆に、政治家や官僚は、原子力安全委員会に責任を押し付けようとしているかのようでした。

 もし、事故直後に斑目先生にデントン氏の役目をさせたというなら、それは当然かもしれませんが、権限は持たせず、失敗の責任は押し付けるという不条理な状況に陥ってしまったようにしか見えませんでした。それが私の率直な感想です。

(中略)
 本書は、斑目先生が福島第一原発の事故にどう対応したのか、そもそも原子力安全委員長として安全規則はどうあるべきだとお考えになっていたのかなどを中心にお話を伺い、それをベースとして文章にまとめたものです。先生のお話からは、日本の行政組織や原子力安全行政、事業者など、大量の問題点が浮かび上がってきました。是非、今後の改善のための資料として参考にしていただきたいと思います。それは箇条書きでまとめると次のようになります。

1. 福島第一原子力発電所事故時の初動対応のまずさ
2. 20年遅れている日本の原子力安全管理
3. 事業者の思い込みや見込みの甘さ
4. 責任を取らない事が重要な政府の仕組み
5. 規制が事業者や規制自体の改善を妨げる方向に促す仕組みとなっていた
6. 先送りをする事が美徳の仕組み


この改善提言を見てみると・・・
なんかニッポンの政府や官僚制度の弱点が見えてくるわけです。

証言班目春樹1byドングリ
証言班目春樹2byドングリ
証言班目春樹3byドングリ
証言班目春樹4byドングリ

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック