朝日デジタルの書評から56

<朝日デジタルの書評から56>
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。
・・・・で、今回のお奨めです。

・奈良美智 YOSHITOMO NARA NO WAR!
・ビアズリー怪奇幻想名品集
・重層的地域としてのアジア

なお朝日新聞デジタルのサービスが向上したせいか、書評欄は掲載日に見られるようになっています。(たまに、遅れることもあるけど)
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奈良美智 YOSHITOMO NARA NO WAR!より
奈良

<大西若人(本社編集委員)>
 近代は、前のめり。とかく進歩や変化が求められる。表現者たちにも、「新作は?」「変化は?」といった期待が投げかけられる。進歩し変化することを意識しすぎて、自らを見失ってしまう人も、少なからずいたことだろう。

 その点、奈良美智(1959年生まれ)は変わらない。むろん立体を手がけたり、描写の深度が増したり、という変化はある。でもずっと、少し怒ったような目つきの子供を描き続けている。
 その奈良による、反戦、反体制をテーマにしたドローイング集だ。自身が選んだ初期から現在までの72点。とじていないため、ばらしてポスターのようにすることも、街で掲げることもできる。

 憂いを帯びた表情で反核の主張を記したプレートを持ったり、核戦争について伝える新聞を手にプンプンと怒ったり。毛布をかぶっておびえる子も、涙を流す子もいる。
 ノートの切れ端や封筒の裏に描かれたものも多く、こうした絵を日常の中で描いてきたことを思わせる。奈良は所収の一文で、元兵舎を転用した校舎で子供時代を過ごし、在日米軍用の放送で音楽を聴いたことを明かす。「戦争はまだ身近にあった」とも。

 奈良は、もちろん大人だ。でも、子供なのだろう。「けんかしないで仲良くしなさい、と教わるのに、なぜ大人はけんかするのか」と疑問に感じ、理不尽なことに「それはだめだよ」と言うような。そして変わらないことで、見る者の信頼を得ている。
 奈良が描く子供たちは、こう唱えているに違いない。

 現状を受け入れることが「現実的」なわけじゃない。現状に向き合い、変わらず大切なことがあるはずだと言うことが「現実的」なのだ。


奈良美智著、美術出版社、2014年刊

<商品説明>より
奈良美智のドローイングには、初期のものから現在まで実は反戦をうったえるものが非常に多いことをご存知だろうか?
今回はそれらの中から奈良自らが選んだ、反戦(NO WAR)をテーマにした作品集が緊急刊行される!

<読む前の大使寸評>
少し怒ったような目つきの子供というワンパターンで描き続けている。
怒りの訳はさまざまであろうが、わりと政治的であるところも・・・ええでぇ♪

<図書館予約:未>

Amazon奈良美智 YOSHITOMO NARA NO WAR!


ビアズリー怪奇幻想名品集より
ビアズリー

<原田マハ(作家)>
 オーブリー・ヴィンセント・ビアズリーは、1890年、ロンドンで保険会社の職員だった18歳のときに本格的に絵を描き始め、約7年後、肺結核のために没した。享年25歳。
 20代の若者にとって遠い存在であるはずの死は、ビアズリーの場合、頬ずりするほど近くにあった。

 ビアズリーはさまざまな芸術に影響を受け、恐るべき早さと的確さでそれを吸収した。執拗なほど緻密に描き込んだ画面には、ウィリアム・モリス、バーン=ジョーンズ、ホイッスラー、ラファエル前派、浮世絵、ロココなど、多種多様なアートの片鱗が見受けられる。しかしそのどれにも似てはおらず、すべてが独創的で「ビアズリー的」というほかはない完成度である。生き急ぐ画家の命がけの集中力が、かくも妖しく美しい花を咲かせたのだろうか。

 19世紀末はヨーロッパ各地に革新的な芸術家が誕生した時代であった。
 フランスでは印象派が登場し、イギリスではオスカー・ワイルドが戯曲『サロメ』を書き上げた。ワイルドに指名されてその挿絵を担当したとき、ビアズリーはわずか20歳。モノクロームの線描を際立たせた幻想的な絵は、見る者に少なからぬ衝撃を与えた。その後、雑誌「イエローブック」のアートディレクターに就任するも、ワイルドが男色の罪で収監されると関係を疑われ、失職した。

 本書は短い生を駆け抜けた画家の代表作を一気に展観できる好著である。ページを繰りながら、ビートルズもセックス・ピストルズもこの国で生まれたことを思い出した。彼らは皆、革命児であった。そしてまぎれもなくビアズリーの息子たちであったのだ。


オーブリー・ヴィンセント・ビアズリ, 富田章著、東京美術、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
【目次】
ビアズリーの生涯/1 初期作品と『アーサー王の死』/2 『サロメ』の衝撃/3 『イエロー・ブック』から『サヴォイ』へ/4 円熟の時代から終焉へ/ビアズリー芸術の特質

<大使寸評>
晩年のモノクローム線描の独創性、完成度は鬼気迫るものがあるが・・・・現代のイラストレーターを凌駕するような独創性に驚くわけです。

25歳で夭折していたのか・・・死を予感していたのだろうか。

<図書館予約:この書評をみつけるより、偶然半日早く図書館で借りたのです>

rakutenビアズリー怪奇幻想名品集



重層的地域としてのアジアより
アジア

<複雑に折り重なり、「共同体」へ:吉岡桂子(本社編集委員)>
 とかくアジアはややこしい。
 アジア太平洋、東アジア、東南アジア、北東アジア……。境界は幾重にも交錯する。さらに、それぞれを基盤に、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、東アジアサミット、東南アジア諸国連合(ASEAN)などさまざまな制度が存在する。環太平洋経済連携協定(TPP)といった通商の枠組みも錯綜する。域外とおぼしき超大国、米国も重要な「一員」としてパワーゲームに精を出す。

 そんなややこしいアジアを、著者は「重層的地域」と呼ぶ。互いをしばるルールがゆるく、共通のビジョンがないことの証左でもある。
 とはいえ、欧州ほど明確ではないにせよ、アジアでも安定と繁栄の実現には政策を含めた協調を得策とする考えでは一致している。決定的な争いを避け、全体の利益を図る経験も積んできた。大国でも一国の利益を目的に一方的に押し切れる状況にはない。つまり、一緒にいることに政治的な意思を共有する「地域」が複雑に折り重なり合いながらうまれている。

 こうした認識に立ち、本書はつづられている。ぼんやりとした輪郭ながらもしぶとく「地域共同体」へ向かいつつあるとみて、冷戦期から現在までの流れを子細に分析する。域内の大国、日中の不仲もあってASEANを軸に、日米中や豪州などが合従連衡や牽制しあいながら、「地域」のありようが固められていく力学にも詳しい。台頭する中国が新しい秩序作りを唱えはじめ、近隣への強硬な外交が目立つことを指摘、均衡のゆらぎも予感させている。

 長く圧倒的な経済力をもっていた日本は、アジアの一員という意識が微妙だった。「われわれ」として共存できる「地域」作りに向けて、どんな役割を果たせるのか。その覚悟を問う本書には、重要性が増す多国間外交を考えるヒントが詰まっている。



大庭三枝著、有斐閣、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
「地域」とは何か。地域主義とは、地域制度とは何か。アジアにおける「地域」構築の試みに、「アジアの中の日本」のあり方を問う。

<読む前の大使寸評>
吉岡桂子編集委員の選んだ本なので外れはないだろう・・・・ただ、ときどき専門的過ぎて、歯がたたないこともあるけど。

とにかく、吉岡委員の書評内容が、ええな~♪

<図書館予約:未>

rakuten重層的地域としてのアジア


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