日本型モノづくりの敗北

<日本型モノづくりの敗北>
20日の報道によれば、ジャパンディスプレイが19日に東証に株式上場したようです。
今までエルピーダやルネサスなど合弁会社の凋落を見てきたが・・・・
また、凝りもしないで液晶連合を図って、大丈夫?と心配になるわけです。
ジャパンディスプレイは、2年でスピード上場したわけだけど、韓国、台湾などアジアの競合相手をどこまで引き離せるのでしょうね?
なお、同水準の液晶を作れるのは、今のところシャープとLGディスプレイだけだそうです。

大使としてはとにかく、半導体の敗因を知りたいので「日本型モノづくりの敗北」という本を買ってきたわけです(笑)
そのあたりを読んでみましょう。

<低コストでつくる技術は低かった>p64~66より
 半導体を製造する技術には3段階の階層があることを、第2章で説明したが、この状況は、どの半導体のメーカーでも同じである。また、日本全体では高品質につくる技術は高く、低コストでつくる技術は低かった。
 これは、半導体に限らず、日本の電機産業、ものづくり産業全体にも言えることだろう。日本の電機産業は、特にテレビにおいて、ソニーのトリニトロンから始まってシャープの液晶テレビに至るまで、高画質および高品質につくる技術では世界を圧倒してきた。

 しかし、テレビがブラウン管から液晶などのデジタルテレビにパラダイムシフトした。薄型テレビは、液晶パネルなどモジュール化した部品を購入すれば比較的簡単に製造できるようになった。その結果、薄型テレビの付加価値は画質よりもコストに移行した。そして、重箱の隅をつつくように画質にこだわり続けた日本電機メーカーは、コスト競争で敗れていった。

 半導体メーカーにおいて低コストでつくる技術が劣っている状況は、すべての日本メーカーに共通する問題だった。しかし、技術および技術力に対する思想や哲学は半導体メーカーごとに大きく異なっていた。このことがエルピーダやルネサスなどの合弁会社を凋落させる原因の一つとなった。
 筆者は日立からエルピーダメモリに出向して、同じDRAMなのに、日立とNECはかくも違うのかと驚くことになった。逆に、NECの技術者もさぞかし驚いたことだろう。
 両者の技術力を論じる前に、まず、設立当初、エルピーダに対してどのような期待があったか、そのエルピーダはどのような組織構造だったか、設立から2年でなぜシェアを4分の1に低下させたのかを説明してみたい。

<2年間でシェアが激減した理由>p66~71より
 1999年12月に日立とNECの合併により、DRAM専業メーカーのエルピーダメモリが設立された。このとき、マスコミは、「強力な新技術開発力を持つ日立」と「強力な生産技術を持つNEC」が融合することにより、世界最強のDRAMメーカーが誕生すると書き、日本の半導体産業が復活するという期待感を煽った。

 NEC相模原にあるエルピーダの開発センターで開発された256メガビットのDRAMの工程フローで量産できたのは、8インチのNEC広島工場だけだった。ところが、8インチの日立シンガポール工場、および、新たに広島に建設した12インチ最新鋭工場では量産できなかった。なぜこのようなことになったのか?
 
 NEC相模原の開発センターで構築されたDRAM工程フローを、日立のデバイス開発センタでコピーエッセンシャリにより日立仕様のプロセスにつくり直し、このプロセスを日立の量産工場に移管する手段を取ることになった。しかし、これでは、2社統合のメリットなど何もない。それどころか、より煩雑で、より非効率的な作業が必要とされた。
 しかも、この煩雑な移管作業は、人、金、時間を浪費したうえに、途中で中止された。その理由は、日立仕様につくり直すことができないプロセスがあったからである。それは、DRAMの工程フローの約30%を占める洗浄工程だった。

 洗浄液は半導体メーカーごと、それどころか同じ半導体メーカーでも工場ごとに異なっている。各々の工場が数十年かけて、まるで秘伝のタレを醸成するかのごとく、異なる洗浄液の文化を築いていた。そして、全工程の30%を占める洗浄工程は、半導体の歩留まりに極めて大きく影響する。

 こうして、エルピーダのDRAM生産を当てにしてラインを空けて待っていた日立シンガポール工場も、梯子を外されて経営が悪化した。このことは、中島飛行機と三菱重工で同じ零戦を製造していたにもかかわらず、まるで互換性がなかったことに酷似している。


次にサムスン電子の強さの秘密を見てみましょう。

<装置を変えない、プロセスを変えない>p95より
 量産技術力に関しては、サムスン電子の方が圧倒的に優れているという。日本メーカーが歩留まりよりも高性能、高品質にこだわりがあるのに対して、サムスン電子には歩留まり向上への取組みが徹底しているという。たとえば、次世代のDRAMを開発する際、「日本は新技術を導入したがる」傾向があるのに対して、サムスン電子は、歩留まりを向上させる可能性がないなら新技術は導入しないという。そのため極力、「装置を変えない、工程フローを変えない、プロセスを変えない」ことに徹する。その結果、サムスン電子の既存装置を延命し使いこなす技術は極めて高度であるという。

<即断即決する極めて優秀な専務たち>p100~101より
 世界中に展開しているマーケッターたちが、現地の活きのいい情報を貪欲に集める。これを基に、各部門に配置されている飛び切り優秀な専務たちが即断即決で、経営判断を下す。
 サムスングループには、韓国中のエリートが殺到し、3段階もの選抜の末、2万人もの新入社員が入社する。入社後も息を抜くことができない。同期入社組の間には、猛烈な出世競争が待っている。40歳で部長になっていなければサムスンに残ることができない。つまりクビである。したがって、日々、猛烈に勉強を続けなければならない。
(中略)
 優秀な技術者がやがて管理職となって技術現場から離れ、技術がわからなくなってしまうという日本型組織は、まさに、このピーターの法則を地でいっている。
 サムスンではまったく逆である。猛烈な競争を勝ち残ったものだけが、部長になり、専務になる。職位が上になるほど、現場や最先端技術に明るい。このような飛び切り優秀な専務たちが、世界中から集められた情報を基に、即断即決するのである。
 情報収集力と即断即決する能力。これがサムスン電子の技術力を、現在のところ強力無比なものにしていると言えるだろう。


NEC凋落の原因を見てみましょう。ガラパゴスの原因と言ってもいいのだが。

<玉ねぎの皮を剥いていった最後に何が残る>p112~113より
 NECは、1980年代にPC-9800シリーズとして一世を風靡したPC事業を、2011年にレノボと統合した。翌2012年にはレノボ株をすべて売却したことから、PC事業も手放したと言える。
 先の図を見てわかるようにNECが巨額の赤字を計上したのは1998年度と2001年度の2度しかない。リーマン・ショックの起きた2008年度も62億円の赤字に踏みとどまり、その翌年は黒字に転化している。
 営業利益は平均して2%と低いが、大赤字を計上することもあまりない。これは、重電メーカーのような体質を彷彿とさせる。実際、NTTドコモなど官公庁からの仕事が多いために、このような安定した、しかし低調な営業利益率となっているのではないか。
 しかも、海外売上比率15%およびアジア売上比率5%が示すように、視線は日本国内だけに向いている。まったくのガラパゴス企業、それがNECの本質で、優れた技術を持っていながら、国内にしか目を向けなかったことが、凋落の原因と分析できる。

 NECを見ていると、玉ねぎの皮(しかもそれは世界一や日本一の皮)を、外から次々に剥いて捨てているように見える。
 DRAMやSOCはシリコンサイクルがあり、サイクルの底では赤字になる。PCはモジュール部品の組立てとなり、利益を出しにくい構造となった。だからNECはこれらを放出したのかもしれないが、放出後も営業利益率は低調のままである。玉ねぎの皮を剥くように、次第に規模だけが小さくなってしまっている。
 皮を剥ききった玉ねぎに、いったい何が残るというのだろうか?
 NECの2013年のアニュアル・レポートを見ると、主要事業を「パブリック」「エンタープライズ」「テレコムキャリア」「システムプラットフォーム」「その他」という五つのセグメントに分けている(ちなみにガラケーはその他に分類されている)。
 そして営業利益率5%、海外売上比率25%を目指すとしている。しかしこれは、かつて半導体やPCで1位をほしいままにしてきたNECが目指す数字としては、あまりにもさびしすぎる。 


インテルの判断ミスとサムスン電子の躍進のあたりが気になるわけです。

<パラダイムシフトで技術が無用になる>p188~189より
 それでは、半導体が使われる製品の例として、コンピュータ、携帯電話、テレビ、クルマの変遷を見てみたい。

 いまや、タブレット、スマホ、薄型テレビ、ハイブリッドカーが当たり前になっているが、20年前の1990年には、ノートPCは普及しておらず、携帯電話を持っている人もおらず、テレビはブラウン管で、クルマはガソリン車しかなかった。さらに20年前の1970年には、PCすらなかった。
 このようにコンピュータなどの製品には常にパラダイムシフトが生じる。それゆえ、半導体の世界に栄枯盛衰が起きるのである。つまり、それまで必用だった技術が無用になるからだ。
 コンピュータがメインフレームからPCにパラダイムシフトしたとき、25年保証の高品質DRAMをつくり続けた日本は、サムスン電子などの破壊的に安く大量生産する技術に駆逐された。そして、いま、スマホがPCを駆逐し始めた。
 その結果、世界一の微細加工技術と世界一の最先端トランジスタ技術を有しているにもかかわらず、PC用オウロセッサを基幹ビジネスにしているインテルが苦境に立つことになったのである。

<インテル史上最大のミスジャッジ>p199~200より
 アップルは、初代「iPhone」用プロセッサの生産委託をインテルに打診した。その際、アップルは、それに一定の金額を払うが、その金額以上はびた一文も出す意志がないと伝えたという(ジョブスの言いそうなことだ)。
 おそらくジョブスは、プロセッサ1個当り約10ドルとし、それ以上払わないと言ったのだろう。インテルは、これに基いて利益を出すにはどのくらい生産すればいいか、つまり「iPhone」がどのくらい売れるかを予想した。インテルは、まさか将来スマホの出荷台数がPCを超えるとは予測できなかった。したがって、1個約10ドルのプロセッサをつくっても利益は出ないと判断した。だからこそ、インテルCEOオッテリーニ氏は、アップルからの依頼を断ったのだろう。
 しかし、蓋を開けてみれば、インテルの予測したコストは間違っていた。なぜならば、「iPhone」の生産量はあらゆる人が考えていた量の100倍だったからだ!

<インテルの代わりにサムスン電子が受託>p200~201より
 ちなみに、インテルが断った「iPhone」用プロセッサは、韓国のサムスン電子が製造することになった。サムスン電子は、DRAMやNANDフラッシュメモリで世界シェア1位だが、メモリは好不況の波を受けやすいため、随分前からファンドリーに進出しようとしていたが、鳴かず飛ばずの状態が続いていた。
 そんな時に「iPhone」用プロセッサを受託し、ファンドリービジネスを開花させ、その利益を享受することになった。「iPhone」効果で、ファンドリー部門では、サムスン電子はこの3年間で10位から3位に大躍進した。
 さらに、「iPhone」用プロセッサの受託は、もっと大きな果実をもたらした。サムスン電子は、自他共に認める「ファーストフォロワー」、つまり模倣者である。その模倣者に、アップルは、スマホの付加価値の源泉ともいうべきプロセッサを製造委託したわけである。
 現在、サムスン電子のスマホ「GALAXY」は、出荷台数で「iPhone」を抜いて世界一となり、同社の最も大きな収益源となっている。「GALAXY」の開発・製造に、「iPhone」用プロセッサ製造で知り得たノウハウが活かされていることは間違いない。
 アップルとサムスン電子は、2012年以降、世界各国で、スマホに関する訴訟合戦を繰り広げている。これについては、アップルは墓穴を掘ったとしか言いようがない。


最後に日本企業停滞の原因とイノベーション創出のあたりを見てみましょう。

<経営者も技術者も海外に駐在せよ>p249~254より
 創造とは「2つまたはそれ以上の事実または理論を統合すること」であり、新製品とは、2つまたはそれ以上のすでに存在する製品や技術を組み合わせることであると述べた。  また、模倣は希少で複雑な戦略能力であり、イノベーション創出に不可欠な要素であること、歴史的に見て日本人は創造的模倣が得意な民族であることを説明した。
 さらに、イノベーションを起こすためには、新市場を創造する必要があり、そのためにはまず第一に「問題の発明」が必用であることを論じた。
 それでは、日本人が創造的模倣能力を遺憾なく発揮し、イノベーションを起こすために、「問題の発明」するには、どうしたらいいのだろうか?

 スイスにあるビジネススクールIMDの学長ドミニク・チュルパンは、日本の問題点として、以下の三つを指摘している。
1.日本企業は、すでに成長著しい新興諸国市場での展開に立ち遅れている。
2.元気な新興国企業が、日本にとって代わりつつある。
3.しかし、日本市場だけを見ていると、このことにはなかなか気付かない。

 特に3番目のポイントが重要だという。企業経営者は、知識の上では1や2を知っているはずである。
 しかし、チュルパン氏が強調しているように、「日本にいる日本人を中心に研究や開発が行われ、意思決定に関わる役員のほとんどすべてが日本人(特に中高年の男性)であるという体制の中では、グローバルな視点からの経営判断ができない」のである。

 また、明星大学の関教授は、中国に進出した日本企業1000社のうち、経営者が現地駐在しているケースはたったの5件だったと報告している。関教授は、ほぼ同じスケールで中国に進出している台湾企業が数年で飛躍的に発展する一方、日本企業が劣勢である根本的な原因がここにあると分析している。
(中略)
 重要なことは、このような技術を基にして、世界70億人の市場の中で、いかにして新市場を見つけ、爆発的に普及するイノベーションを起こすか、ということである。繰り返しになるが、そのためには、創造的模倣能力を発揮し、ビジネスをしたい国や地域に駐在して「問題の発明」を行うことが重要である。



【日本型モノづくりの敗北】
敗北

湯之上隆著、文藝春秋、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
「日本の技術力は高い」-。世界では言われているが、なぜ半導体・電機業界が壊滅したのか?日立の技術者から学界に転じた著者が、零戦やサムスン、インテル等を例にとりながら日本の問題点を抉るとともに復活のための処方箋を提示する。

<読む前の大使寸評>
アップルとサムスン電子の製品をボイコットしている大使であるが・・・
とにかく、日本の敗因を知りたいわけです。

rakuten日本型モノづくりの敗北


「技術者を盗む」というような大胆な発想が、孫子を産んだ大陸マインドであるが(笑)・・・
わりと視野が狭いのが日本の弱点なんでしょうね。

企業統合というわりと安易な方法で、この大陸マインドを蹴散らすことができるとは思えないけど、まあお手並み拝見というところでしょうか(弱気な大使でんがな)。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック