フラット化する世界

<フラット化する世界>
話題作であり、いつでも読めると思っていたが8年経ってしまった。
図書館で立ち読みしたら、ちょうど今ごろのことを書いているので借りた次第です。

この本で、フラット化の要因として10の力を挙げているが、その洞察は今でも色褪せていないようです。
個人的には、オフショアリングとか物流改革が興味深いのです。

アメリカ製品は買わない大使であっても、アマゾンやデルのクイック・レスポンスには驚くわけです。とにかく処置が早い♪
(デルの修理は、電話した翌日には部品を持ったサービスマンが来社し、直して帰っていったけど、さすがプロやで♪)

日本が今でも敵わないと思うものに、アメリカの兵站(Military Logistics)があるのだが・・・
アマゾンやデルにはその伝統が生きているのかもしれないですね。


<中国のWTO加盟>よりp198~205
 ASIMCOテクノロジーの会長兼CEO、ジャック・パーコウシキーが所有する北京の燃料ポンプ製作所で、アメリカで教育を受けた中国人工場長が、次のようなアフリカの諺を中国語に訳して工場に掲示した

アフリカで毎朝、シマウマが目を覚ます。
一番足の速いライオンよりも速く走らないと殺されることを、シマウマは知っている。
毎朝、ライオンが目を覚ます。
一番足の遅いシマウマに追いつけないと飢え死にすることを、ライオンは知っている。
ライオンであろうとシマウマであろうと変わりはない。
日が昇ったら、走りはじめたほうがいい。


 誰がライオンで誰がシマウマなのか、私にはわからないが、これだけはわかっている。中国がWTOに加盟して以来、その両者と世界各国は、どんどん速く走らなければならなくなっている。
 中国のWTO加盟が、共同作業の別の形―オフショアリングを強烈に加速させたからだ。数十年前から行われていたオフショアリングは、アウトソーシングとは違う。アウトソーシングは社内でやっている特定の限定的な機能―たとえば研究、コールセンター、会計処理―を抜き出して、他社にまったく同じ機能を果たさせる。
 オフショアリングは、それとは対照的で、オハイオ州カントンで操業している工場をそっくりそのまま中国の広東省に移してしまう。同じ製品を生産するが、賃金や税金はずっと安く、エネルギーは政府の得ているし、ヘルスケアのコストも低い。Y2Kがインドと世界にアウトソーシングの新段階をもたらしたのと同じように。中国のWTO加盟は中国政府と世界にオフショアリングの新段階をもたらした―より多くの企業が生産を海外に移し、それをグローバルなサプライチェーンに組み込んだ。

 1977年、中国の最高実力者、トウ小平は中国が資本主義の道を歩むように導いて、「金持ちになるのは素晴らしいことだ」とのちに宣言した。厳重に閉鎖されていた経済を中国が開放したとき、世界の工業国の企業は、そこが輸出先として素晴らしい新市場であることに着目した。
 西欧とアジアの製造業者は、一つの市場で下着が10億組売れるのを夢想した。それを目的に中国に店舗を開く海外企業もあった。しかし、中国は世界の貿易ルールに従う義務を負わなかったので、貿易や投資上のさまざまな障壁によって、西欧の企業が市場に浸透するのが制限された。また、故意にそれをやらない場合でも、官僚主義とビジネス文化の違いが同様の影響を及ぼした。
 他に先駆けて中国に投資した連中は、シャツとズボンばかりか下着まで失うはめになった。アメリカの西部開拓史時代を思わせる中国の法体系からして、失った金を取り戻せる見込みはほとんどなかった。
(中略)
 中国の指導者層の真の狙いは、次世代の下着や、飛行機の主翼を中国で設計することだ。これから10年は、そうした動きが続くだろう。つまり、30年後には、われわれは「中国に売る」から「中国で作る」へ、さらに「中国で設計する」、「中国で構想をたてる」ところまでいっているだろう。中国は、世界各国の製造業者と何も共同作業しない存在から、世界各国の製造業者とあらゆるものを低コスト・高品質でこしらえるきわめて有能な共同作業の相手へと変身しているはずだ。これによって中国は、政治的な不安定によってその過程が妨げられないかぎり、大きなフラット化要素であり続ける。



<UPSの新しいビジネス>よりp238~248
 この本のための調査で一番楽しいのは、世界で起きている思いもよらなかったようなありとあらゆる事柄を発見できることだ。巨大運送会社UPSの舞台裏を覗くぐらい意外性に満ちたおもしろいことはない。そう、やぼったい茶色の半ズボンをはいて不恰好な茶色のトラックを走らせている人たちのことだ。私が眠っているあいだに、古臭いUPSは世界をフラットにする大きな力になっていた。
 これを教えてくれたのは、またしても私のインド人師匠、インフォシスCEOのナンダン・ニレカニだった。「フェデックスとUPSは、あなたのいうフラット化の要因の一つに違いない。荷物を配達するだけではなく、ロジスティックもやっている」ある日、バンガロールから電話をかけてきたときに、ニレカニはそういった。どういう意味かはわからなかったが、当然、私はその意見を頭にファイルし、きちんと確かめようとメモした。数ヵ月後に中国へ行き、時差ぼけが直らないまま、真夜中をやり過ごそうとCNNインターナショナルを眺めていた。するとUPSのCFが流れ、UPSの新しいキャッチフレーズが聞こえた。「世界は一つになりました」

 ニレカニの言葉がよみがえった。彼はこれがいいたかったのだ!UPSは単に荷物を配達しているだけではない。さまざまな規模の企業のグローバルなサプライチェーンを同期化している。翌日、私はアトランタのUPS本社見学のアポイントをとった。さらに後日、ルイビル国際空港に隣接しているUPSワールドポート流通ハブを見学した。

 夜になるとそこはほとんどUPSの輸送機部隊に占領された状態になり、世界中から運ばれてきた貨物が仕分けされ、数時間後にはまた輸送機で運ばれてゆく。
 本社と流通ハブを見学して、われわれの父親の世代のUPSとはまったく違うと知った。たしかにUPSはA地点からB地点へ荷物を1日1350万個以上運ぶことにより、360億ドルの売上の大部分を稼いでいる。しかし、1907年にシアトルでメッセンジャー・サービスとして産声をあげた会社は、そうしたなんの変哲もない表面の裏側で、精力的なサプライチェーン・マネジャーに変身を遂げていた。
(中略)
 パパ・ジョンのピザを最近食べたことがあるだろうか?パパ・ジョンの配達トラックを見かけたら、運転手を派遣し、トマト、ピザ・ソース、タマネギといった食材仕入れの予定を組んでいるのが誰なのか、きいてみるといい。答えはUPSだ。UPSはいまや多数の企業に入り込んで、時間割どおりに配達できるようにロゴ付きの車の管理も引き受けている。パパ・ジョンの場合は、ピザ生地をベーカリーから直売店に毎日定時に届けるのもUPSの仕事になっている。
 テニスシューズを買うためにショッピングモールまで出かけるのが面倒?オンラインのナイキのホームページにアクセスして注文すればいい。ところが、この注文はじつはUPSを通じて処理される。UPSが管理するケンタッキーの倉庫で、UPSの社員がオンラインで注文された商品を出して、検品し、荷造りし、UPSが配達する。
(中略)
 1996年、UPSは「シンクロナイズド・コマーシャル・ソリューソンズ」と称する事業に乗り出した。それ以来、10億ドルをかけてグローバルなロジスティック・貨物取扱い業者25社を買収し、フラットな地球の1ケ所から別の1ケ所へのサプライチェーンすべてにサービスできるようにした。このビジネスが飛躍的に伸びたのは、2000年前後だった。UPSのエンジニアが企業内部に入りこむことからして、「インソーシング」という言葉はじつにうってつけだと思う。製造、梱包、集配プロセスを、そうしたエンジニアが分析して、設計もしくは再設計し、グローバルなサプライチェーン全体を管理する。そして、必用とあれば財務面でも援助し、未収金の管理や代金引換渡しも行う。現在ではかなりの数の会社が、自社製品に手も触れていない。工場、倉庫、消費者間の流れと、修理のための輸送まで、すべてをUPSが管理している。必用とあれば、消費者からの集金も引き受ける。UPSと取引先、そして取引先の顧客との親密な関わりと絶大な信用によって成り立つこうした密接な共同作業は、一種独特のフラット化要素である。
(中略)
 UPSの得意先に、縫合糸よりもずっと分解しやすい止血用接着剤を販売しているカナダのバイオテクノロジー企業があった。その企業は大手の病院を取引先として売上を伸ばしていたが、需要に応じるのに苦労していて、資金力もなく、西海岸と東海岸の両方に、流通センターを抱えていた。UPSはダラスの冷蔵流通センターを中心にその企業のシステムを再設計し、UPSキャピタルから融資して事業を拡大させた。その結果、在庫が減り、キャッスフローが改善され、カスタマーサービスも向上した―そして、UPSの確固たる得意先になった。
 花嫁用のベールや被り物のメーカーがモントリオールにあり、アメリカへの輸出を増やそうとしていた。エスキューはいう。「われわれが総合通関システムを設計したので、そのメーカーは商品を一個一個通関させる必要がなくなった。次に、われわれは商品をニューヨーク州北部の倉庫に入れ、インターネットで注文を取り、ラベルを貼って、代引きで消費者に届けた。代金はUPSキャピタルを通じて、メーカーに電子送金した。それによってメーカーは、新しい市場を開拓できたうえに、在庫も減らすことができた。



【フラット化する世界(上)】
フラット

トマス・L.フリ-ドマン、日本経済新聞出版社、2006年刊

<「BOOK」データベース>より
ピュリツァー賞を3度受賞したジャーナリストが、インド、中国、日本、欧米諸国の経営者や政治家らへの綿密な取材をもとに、今われわれの目前で起きている巨大な変化を鮮やかに活写する。全米で社会現象を引き起こした超ベストセラーが、アップデート&増補版からの翻訳で登場。

<読む前の大使寸評>
話題作であり、いつでも読めると思っていたが8年経ってしまった。
図書館で立ち読みしたら、ちょうど今ごろのことを書いているので借りた次第です。
 アメリカが経済的に対峙する国と言えばそれまでだが、とにかく中国と日本がよく出てくる本です。

rakutenフラット化する世界(上)

この本で、開拓者マインドとか多国籍企業経営者の奥義が垣間見えるように思うのだが・・・
企業内労働者とか消費者としての視点に欠けるようにも思うのです。

ところで、物流改革といえば、アマゾンと楽天との激戦がすごいようですね。
ネット通販といえばアマゾンと楽天しか使ったことがないのだが・・・
生き馬の目を抜くような業界に成長したようです。

2/15激戦ネット通販 ヤフー、出店料無料に/アマゾン、即日配達無料/楽天、地方商品拡大より
 パソコンなどを使い、インターネットで衣料品や食品などを買える「ネット通販」業者の競争が激しさを増している。楽天と米アマゾンが利用を伸ばしてきたが、追うヤフーが「誰でも無料で出店できる」という思い切った一手で追い上げを図る。一方で商品のチェック態勢の強化や、スマホをどう生かすかが課題だ。

 「誰でも無料で店を出せます」――。楽天と米アマゾンに差をつけられているヤフーが放った思い切った一手が、昨年10月に始めた「無料化」だ。運営する「ヤフーショッピング」に出店する業者は月2万5千円の出店料や、売り上げの最大6%の手数料などがすべて無料になった。店舗数は一気に約1万店増え、約2万9千店と、楽天の約4万2千店との差を縮めた。

 「売り手と商品が増えれば、利用が増え、広告と販売額が増える」(ヤフーの宮坂学社長)。個人の出店や地方の特産品などの取り扱いを増やそうと狙う。とはいえまだ「生みの苦しみ」の段階で、2013年10~12月期は無料化による収入減の影響で、営業利益が492億円と前年より1.5%減った。1997年の上場以来、初の減益だ。

 一方、2強はヤフーの攻勢に「影響はない」(楽天関係者)などと冷ややかだ。

 アマゾンは、小さい子どものいる家庭や学生を対象に無料で即日配送するなどサービス強化でリピーターを増やす戦略だ。「衣料品などを中心に伸びが続いている」(アマゾン広報)。

 楽天は、プロ野球の楽天球団の優勝セールなどで通販サイト「楽天市場」の会員数を昨年より1割増やした。ヤフーが力を入れる地方の物産品の品ぞろえ拡大も先んじて取り組む。三木谷浩史会長兼社長は14日の決算発表会見で、「ヤフーの出店無料化の影響はない。楽天には大きなブランドが出店してきている」と話した。むしろ目線は海外に向かっており、台湾、タイ、米国、ブラジルなどに進出している。



シェールガス採掘をテコに、製造業復活との噂のあるアメリカはバカにできないが・・・目指す方向が日本とはビミョーに違うようです。
たぶん、それは生き方、価値観の違いなんでしょうね。
「三方良し」などという経済的な価値観は、世界に誇る価値観なんだけど、アングロサクソンの勢いに敵わないのが歯がゆいかぎりです。

フラット化によって、ものごと全てがスピードアップし、均一化してきたが・・・・
それだからこそ、ガラパゴスのような日本の拘りがクローズアップされるようです♪

移動スーパー・とくし丸など、小規模ではあるが、物流改革なんでしょうね。
アメリカ製造業の最新の状況がブラック企業の問題は根は深いで見られます。


ちょっと古いけど、13年4月時点での大型物流拠点のニュースです。

楽天、アマゾン…ネット通販各社の大型物流施設建設ラッシュで物流バブル?より
 日本国内のEコマース(電子商取引)市場は2011年で約8兆5000億円(経済産業省調べ)と、この5年間でほぼ倍増した。ちなみに、同時期の米国の同市場は1938億ドル(約16兆円/米商務省調べ)となっている。

 このように、すでに日本は米国の半分規模となる巨大な市場を形成しているのだ。さらに人口対比換算をして国民一人当たりのEコマース市場を見ると、日本は米国の1.25倍に達する。

 そうした動きと連動するように、このところ首都圏を中心に、ネット通販事業向けの最新鋭大型物流施設が続々と開業している。その背景には、アマゾンの即日配送に対する各社の強い危機感がある。たとえば楽天は、日本の人口の約7割をカバーするエリアに即日配送するため、100億円規模の投資を発表している。

 一方、三井不動産も物流事業に初参入する。今後6年間で3大都市圏主体に約20棟の物流施設を建設し、即日配送も可能な多様なネット通販業者のニーズに対応するという。さらに三菱地所や大和ハウス工業などの異業種大手も、相次いでこの物流市場へ参入しだしてきた。

 このような、いわば「物流バブル」とも言える現象は、物流系REIT(リート)相場が過熱してこの業界に資金がふんだんに流れ込んでくるなど、実需以外の要因も指摘されている。

 それはともかくとして、こうしたハイテク物流施設の急増は、ネット通販の利便性と市場拡大をさらに促進することに変わりはない。従って有店舗小売業はそうした面からも、「わざわざ店に来てもらう」魅力と武器の明確化と強化が求められよう。

 一方、前述のように増加、進化する「サードパーティ・ロジスティックス」に勝る究極の手法は、独自の自社物流方式の確立だろう。言うまでもなくそのベンチマーキング企業は、ネット通販ではアマゾン、そして有店舗では「しまむら」だ。

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