科学としての歴史学

<科学としての歴史学>
気まぐれな大使の関心は言語、中国あたりにあるわけで・・・・
図書館でジャレド ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄(下)」という時宜を得た本を借りたのです。
評判の名著ということなので、とつとつと読んでみました♪

科学としての歴史学について、この本のエピローグから紹介します。

<科学としての歴史学>よりp325~328
 このように、歴者学者が人間社会の歴史の変遷のなかから因果関係を引き出すのは困難だといえる。しかし、この困難は、天文学者、気候学者、進化生物学者、地質学者、そして古生物学者が因果関係を追求するうえで遭遇する困難と大きく異なるものではない。程度の差こそあれ、これらは実験的に操作して再現試験をおこなうことのできない分野であり、構成要素が非常に多岐にわたる複雑な分野である。個々がユニークであるため、普遍的な法則を導くことができない分野である。どのような創発的属性が登場するかや、将来何が起こるかを予測するのがむずかしい分野でもある。

 しかし歴史の研究においても、短い時間の小規模な出来事が何百万回も起こった結果、もたらされる独特な特徴が均一化するような長い時間的尺度や空間的尺度のなかでの予測は充分可能である。これは他の歴史科学においても同じである。私は、これから生まれる子供1000人の性別の割合は予測できても、自分の二人の子供の性別は予測できなかった。それと同じように、歴史学者も、1万3000年にわたってそれぞれ独自に発展してきたアメリカ大陸とユーラシア大陸の社会が衝突した結果を必然的なものにした要因を知ることはできても、1960年の合衆国大統領選の結果は予測できない。1960年10月、ケネディとニクソンのどちらがテレビ討論会で何を言ったかによって、ケネディではなくニクソンが勝利することはあったあかもしれない。しかし、ヨーロッパ人によるアメリカ先住民の征服が、誰が何をいったかによってさまたげられることはなかった。

 歴史学は、ほかの歴史科学から何を得ることができるのだろうか。研究手法として有用なのは、データを比較検討する方法であり、大自然の実験から学ぶ方法である。銀河の生成過程を研究する天文学者も、人間の歴史を研究する歴史学者も、どちらも研究対象を実験室で操作することはできない。しかし、大自然の実験の結果を調べ、原因因子と推定される要因を持っているものと、持っていないものを比較検討することはできる。たとえば、疫学者は、実験的に人間に塩を大量に摂取させることおはできない。しかし、すでに塩の摂取量が異なる人びとを比較することはできる。また、文化人類学者は、異なる人間集団に異なる資源を数世紀にわたってあたえつづけ、資源が人間集団におよぼす影響を実験的に調べることはできない。しかし、異なる資源に恵まれたポリネシア域の島々の近年の人口推移を比較することで、資源のあるなしが人間集団におよぼす長期的影響を研究することはできる。

 人類社会の歴史を研究する人びとが比較研究できるのは、五大陸における大自然の実験だけではない。この種の研究は、比較的長期間にわたって孤立状態を保ち、社会を発達させてきた面積の大きな島々(たとえば、日本、マダガスカル、ハイチとドミニカ、ニューギニア、ハワイなど)についても行える。もっと小さな何百もの島々にある社会や、各大陸の地域社会についても可能である。
(中略)

 人類社会の歴史を理解することは、歴史がさほど意味を持たず、個体差の少ない科学分野における問題を理解するよりもはるかにむずかしいことだといえる。それでも、すでにいくつかの分野では、歴史の問題を分析するのに有用な方法論が考えだされている。その結果、恐竜の歴史、星雲の歴史、そして氷河の歴史は、人文的な研究対象としてではなく科学的な研究対象に属する分野として一般的に認められている。しkも、われわれは人間自身に目を向けることによって、恐竜についてよりも、人類についての洞察を深めることができる。したがって私は、人間科学としての歴史研究が恐竜研究と同じくらい科学的におこなわれるだろうと楽観視している。この研究は、何が現代世界を形作り、何が未来を形作るかを教えてくれるという有益な成果を、われわれの社会をもたらしてくれることだろう。




【銃・病原菌・鉄(下)】
下巻

ジャレド ダイアモンド著、草思社、2010年刊

<内容紹介>より
なぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか。分子生物学から言語学に至るまでの最新の知見を編み上げて人類史の壮大な謎に挑む。ピュリッツァー賞受賞作。朝日新聞・ゼロ年代の50冊・2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位に選定された名著。

<読む前の大使寸評>
上下巻構成の名著であるが、文字、中国にふれている下巻から読もうと思ったわけです。
amazon銃・病原菌・鉄(下)


著者は医学部の教授であると同時に進化生物学者でもあるそうで・・・
やや読みにくいが含蓄のある内容は、著者の経歴から納得するわけです。
なお、この本の紹介として、以下、取り上げました
文字をつくった人と借りた人
技術の伝播
なぜ中国は眠れる獅子だったのか


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