漢字がつくった東アジア

<漢字がつくった東アジア>
この本の冒頭あたりで著者の歴史認識が披露されています。
この歴史認識が、書家の歴史認識とタカをくくっていた大使をまずたしなめるわけで・・・・
このあと、居ずまいを正してこの本を読み進めた次第です(笑)


 第二次大戦のときに、日本は「アジアはひとつ」「八紘一宇」といったスローガンを掲げて、大陸や半島に侵攻し、植民地化していったことは周知のとおりです。そうしたスローガンの背景には、「アジアの盟主は日本である」という視点がありました。
 しかし、アジアの盟主は日本ではありません。あくまでも盟主は中国です。ただし、この場合の中国という意味は、中華人民共和国という具体的な国家を指すのではなく、歴史的な概念としての中華、正確には漢語・漢字文明です。その中華に照らし出されることによって、周辺の朝鮮半島や弓なりの列島・孤島(=日本)が誕生しました。その歴史上の延長上に現在が繋がっています。
 つまり中国を、「南北朝鮮、ベトナム、日本、台湾、琉球、沿海州を含めた東アジアの中央部」と捉えるわけです。このような視点から歴史を考えることは、決して日本にとって屈辱的なことではなく、むしろ東アジアを、ひいては世界をありのままに見ることに繋がります。
 このことを強調する理由は、北朝鮮をめぐる問題で異様とも思える状況が日本で起こっているからです。もしかすると将来に遺恨を残しかねない問題を孕んでいます。だからこそ、きっちり東アジア問題について考えてみる必要があると思います。
 ただ、われわれのような庶民レベルの人間が国家のやり方について論評しても、あまり意味がありません。それよりはむしろ、日本人と北朝鮮の人々がどうすれば仲良く平和に交流することがでいるのかを考えるほうが、第一義だと思います。
 そのときに大切なのは歴史を考える視点であり、「東アジアは中国を中心とする非常に曖昧なグラディエーションで繋がる地方であり、中国といわれている国も複数の国の寄り集まってできている」という視点をもつことです。(p15~16)

 なるほど、中国とは地政学的にも、言語においてもEUのような地方なのかも知れませんね。
 北朝鮮に関する著者の認識はナイーブに過ぎるけど、北朝鮮を中国と読み替えるならば、まったくおっしゃるとおりであり・・・全面的に著者の論旨に賛同いたします。
なお、大使としては「奢る中国共産党も久しからず」という認識を追加したいと思うわけです。

次に現代の中国語が明解に述べられています。

 よくいわれる話ですが、北京語と広東語の違いは、イタリア語とスペイン語の違いと同じ、もしくはそれ以上あります。それほどの差がある言語が漢字で結びつけられているのです。それは日本にも朝鮮半島にも当てはまりますし、越南もかつてはそうでした。
 このことを逆から考えてみます。もし中国が漢字を廃止すればどうなるでしょうか。完全にヨーロッパと同様の事態に陥ります。ヨーロッパは、スペイン、ポルトガルがあり、イタリア、フランスがあり、ドイツがあり、スイスがあるというように小さく分かれていきます。分かれる過程で当然戦争、内乱が起きますから、結局、中国は漢字を廃止できずに、現在のような簡体字を用いることでなんとか辻褄を合わせているのです。
 漢字語のみの言語というのは非常に厄介です。1万字ぐらい知らないと、本当の意味で読み書きできないからです。日本語の場合には、やさしい文であれば漢字を使わずに平仮名だけで済ますこともできます。ところが、中国には平仮名がないから全部漢字を使わざるをえない。1万字もの漢字を覚えるのは大変なので、どうしても無文字の民が多くなります。これを文字の民にするために中国政府が採った政策は、使用する文字の数を3000~4000ぐらいに抑え、かつ簡体字で書き方もできるだけやさしくするというものでした。

 ここまでの話を少し整理しておきましょう。一言で説明すれば、「中国語というのは漢字語で、中国語という言葉はない」ということです。その実態は、北京語であり、上海語であり、福建語であり、広東語であり、客家語であるわけです。そういう言葉が中国語と総称されるのは、要するに漢字語としてひとつに括られるからです。そういう言葉があったのではなく、中国語(漢字語)になったということです。(p22~23)



【漢字がつくった東アジア】
アジア

石川九楊著、筑摩書房、2007年刊

<「BOOK」データベースより>
始皇帝が文字を統一したとき、漢字が東アジアの歴史を照らし始め、漢字文明圏が決定づけられる。やがて大陸(中国)の変動に呼応する形で、平仮名(日本)、ハングル(朝鮮)、チューノム(越南)が生まれ、それぞれの文化の枠組みが形成されてゆく。その延長上に現代を位置づけなおすとき、二十一世紀が目指すべき方向が見えてくる…。鬼才の書家が巨視的な観点から歴史をとらえなおし、国民国家を所与とする世界観を超え、読者を精神の高みへと導く知的興奮に満ちた一冊。

<読む前の大使寸評>
漢字の生い立ち、漢字文化圏に関する本には、つい手が出てしまうのです。

Amazon漢字がつくった東アジア


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