「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#9

<最終レポート>
わりと拘りをもって読書レポートを続けて、これで9回となりましたが、今回をもって最終といたします。
この本では、古今の書物でのアホ・バカ出現事例、多数の表現別分布図が載っていて、まさに論文としての体裁も採られていますが、イラチな大使はかなりの部分をとばして読破しました。さらに興味のある方は、ご自分でこの本を買ってアホ・バカの世界に踏み込まれてはいかがかと、思うのです。


<あとがき>p488~464
 江戸からの文化的な圧力を期待するためには、江戸が力を持ちはじめた18世紀後半以降の時代を想定しなければなるまい。江戸後期にいたって、東西の言葉がぶつかり合い、やがて東西に対立するようになった。東西対立の方言分布の完成は、実はきわめて新しいのである。
 もうひとつはアクセントについての素朴な思いである。
 日本には大きく分けてふたつのアクセント体系がある。近畿を中心とする京阪式アクセントと、中部以東および中国以西の東京式アクセントである。つまり近畿の京阪式アクセントは、東西の東京式アクセントにはさまれている。近畿の中でも古い語彙の残りやすい奈良県の十津川や、京都府の丹後半島などは東京式アクセントである。
 つまり、おおむね「アホ」の地域が京阪式アクセントで、「バカ」の地域が東京式アクセント。そして「バカ」は古く、「アホ」は新しい。アクセントにも、周圏論の適用が試みられて然るべきだろう。
 まず日本全域を東京式アクセントが覆っていた。やがて新たに京阪式アクセントが発生し、近畿全域を支配するようになった。アクセントの変化には、語彙の交代よりもはるかに時間がかかっただろうから、平安ごろにはすでに現在の京阪式アクセントに近いものが京に生まれていなければならなかった。
 方言周圏論は、語彙ばかりでなく、アクセントにも有効性を持つものと思われてならない。
(中略)
 『探偵!ナイトスクープ』は、その後も順調に人気を伸ばし続けた。92年の秋からはネット局も大幅に増え、現在では、首都圏を含む全国26曲で放送されている。
 三つの賞の中でとりわけ印象深いのは、ジョーズのディレクター諸君と一緒にいただいたATP賞グランプリである。受賞直後、舞台の袖で審査委員長・藤井潔氏から不意に声をかけられた。長く『NHK特集』の編集長役を務めてこられた方である。
 「おめでとう。『探偵!ナイトスクープ』という番組からは、テレビ草創期のころ、私たちテレビマンが持っていた、あの熱気が伝わってくるのです。グランプリを受賞して本当に良かった」
 そのお言葉に、スタッフと互いに争い合って、ゼロから番組を作り上げていった日々の情景を一瞬のうちに思い出して、私は万感胸に迫った。
 (中略)
 私の密かに誇りとするところは、このアホ・バカを扱ったテレビ番組企画が、何度にもわたって放送され続けたにもかかわらず、いっさいの個人・団体から、たった一件の抗議やお叱りっすら受けなかったことである。番組の真面目な姿勢が評価されたということばかりでなく、それ以上に、人権意識を高めつつある日本人の心と精神の成熟の賜物であるとも考えたい。
 アホ・バカ方言の調査にひと区切りをつけた今、私の夢のひとつは、遠くない将来、流行り廃りの多かった言葉についての第二次全国方言調査を資料に、日本の話しことばの歴史を再構築する「大」娯楽ドキュメンタッリーを作ることである。


あとさきになりますが・・・・
以下に、この本の目次を示します。
なお、最初に提示した「全国アホ・バカ分布図」は表紙カバーの裏に印刷されているという、なかなか粋な計らいが、いけてるで♪


「全国アホ・バカ分布考」目次
第1章
・「アホ」と「バカ」の境界線
・全国アホ・バカ分布図の完成に向けて

第2章
・「バカ」は古く「アホ」はいちばん新しい
・恐るべき多重の同心円
・古典に潜むアホ・バカ表現

第3章
・「フリムン」は琉球の愛のことば
・「ホンジナシ」は、本地忘れず

第4章
・「アヤカリ」たいほどの果報者
・「ハンカクサイ」は船に乗った
・言葉遊びの玉手箱
・分布図が語る「話しことば」の変遷史

第5章
・「バカ」は「バカ」のみにて「バカ」にあらず
・新村出と柳田國男の語源論争
・集圏分布の成立
・学会で発表する

第6章
・「アホンダラ」と近世上方
・江戸っ子の「バカ」と「ベラボウ」
・「アホウ」と「バカ」の一騎打ち

第7章
・君見ずや「バカ」の宅
・「アハウ」の謎
・「阿呆」と「馬家」の来た道

エピローグ
・方言と民俗のゆくえ
・あとがき
・アホ・バカ方言全国語彙一覧
・解説:俵万智
・文庫化を祝して:岡部まり



【全国アホ・バカ分布考】
アホ
松本修著、新潮社、1996年刊

<「BOOK」データベースより>
大阪はアホ。東京はバカ。境界線はどこ?人気TV番組に寄せられた小さな疑問が全ての発端だった。調査を経るうち、境界という問題を越え、全国のアホ・バカ表現の分布調査という壮大な試みへと発展。各市町村へのローラー作戦、古辞書類の渉猟、そして思索。ホンズナス、ホウケ、ダラ、ダボ…。それらの分布は一体何を意味するのか。知的興奮に満ちた傑作ノンフィクション。

<大使寸評>
番組に依頼した人の着眼がよかったのか、それを採用し追及させた松本修プロデューサーが偉かったのか♪

Amazon全国アホ・バカ分布考
ノンフィクション100選★全国アホ・バカ分布考|松本修


全国アホ・バカ分布図
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