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zoom RSS 『ま、いっか』3

<<   作成日時 : 2017/08/10 06:47   >>

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<『ま、いっか』3>
図書館で『ま、いいか』という本を、手にしたのです。
浅田さんのエッセイ集はこれまで数冊読んできたが…
この本はタイトルにも表れているように気楽な感じの編集のようで、それもいいかも♪



【ま、いっか】
ま、いいか

浅田次郎著、集英社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
自分のために笑え。人のために笑え。いつも背筋を伸ばし、鉄の心を忘れるな。粋に、一途に、ゆうるりと。浅田次郎が贈る、軽妙洒脱な生き方指南。

<読む前の大使寸評>
浅田さんのエッセイ集はこれまで数冊読んできたが…
この本はタイトルにも表れているように気楽な感じの編集のようで、それもいいかも♪

rakutenま、いっか


小説家の読書熱を、見てみましょう。
p135〜138
<読書をする猿> 
 読むことが好きで書くようになった。
 小説家を志した動機といえばそれに尽きる。読書熱が昂じて、とうとう書物を作ってしまったわけである。食いしん坊が厨房に立ったといえば、いっそうわかりやすいであろう。

 つまり私の仕事の母は読書であるから、原稿に追われて自由な読書時間が削られると、不幸と不孝を同時に感ずる。思うさま本が読めなければ苛立つ。そんなとき読みさしのページを開けば、まるで赤ん坊が乳を与えられたようにおとなしくなるのだから、まことに単純である。好きな形容ではないが、たぶんこういう人間を「活字中毒者」というのであろう。一見多趣味のようでありながら、実は読み書き以外にはほとんど趣味はなく、生活から読み書きを奪われでもしたら、とたんに死ぬほかはないと思われる。

 いや、小説家になった動機からすると、書けなくなっても生きている。だが読めなくなったらまちがいなく死ぬ。
 そんなわけであるから、今節一種の社会問題となっている「読書ばなれ」など、私にはてんで理解できない。読むか読まぬかではなく、読まずに生きていられることが信じられないのである。

 さて、そうした私にとっての至福は、何ものにも妨げられずに読書をする日々である。読みつくせぬくらいの書物をどっさり抱えて山間の温泉場にこもる。

 テレビの旅番組ではないのだから、食事や部屋はどうでもいい。あたりに名所などないほうがいい。むろん連れなどはもってのほかである。天然の景色と、湯と、書物があればいい。もし三日間の完全な自由が与えられたなら、私は今この瞬間からでも書物を抱えて旅に出る。

 ここまでお読みになった方の多くは、小説家という職業の特殊性を感じたのではあるまいか。貴重な余暇と、非日常の旅と、今や反社会的娯楽になってしまった読書を、むりやり結びつけているように感じた方もいるはずである。

 しかしよく考えてみれば、私たちは貴重なはずの余暇をいつの間に過ぎたかわからぬくらいに空費しており、非日常であるべき旅に日常をひきずっており、反社会的娯楽もなにも、子供のころに胸ときめかせてページを操った読書の快楽を忘れてしまった。あんがい気付かざるそうした過ちを一挙に快復する方法としては、すこぶる有効だと私は思うのだが、いかがなものであろう。
(中略)

 さらには、日ごろほとんど無縁の自然と親しんだ結果、活力が充満する。森林浴だのマイナスイオンだの、そういう身もフタもない分析はやめよう。人間の正体は猿であるから、コンクリートの猿山に住むのは本来の姿ではなく、山に住むべきなのである。

 しかし猿は読書をしない。つまり人間とは、読書をする猿なのである。いまいましい群からひとり離れて、湯に浸かり、自然に抱かれ、読書三昧の日々を過ごすというのは、私たちの本質である動物性を快復しつつ、人間的知性を増進させるという、すばらしく理に適った行動と言える。

 かくしてこの旅から帰ると、あらふしぎ、何となく大人になっている。
 ここで最大の問題といえば、多忙な生活の中で果してこんなことが可能かどうか、という現実的な制約であろう。しかし、これは私の憲法なのだが、あらゆる行為というものはできるかできぬかではなく、やるかやらぬかなのである。

 猿は行為をなすにあたって、「できるかできぬか」と本能的に判断する。しかし人間は「やるかやらぬか」という意思の判断を下す。すなわち前者が野生であり後者が知性である。この知性の獲得によって、猿は二本足で立ち上がり、人間となった。
 では、原稿も書きおえたことだし、これより書物を山と抱えて旅立つ。ごきげんよう。


『ま、いっか』1:日本語の未来
『ま、いっか』2:ま、いっか

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