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zoom RSS 『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』3

<<   作成日時 : 2017/08/08 06:31   >>

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<『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』3>
図書館で『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』という本を、手にしたのです。
おお 浅田さんのエッセイ集ではないか♪
生粋の江戸っ子で嘘つきの浅田さんであるが…半分ほど関西人の大使が惹かれるのだから面白いものである。



【君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい】
浅田

浅田次郎著、文藝春秋、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
言葉の魔術に、酔いしれる。生き別れた母を想い、馬と戯れ、小説の神様と向き合う。人気作家の「心わしづかみ」エッセイ集。

<読む前の大使寸評>
生粋の江戸っ子で嘘つきの浅田さんであるが…半分ほど関西人の大使が惹かれるのだから面白いものである。

amazon君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい


「英雄の足跡」の続きを、見てみましょう。
p260〜264
<英雄の足跡> 
 明治10年2月15日、薩摩郡1万3千の閲兵をおえた西郷隆盛は、熊本鎮台司令長官谷干城少将あてに簡を送った。

 これから自分は政府に尋問するために軍勢を率いて上京するが、熊本鎮台の将兵は整列してこれを迎え指揮を受けよ、というほどの意味である。末尾の「此段及御照会候也」には、「いちおう伝えておくぞ」というような、いささか脅迫めいたニュアンスを読み取ることができよう。
 谷干城と鎮台兵にとっては、実に屈辱的な通知であったにちがいない。薩軍のこの行動に対して、ただちに政府は「賊徒追討令」を発した。

 「決起趣意書」に対する「追討令」であるが、「日本」と「薩摩」が宣戦布告書をとりかわしたと言ったほうが、実際のイメージに近いような気がする。

 ともあれ、こうして7ヶ月余にわたる最後の内戦は始まった。
 私が最もふしぎに思うのは、北部を除く九州のほぼ全域にまで拡大された戦線が薩軍の敗北とともに後退し、ついには実に都合よく鹿児島城下を一望する城山にまとめられたという事実である。

 西郷隆盛は英雄である。おそらく日本史上の偉人中、「英雄」の名に最もふさわしい人物が彼であると言い切ったところで、さほど異論はあるまい。当時すでに多くの国民からそのように考えられていた西郷の死場所は、どうしても城山でなければならなかった。

 小説ならば結末は必ずそうなる。しかし事実がそうなったのは摩訶不思議というほかはない。西郷には見えざる神が加担していたのであろうか。もしもそうでないとするなら、彼我の人間たちがそう希んだ結果であろう。

 ともあれ何らかの奇蹟の末に、城山という大団円の舞台にはわずか372名の薩軍が拠り、それを5万余の政府軍が包囲したのである。
 明治10年9月24日午前4時、政府軍の総攻撃が始まると同時に西郷は城山の洞窟を出た。そして40余名の部下とともに岩崎谷を駆け下った。

 古地図によると、城山に深く切れこんだ岩崎谷には武家屋敷が建てこんでいる。坂道を下りきったあたりにある島津応吉邸のあたりで、西郷は腹と股に被弾した。

 ここで西郷が「晋どん、もうよかろ」と言い、別府晋介が「先生、ごめんやったもんせ」と答えて首を落としたのは有名な話である。事実かどうかはともかく、この二人の最後のやりとりがなければ幕は下りない。西南戦争という壮大なミステリーは、この謎めいたセリフを闇に響かせて突然終るのである。

 いったい何が「もうよかろ」なのか、何が「ごめんやったもんせ」なのか、考えれば考えるほど私にはわからなくなる。その後の歴史から帰納すれば、西郷が武士の時代を終わらせ近代を開闢したこの内戦を、みずから演出しみずから熱演したとしか思えぬからである。
 はたちの私はこの二人のやりとりを、命を捨てる覚悟と介錯の礼であるとしか考えなかった。
 40歳のころの私は、私学校党の若者たちに担ぎ出された西郷と、その非を今さら詫びる別府の声に聞いた。
 しかし50もなかばを過ぎれば、やはりそれだけとは思えぬ。西郷の年齢を追い越してしまったころから考えこむようになったが、いまだに答えは見つからない。

 英雄たる者の条件は、みずから英雄たらんと欲せざることであろう。
 つまり英雄たらんとする性根そのものが、すでに英雄的ではない。私がさきに「西郷隆盛は英雄である」と言い切った理由は、彼がその条件を完全に満たしていると考えるからである。51年の人生にはふしぎなほど「私」が感じられない。

 ましてやけっして英雄などと呼ばれたくなかった西郷が、おそらく存命中の当時からそうした印象を国民に持たれていたのは、いったいどうしたわけなのだろうか。
 城山の頂きに建つホテルの露天風呂から桜島の噴煙を眺めながら、あるいは西南戦争の戦跡をたどる道すがら、私はそのことばかりを考えていた。


『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』1:英雄の足跡
『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』2:浅田さんの読書遍歴

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