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zoom RSS 『五郎治殿御始末』

<<   作成日時 : 2017/07/12 23:31   >>

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<『五郎治殿御始末』>
図書館で『五郎治殿御始末』という本を、手にしたのです。
ぱらぱとめくると・・・明治維新時の侍たちの苦悩にからむ短篇六篇とのことで、なかなか魅力的なラインナップではないか♪


【五郎治殿御始末】
浅田

浅田次郎著、中央公論新社、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
男の始末とは、そういうものでなければならぬ。決して逃げず、後戻りもせず、能う限りの最善の方法で、すべての始末をつけねばならぬ。幕末維新の激動期、自らの誇りをかけ、千年続いた武士の時代の幕を引いた、侍たちの物語。表題作ほか全六篇。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱとめくると・・・明治維新時の侍たちの苦悩にからむ短篇六篇とのことで、なかなか魅力的なラインナップではないか♪

yodobashi五郎治殿御始末


『五郎治殿御始末』の語り口を、ちょっとだけ見てみましょう。
p229〜231
 今でも職場を辞めさせられることを「クビ」と言い習わすのは、武士が一斉に職を失うたあのころの流行語が、今日もなお生きているのであろうよ。潰しのきかぬ武士にとって禄を奪われることは、首を斬られるも同然であった。

 旧藩における立場といい、その年齢といい、あるいは倅を御一新の犠牲にしたという事実からしても、辛い御役目を全うできる人物は、わしの祖父しかいなかったのであろうよ。

 そう・・・名は五郎治というた。岩井五郎治が、おまえの5代前の爺の名だ。したたかに酔うて帰ったあの日、五郎治は玄関の式台まで出迎えたわしの手をむんずと握って、よろめきながら屋敷の唐紙を何枚も突き破り、奥の書院に入った。

 明治の初年というても、祖父は未だ二本差しであったからの、よもやいたずらが露見して手打ちにでもなるのではないかと、肝を冷やしたものであった。
 低い弱陽が荒れ庭から射し入る、冬の昼下がりであったと思う。
 祖父は書院の床の間に、これ見よがしに飾られていた父祖伝来の鎧に向き合って座り、かたわらにわしを座らせた。

 たしかこのような言葉をかわした。
 「半之助。これより爺の申すこと、よく聞け」
 「はい、何なりと」
 「爺はきょう、御役御免と相成った。いよいよ御家中の旧禄下げ渡しが打ち切られたさかい、人を選んで禄を奪う爺の御役も、その必要はのうなった。わかるな」
 「はい。わかりまする」
 「ついては、旧藩士に対し、県庁より公債といくばくかの金子が支払われるがの、わしは辞退いたした。いかに御役目とは申せ、数年にわたって多くの同輩を野に追いやり、長州の走狗とよばれた、あげくに銭金を懐に収めるわけには参らぬ」
 「お金がなければ米が食えませぬ」

 わしが口にした道理がよほど身に応えたらしく、祖父は乾いた唇を噛みしめ、膝の上で両の拳をぐいと握りしめてうつむいた。
 「お爺様・・・」
 「おまえは母の在所へ行け。先方では何を今さら桑名者めがと申すであろうが、尾張のお爺様にしてもおまえは血を分けた孫じゃ。わしが手をついてお頼申せば、どうでも聞き届けて下さろう」

 そのとき、わしは幼な心にもとっさに、二つのことを考えた。
 ひとつは岩井の家の行く末だ。そしてもうひとつは、祖父のこれから先のことだ。正直をいえば、顔すら知らぬとはいえ、生みの母のもとに引き取られるのは嬉しかったが。




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