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zoom RSS 『ブラック オア ホワイト』

<<   作成日時 : 2017/06/14 14:39   >>

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<『ブラック オア ホワイト』>
図書館に予約していた『ブラック オア ホワイト』という本を、待つこと3日でゲットしたのです。
浅田さんと言えば、中国を見る目の確かさに注目しているのだが・・・
浅田さんの現代小説はどんなかなと、期待して予約していたのです♪


【ブラック オア ホワイト】
浅田

浅田次郎著、新潮社、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
あのバブルの夜、君はどんな夢を見ていた?経済の最前線で夢現の境を見失ったエリート商社マンの告解がいま始まる。近代日本の実像に迫る渾身の現代小説!

<読む前の大使寸評>
浅田さんと言えば、中国を見る目の確かさに注目しているのだが・・・
浅田さんの現代小説はどんなかなと、期待して予約していたのです♪

<図書館予約:(6/08予約、6/11受取)>

rakutenブラック オア ホワイト


冒頭の語り口を、ちょっとだけ見てみましょう。
p5〜9
 ひとりなのか、と私は訊ねた。
 「気楽なものさ」
 質問はあまりに漠然としており、都築君の返事も答えにはなっていなかった。それ以上の質問をすれば、言わでものことを言わせてしまうような気がして、私は口を噤んだ。

 豊かな髪はさすがに白くなったが、身にまとった超然たる空気は変わっていない。痩せて背の高い体型も、昔のままである。洒脱に着こなした麻のシャツとジーンズは、とうていやもめ暮らしには見えなかった。

 「あのころは、毎晩ぐっすり眠れた」
 眠り薬を弄びながら、都築君はいくらか悔悟するような口ぶりで言った。
 話の舳先は唐突に回頭した。30年近くも前の、好景気に浮かれ上がっていた時代の出来事である。

 まったく、学生時代とどこも変わっていない。いつも超然としていて、相手の立場や気持をこれっぽっちも忖度しないのだが、そうした彼のふるまいには邪気や功利がかけらも窺えなかったから、疎んじられることもなかった。「都築君」という呼び方は、彼に対する敬意などではなく、それ自体が渾名だった。

 いや、もしかしたら、階級社会を脱しきれぬ曖昧な民主主義の中で育った私たちは、知らず知らず彼を貴族として礼遇していたのかもしれない。
 ソファに沈みこみ、広い壁に不釣合なくらい小さいマティスに目を向けて、都築君は勝手に語り始めた。

 「そう。あのころは、どこでもいつでも、ぐっすりと眠れた」
 それから、長い脚を汲みかえ、「むろん、誰とでも」と言って、優雅な笑い方をした。

<第1夜 スイスの湖畔で見た白い夢>
 そのホテルは、いわゆるベル・エポックの典型だった。
 ヨーロッパでは珍しくもないが、何から何まで百年前のまま、という頑固さが気に入った。
 廊下もゲストルームもむやみに広くて、近代的な改良は何ひとつ施されていなかった。だからかえって、30代なかばの生意気ざかりの僕でも、不満の抱きようがなかったんだ。
 バルコニーには真赤なゼラニウムが咲き誇っていてレマン湖だかチューリヒ湖だかが手に取るように望まれた。湖岸は秋の色に染まっていたと思う。
 19世紀の末か20世紀初めの一瞬の平和な時代に、贅の限りを尽くして造られた代物だったのだろう。機能的にも美術的にも完成しているから改良の必要はないと、信じられているふうがあった。
(中略)

 冷蔵庫もない。飲み物が欲しいときは、ルーム・サービスなどではなく、いちいちボタンを押して執事(バトラー)を呼ぶんだ。早朝だろうが夜中だろうが、1分と待たずにドアがノックされた。

 それがまた、テール・コートにボウ・タイを締め、白い口髭を立てた。まったく19世紀にしかいるはずのないバトラーだった。何を注文しようと、彼は「」の一言で去り、僕の思い通りのものが、必ず彼自身の手で届けられた。

 ホテルに到着した晩のことだ。
 ゲストルームの広さと、やたら曲線を多用したデザインになじめず、なかなか寝付けなかった。転転とするうちに、どうにも羽根枕の柔らかさが気になってきた。

 そこで、バトラーを呼んだ。硬い枕がほしい、と僕は注文した。
 「かしこまりました」
 テール・コートの裾をさっと翻して彼は出て行った。そして僕が煙草を吸いおえぬうちに、たちまち戻ってきた。
 
 ライオンの装飾が施された大理石のワゴンの上に、枕が二つ載っている。どうしたわけか、それぞれに黒と白のカバーがかかっていた。
 バトラーは魔術師のように両手を拡げて、ひどいドイツなまりの、それでいて厳かな英語で言った。
 「ブラック・オア・ホワイト?」

 どうしてそんなことを訊くのだろうと思った。たかが枕なのだから、両方とも置いて行けばよさそうなものだ。だがバトラーは、まるでメイン・ディッシュでも選ばせるようにそう言った。
 触れてみると、やはり柔らかな羽根枕だった。もっと硬い枕はないのか、と僕は訊ねた。
 格式あるホテルでは「ノー」が禁句だ。バトラーは微笑みながら答えた。
 「どうぞお試し下さいませ。ブラック・オア・ホワイト?」

 意味がわからなかった。何かしら僕の知らない慣習のようなものがあるのか、それとも東洋人のわがままを肝に据えかねて、いやがらせでもしているのか、と思った。
 あれこれ考えても始まらないので、「ホワイト」と答えた。古今東西、枕カバーは白が当たり前だろう。


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