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zoom RSS 『ツアー1989』

<<   作成日時 : 2017/06/03 05:50   >>

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<『ツアー1989』>
図書館で『ツアー1989』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、中国ツアーの短篇小説集のようである。怖い物見たさというか村上春樹風でもあるし借りたわけでおます。


【ツアー1989】
ツアー

中島京子著、集英社、2006年刊

<「BOOK」データベース>より
記憶はときどき嘘をつく。香港旅行の途上で消えた青年は何処へ。15年前の4日間をめぐる4人の物語。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、中国ツアーの短篇小説集のようである。怖い物見たさというか村上春樹風でもあるし借りたわけでおます。

amazonツアー1989


この短篇小説集の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。
p161〜164
<吉田超人>より
そう、仙石氏はいきなり話し出した。
 「この話をするのはあなたが初めてです。というのも、たしかに戦略的に企画を立てたのは私で、それはNトラベルの人間も知っていたし、誰に隠しようもない事実なので、きっかけになったこの話を、人に語る必要などなかったのです。

 あのころ私はまだ30代で、とにかく他人の考えつかないような奇抜な企画に飢えていました。そんなある日、会社の後輩で当時は新橋の営業所にいた女性から呼び出しを受けました。実は彼女が入社するときに、少し口をきくようなことをしたので、それ以来彼女は私をなにかと相談相手にしてくれていたのです。仕事を終えてから新橋の飲み屋で話を聞くと、彼女はひどく興奮していて、ツアー客の一人が消えてしまったと言い出しました。

 その子は私のような企画屋ではなくて、添乗の仕事をしていました。ちょうど香港ツウアーから帰ったばかりで、1週間ほど内勤で伝票整理をしたら、またすぐあわただしく別の国に出かけていく予定でした。ところがあんなことがあるのなら、もう怖くてどこにも行かれないというのです。

 話は実際支離滅裂でした。私は彼女を説き伏せて新橋営業所へ行き、管理している顧客データや旅程の中で確認したツアー客の状態を、詳細に調べてみましたが、人数が出かけるときと帰ってくるときとで違っていることもなく、きちんと仕事をこなしているように見えました。

 けれども誰もいなくなったオフィスで、心配することはない、君はよくやってるよ、疲れているだけなんだろうと慰める私に耳も貸さずに、私のせいで私のせいでと、彼女は自分を責めて泣き続けるのです。いったい、どこのなんという人がいなくなっちゃたんだい、名簿には載っていない誰かなのか、と訊いてみても、わからないのわからないの頭からさっぱり抜け落ちているのよと言うのです。

 私は少し休んだほうがいいと言うことしかできませんでした。彼女は予定されていた添乗をすべて他の人に代わってもらって、しばらく休職していましたが、結局そのまま会社をやめてしまい、そのときもその後も、連絡をくれませんでした。おそらく、私に話してもなんの解決にもならなかったので、頼りがいのない男だと思われてしまったのでしょう。

 そのことがあってしばらくしてから、私は興味深いデータを発見しました。どこの社でもやると思うのですが、一つのツアーが終ると、私たちは参加者にアンケートをとって、その旅の満足度を評価してもらうのです。各営業所から来たデータは、すべて商品企画室に持ち込まれます。そこで点検し、分析をして、次の企画に生かすためです。

 新橋営業所から来たデータの中で、何人もの人物が同じようなことを感想にしていました。自分は不思議な体験をした、あんな感覚を持ったのは初めてのことだというような。誰もその内容は具体的に書いていなくて、たしか一人だけ、自分は香港になにか特別な忘れ物をしてきたような、ひどく抽象的なことを記していたように覚えています。そしてそのツアーの『満足度』は非常に高く、多くの参加者が『あのような感覚を味わえるのならまたぜひ行きたい』と回答していたのです。

 私は日付を確かめました。添乗員の名前も確認しました。あの、会社を辞めた後輩の女の子の、最後のツアーでした。私は彼女を捜しました。真相を突き止めて企画に生かそうと思ったからです。けれども彼女は見つかりませんでした。

 そのあとのことは、お調べになった通りです。私は『奇妙なツアー』の企画を立て、実施しました。新橋営業所の後輩の出かけたツアーでなにがあったのかを調べるかわりに、その『奇妙な感覚を持たせるツアー』を開発することに全力を注いだわけです。どうかしていると思われるかもしれませんが、これだけ顧客満足度の高いツアーはなかなかない、金になると踏んだわけです」

 言い終えると仙石氏は、例の焦点の合わないような目を、美術館の隣の林に向けた。


ウン なにやらミステリー調の短篇で、どことなく、村上さんの「中国行きのスロウ・ボート」を彷彿とするのです(大使の場合)

「中国行きのスロウ・ボート」と言えば村上春樹さんの寄稿エッセイでも触れています





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