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zoom RSS 『移民の宴』

<<   作成日時 : 2016/12/13 19:48   >>

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<『移民の宴』>
図書館で『移民の宴』という本を手にしたのです。
「比較ごはん文化論的ルポ」という切り口が、いかにも高野秀行やでぇ♪



【移民の宴】
高野

高野秀行著、講談社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
突撃、隣の外国人の食卓。日本初の比較“ごはん”文化論的ルポ。
【目次】
成田のタイ寺院ーThailand/イラン人のベリーダンサーーIran/震災下の在日外国人/南三陸町のフィリピン女性ーPhilippines/神楽坂のフランス人ーFrance/中華学校のお弁当ーTaiwan/群馬県館林市のモスクーMuslim/鶴見の沖縄系ブラジル人ーBrazil/西葛西のインド人ーIndia/ロシアン・クリスマスの誘惑ーRussia/朝鮮族中国人の手作りキムチーKorean Chinese/震災直後に生まれたスーダン人の女の子、満1歳のお誕生日会ーSudan 

<読む前の大使寸評>
「比較ごはん文化論的ルポ」という切り口が、いかにも高野秀行やでぇ♪

rakuten移民の宴


朝鮮族中国人のキムチ作りを見てみましょう。
p278〜283
 朝鮮族の料理は、どうやら韓国の料理と基本的には同じらしいが、まずは鍋(チゲ)。日本では鍋といえば冬の風物詩だが、朝鮮族の人たちは夏の暑いときにもよく食べる。

 そして、キムチ。朝鮮語では漬け物全般のことを「キムチ」と呼び、何十種類もある。でもいちばん食べるのは日本でも一般的な白菜のキムチ。
 驚いたことに「今でも自分で作りますよ」と言う。
 スーパーではキムチが山ほど売られているが、「ああいうキムチは私たちのものとはちがう。とろっとしていて甘い。韓国から直輸入のキムチもちがう」。
 
 やはり朝鮮民族にとってのソウルフードはキムチなのだ。こだわりは想像以上だ。
 一体何がどういうふうにちがうのだろう。それに私はキムチの作り方など全然知らない。家も近いし、一つ教えてもらおうと思いついた。「私なんかがやっても・・」と遠慮する先生に、それこそ漢族のような強引さでお願いしたのだった。

■キムチに賞味期限はない
 私たちは今回も徹底して無知だった。キムチを作るのにどのくらい時間がかかるのかということからして、わからなかった。
 漠然と「まず白菜を浸けて、半月くらいしたら食べられるのかな」などと思っていたので、「キムチって漬けてからどのくらいで食べられるんですか」と訊くと、「いや、すぐに食べられます」。

 「すぐって、1週間くらい? もっと早いんですか? 3日?」
 「いや、だから作ってすぐ」
 「え、じゃあ、翌日とか?」
 「いえ、だからすぐですよ」
 やっとわかったのだが、白菜を塩につけて7,8時間おき、そこに赤いたれ(ヤンニムジャン)を塗る。塗ると、その場でもう食べられるんだそうだ。
 「じゃあ、キムチはいつまで食べられるんですか?」と訊くと、「いや、ずっと」「何ヶ月?」「いえ、何ヶ月でも」とこれまたチグハグな問答。

 先生曰く「キムチに賞味期限はありません」。日本で売られているキムチに書かれた賞味期限はおそらく「このくらいの期間に食べれば日本人の口に合うんじゃないか」という目安なのだろうということだ。

 先生の実家の村では、9月頃白菜が出回ると、女性が総出で、大量のキムチを作る。そしてそれを大きな瓶に入れて地下室に保存し、なくなるまで何ヶ月も食べ続ける。
 「最初は浅くしか漬かってない。だからあっさりしている。それがだんだん発酵が強まって、味が濃くなり、そのうち酸っぱくなる。どれもキムチの味。そういう変化を楽しめるのがキムチのよいところだ」だそうだ。

 この時点で「日本の食べ物とはちがうなあ」と実感した。日本の食品は、基本的に季節物だから、一度に大量につくって何ヶ月も食べるなんてことはない。漬け物にも「食べ頃」はある。何ヶ月も同じたくわんや高菜漬けを食べ続け、その味の変化を楽しむという感覚はない。

 先生は「何でもいい。白菜と塩さえあれば大丈夫」と言っておきながら、「白菜は大きいやつじゃダメ。水っぽくなるから。小ぶりで、でも葉がぎっしり詰まっているようなやつじゃないと」と注文をつける。塩も「できれば、ミネラルがたっぷり含まれた海の塩がいい」。
 私はその注文にしたがい、値段が若干高めのスーパーで「群馬有機白菜1個250円」を購入、また塩は輸入食品専門店「カルディ」で粗塩を買った。

 さてキムチ製作の初日、先生は夜十時過ぎ、仕事を終えてから私の家に現れた。この先生は治療院では白衣だが、なぜか通勤のときはスーツにネクタイを締めている。今日もそのままの格好で、白菜を無造作にバリバリとかじって味見をすると、「よし」とうなずいた。白菜を縦に四等分し、塩を塗り込むと、スーパーのレジ袋に入れて縛った。この間、朝飯前というか夜飯前といった感じだ。

 「これでいいです。あとはこのまま置いておいてください」
 あまりの簡単さに拍子抜けしたしまう。でも、先生に言わせれば、「キムチの味はこの作業で決まる」という。先生の実家の村では、みんな同じ白菜を使い、同じ時期に一斉に漬けるのに、各家庭で味はちがってくる。それは主に塩加減によるものだという。先生は自分の塩加減をもう手で憶えているらしかった。

 大変だったのは翌日である。私たちはまずJR新大久保駅で先生と落ち合い、新宿区大久保へ買い出しに出かけた。大久保は韓流ブームの中、もはやコリアンタウンと化している。職安通りなど日本語よりハングルの看板のほうが多いくらいだ。

 ここでいちばん大きなスーパー「韓国広場」に行く。その品揃えはもはやエスニック雑貨店の域をとっくに超えている。おそらく本国のスーパーとほとんど変わらないのではないか。「食べていってください」とようじにキムチを刺してお客に差し出す試食コーナーもある。

 ここで食材ひとそろいと、ついでにチゲ用の鍋(陶器)も買う。レジで「朝鮮日報」を渡され、「読めってこと?サービス?」と戸惑ったが、鍋を包むためだった。

 うちに戻ると時刻は午後2時半。昨日漬けてから14時間ほどが経過している。十分なはずだが、先生が味見すると、「あれ、塩気がちょっと薄いかな」と首を傾ける。「今ひとつ漬かり方も浅い」

 私のせいだった。先生が「このままにしておいて」と言ったのに、私はなんとなく気温の低いベランダに出してしまっていた。気温差は20度以上だ。
 「ああ、外じゃ寒くて発酵が進まないですよ」と先生に指摘され、私はなんだか簡単な指示も守れないバイトみたいな気分になった。

 こうして、初っ端からつまづいた私たち朝鮮キムチ製作隊だったが、先生は気にする風でもない。「全然大丈夫」と言い、ネクタイのままどんどん作業を進める。
 今度はヤンニムジャンを作る。唐辛子とニンニクのペーストである、唐辛子とニンニクを1対1で入れる。


整体院の高先生が、日本の住み心地を語っています。
p288〜289
■日本はしがらみがなくてラク
 結局、中国の朝鮮人は中国人のグループにも韓国人のグループにも所属せず、孤立している。日本で一緒に集うのも、もっぱら朝鮮族同志。奥さんともそういう日本での集まりで知り合ったという。

 でも、最近は在日朝鮮人の人の数が減り、そんな機会も少なくなった。ときどき、誰かの家に行って、軽く酒を飲む程度だという。
 だいたい、先生と奥さんの二人ですら、互いの仕事が忙しく、子供が生まれてからこの2,3年は二人でゆっくり食事をすることもないという。

 こういう話だけをすれば、先生は「異国の大都会で孤独に暮らす外国人」みたいなイメージになってしまう。ところが先生には淋しそうな様子はまったくない。整体院のお客さんにもエゴマのキムチを配って好評だなんて言っているし、人付き合いが苦手なわけでもない。私も仕事やプライベートでかなりの数の外国人に会ってきたが、これほどマイペースで、日本に対して淡白に見える在日外国人は珍しい。

 私はビールを先生に注ぎながら言った。
 「先生、もしかして日本はラクなんじゃないですか?」
 すると、先生は「そうなんですよ!」と、我が意を得たりとばかりに答えた。

 「中国にいると、漢族とのしがらみがあるし、韓国人と一緒にいると、どっちが上とか下みたいな感じになる。でも、日本は何の関係ないですからね。気楽ですよ」
 「日本は気楽」・・・。
 日本人に対していちばん屈託がありそうな朝鮮民族の人からこんな言葉が出てくるとは。「日本がラク」と外国人から聞いたのも初めてで一瞬驚いたが、考え直せば、私がそれに気づいていなかっただけかもしれない。私たち日本人は自意識過剰である。いつも外からどう見られているか気にする。だから、外国人が「日本を好きかどうか」もすごく気になる。外国人が日本で苦労しているかも気になる。

 でも、中には高先生のように、「特に好きでもないけど、気楽」という人がいても不思議はない。実際、海外、例えばバンコク辺りに住む日本人にはそういう人が多い。いや、海外を持ち出すまでもなく、東京や大阪で暮らす日本の地方出身者は少なからずそう思っているのではないか。


この本も高野秀行の世界R3に収めておこう。

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