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<<   作成日時 : 2016/01/22 14:37   >>

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<出版流通の壁>
 出版不況の中、出版社社長がインタビューで新たな配本の形態を語っているので、紹介します。
 村上春樹著「職業としての小説家」の出版時の顛末も語られていて、興味深いのです。

社長
(新井敏記社長へのインタビューを1/20デジタル朝日から転記しました)

 昨年9月に出版された作家村上春樹さんのエッセー「職業としての小説家」は、紀伊国屋書店が初版の9割を買い取る異例の流通で注目を集めた。版元スイッチ・パブリッシングは、中小出版社に厳しい取次会社の取引条件をよくし、街の書店に確実に届ける配本の実現をめざしたのだという。新井敏記社長に本意を聞いた。

Q:インタビューが柱のカルチャー月刊誌「スイッチ」など雑誌中心の出版社として、世界的な小説家の単行本を出すのは、初めての試みだったのでは。どんな経緯があったのですか。
A:村上春樹さんには、翻訳家の柴田元幸さん責任編集の文芸誌『MONKEY』を3年前に創刊したとき、自伝的エッセー『私的講演録 職業としての小説家』の連載を始めていただきました。6回で完結したとき、ぜひ単行本にとお願いしたら、了解いただけたのです。書き下ろしを含めて全12章になりました。

 村上さんにとって初めての自伝的エッセーをどのように売るか。従来の村上さんの読者に届くにはどうしたらいいか。初版部数は何万部にすればいいのか。思案しました。初版の印刷部数は10万部前後と想定し、販売方法を研究しました。当然、印刷費も含めた資金計画を考えます。それまでも単行本は年5冊ほど出していましたが、今回の初版部数はけたちがいでしたから。

Q:順調に進みましたか。
A:未知なる挑戦はときめきます。例えば装丁の案として、写真家のアラーキーこと荒木経惟さんが撮影した村上さんの肖像写真を提案しました。村上さんの小説家としての強い意思を示したエッセーであることを象徴し、表現するものにしたかったのです。村上さんの著書でご本人の肖像写真が表紙になった例は日本では珍しく、書店で並んだインパクトを考えるとわくわくしました。ところが、大きな壁は流通にありました。

《新刊書は出版社から取次会社を経て書店配本される。取次に卸す際、出版社の取り分となる「正味」とよばれる書籍の本体価格に対する掛け率は、出版社の規模や歴史によって違う。大手や老舗は条件がよく、中小や新興は不利だと指摘されてきた。》

Q:どんな問題ですか。
A:中小出版社は『配本手数料』といった名目で『歩(ぶ)戻し』というものを取られます。うちの場合、正味が67%、歩戻しは5%で、本の本体価格の実質62%が取り分となります。正味は売れた部数に対してのものですが、歩戻しは取次に委託する出版物すべてが対象で、返本される本にもかかってきます。また売れた本について、取次から入金がされるのは委託7カ月後です。資金繰りを含めた対策を迫られました。

《ここ50年ほどに設立された中小出版社4社に歩戻しを聞くと2〜5%。80年代半ば以降の創業ではすべて5%だ。

 日本書店商業組合連合会(日書連)が77年に発行した編年史に、72年の「書籍正味引き下げに関する覚書」が残っている。600円未満の書籍で69・5%、3千円以上では73・5%など。正味が高い出版社には医薬書や硬派専門書を出す老舗や大手が名を連ねる。93年から大手出版社の書籍正味を「69掛(%)」に引き下げる動きが始まったとも、後に記されている。》


Q:村上さんの本でも厳しい取引条件は変わらなかった?
A:悲願だった歩戻しの見直しを申し入れました。取次の反応は『村上さんの本は特例として認める』と示唆するもの。しかし会社全体の取引の見直しについては取りつく島もなく、難しいという返事でした」

《取次側は「個別の取引については答えられない。商品力や出版社の実績などで取引条件は異なり、委託取扱手数料(歩戻し)というものはある」(日販)、「『職業としての小説家』については一切コメントしない」(トーハン)と言っている。》

Q:紀伊国屋書店の買い取りはどのように決まったのですか。
A:取次との歩戻しの交渉をしていた昨年6月下旬、『職業としての小説家』の出版のあいさつで紀伊国屋書店の役員の方にお会いしました。この本への期待と出版の現状を含めて課題をいろいろと話しているうちに、『うちで買い取って、新しい方法を試しましょうか』という提案があったのです。

 うちのような中小の出版社を応援する目的や、全国の小さな書店にもきちんと配本する意欲も示されました。書店に配本される数を決めるのはふつう取次で、街の小さな書店には希望する数が届かないこともままあるのです。紀伊国屋書店としても、『リアル書店』としての未来像、新しい流通を模索していた時期だったのでしょう。予期せぬ申し出でした。

 ただ紀伊国屋書店が取次の役割を果たすという、大部数の書籍では前例のない形態だけに、どんな波及があるのか予想できません。色々なケースを模索するうち、紀伊国屋書店が初版部数の大半を返本なしで買い取り、他の書店には紀伊国屋書店のルートか取次を通じ配本するという条件に落ち着きました。歩戻しはないため、取次との通常の取引より好条件でした。

Q:「紀伊国屋がアマゾンなどネット書店に対抗」と報じられました。
A:本の流通の改善を求めた中小出版社の試みから始まったのに、本意ではない伝えられ方でした。一書店の買い占めという誤解もありました。私たちはネット書店と敵対しているわけではなく、むしろ良好な関係でつながっています。

 紀伊国屋書店へはネット書店でもきちっと売ることの了解も得ていました。誤解に基づく情報が流れた後、すぐ『国内の書店はもとより、ネット書店とも流通の協力を得て発売を続けていく』とホームページで表明しました。街の本屋さんは大事です。今回の試みがリアル書店を勇気づけられたとしたらうれしいことです。

《ネット書店を通した購入は増え出版販売額の10%を占めるとみられる。一方、全国の書店数が毎日1店は減り、書籍・雑誌の販売額も96年をピークに下がり続ける。》

Q:実際に発売してからは、いかがでしたか。
A:本の中身に対する反響が圧倒的でした。この本は村上さんがどうやって小説を書いてきたのか、どうやって生きてきたのかを語った本です。なぜ小説を書き始めたか、米国での出版にどのように乗り出したか、正直な思いが吐露されていました。結局9月24日に2刷、9月28日に3刷で累計20万部を増刷。成功だったと思います」

《紀伊国屋書店によると、3刷までの7割にあたる14万部を購入、うち取次に9万部を卸した。うち少なくとも4万部は街の中小書店に配本されたが、ネット書店の扱い部数は不明という。今回の買い取りについて、村上さんの過去のエッセーの売り上げ実績を踏まえ「成功と考えている」。同様の形での買い取りの希望が、複数の出版社からきているという。》

Q:経営に携わる以前に、雑誌編集の経験が長かったのですね。
A:会いたい人にインタビューし、その人の創作の原風景を見たいというのが編集のモットーです。楽しいこと、おもしろいことをやりたいという編集者の部分が経営者に勝るんですね。創刊から務めた『スイッチ』編集長に約10年ぶりに一昨年復帰しました」

Q:「職業としての小説家」の先にあるのは。
A:昨年11月に出した直木賞作家の西加奈子さんの絵本『きみはうみ』でも、紀伊国屋書店との取り組みは一部続いています」

Q:歩戻しの改善は。
A:一向に進んでいません。出版は文化であり、流通はその一つの試み。新しい人たちとわくわくすることを編集する。この意思をなんとかつなげていきたいと思っています。

     *
新井敏記:1954年生まれ。「スイッチ」「コヨーテ」編集長。94年にスイッチ・パブリッシングを設立し、社長に。2015年、伊丹十三賞を受賞した。

<取材を終えて>
 出版社、取次、書店で利益の取り分をどうするかは業界内部の話であり、読者には直接関係ないかもしれない。しかし、旧来の取引形態が幅を利かし、中小出版社が割を食うのは腑に落ちない。その一方、小規模出版社から「正味が高い出版社が既得権益を譲らないと解決しない」という声を聞くと、問題の複雑さが察せられた。

 出版の売り上げが縮むなか、ネット書店が伸びてその流通は変わってきている。「制度疲労」という指摘を、幾度も耳にした。身近な書店が減っていくのを実感するいまこそ、取引の実態が当事者以外には明らかにされてこなかった出版流通に、より関心を寄せる時期ではないだろうか。(聞き手・川本裕司)


図書館で『職業としての小説家』を借りて読んだのだが・・・
この本の出版の裏には、中小出版社社長の骨身にしみたようなブレークスルーがあったことがよくわかりました♪

出版流通の壁新井敏記2016.1.20

この記事も 朝日のインタビュー記事スクラップに収めておきます。

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